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ハイファンタジー「虹の向こうへ」作品関連

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#小説

【短編】新月の夜に

自分が幼い頃の記憶など、覚えていないほうがいい。
そう思えるのは大人として成長したからですよ、と朗らかに宣う騎士自身は、二十歳の時、とんでもない出来事を起こしたらしいので、つまりは幼い頃の記憶など瑣末な話だ、と言いたかったのかもしれない。

だが、年上を見れば将来の自分を思うように、年下を見れば、自然、思い出されるのが過去の記憶である。

その日は、庭に居たことを覚えている。

召使が自分たちの子

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ニジム短編「アンゼリカの秘帖」

 王都ルシナキ第四区画には、天使が遊びに来る。
 天使といっても、小綺麗な神の遣いなどではない。この国を築く人間に拾われた、とても人間じみた天使である。
 春に三度、冬は二度。決まった訪問は刻の鐘に似て規則正しく、素っ気ない。
 カランコロンと、天使だけが正しく鳴らす扉の鈴。それを合図に、牧は日頃背中で寝かしてばかりの角形頭巾を頭に被せた。

「こんにちは。茶葉と小麦と、薬草を買いに来ました」

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【即興短編】疲れた勇者

「あんたは、寝ないの?」
 大地を移り、都までの長い道のりを越えると、そこは占音(センネ)の知らない場所だった。
 夏が瞬きのように短く、占音の土地にはほとんど訪れない冬の長い場所。眠りを促す時間は短いくせに、眠りを誘う眩しさに恵まれた自然は、時に寂しく、時に温かく、占音の小さな体躯に馴染んだ。
 それは、冬がそろりと足を伸ばし始めた時期のことだ。
 一部の人間にしか存在を知らされていない占音は、

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【短編】王族の履く靴

※芝蘭誕生日記念小話。無修正。

 初めて父から貰った贈り物は、靴だった。
 10歳の誕生日が来る前のことだ。
 あちらは国務の帰り、こちらは学校からの帰り。
「帰ったか」
 迎えだけはしてくれた透火が、召使に連れられて透水と乳母の元へ顔を出しに行っている間の、ほんのすこしの間だった。
「……はい」
 背筋を伸ばして胸を張り、顎を引く。
 王族としてだけではなく、貴族の家に生まれた子供たちが最初に

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