知られてないけど、素敵な広告。
あなたには、好きな広告はあるだろうか。
就活生の時、「好きな広告はなんですか?」と聞かれることは多かっただろう。その時、よく聞かれる広告、受けている会社の広告を答えることがセオリーだった。
今までよく聞いた好きな広告はリクルートの「人生はマラソンじゃない」とか、東芝のLED照明のCM、「そうだ、京都行こう」などが多い。好きな広告=「好きなコピーの広告」というイメージもある。こうやってみんなの好きな広告を振り返ると、キャッチコピーの力をここでも思い知らされる。
これらの作品だけでなく、これまで世に出されたものは本当に素晴らしいものばかりだと思う。
私には、一つ今も忘れられない好きな、原点の広告がある。
就職活動で上京している際に、アドミュージアム東京へ行った。就活で知り合った広告業界の方に教えてもらったのだ。
もし今読んでいるあなたが広告業界に少しでも関心を持っているのであれば、ぜひ一度行ってみてほしい。
そこには、広告の歴史が残っていた。またたまたま行ったタイミングでTCC賞の展示も行われていて、機会があれば現在の広告にも触れることができた。非常に勉強にもなり広告業界への志望度も高まった。
広告の歴史を創ってきた数多の作品が並ぶ中、私はある一つの作品に目が留まった。
これは、1991年に作られたボルボの広告である。
私たちの製品は、公害と、騒音と、
廃棄物を生み出しています。
ただ、その文字が一行はっきりと書かれている。
そして、その下にはそういった製品を生み出した会社だからこそ、環境問題に真剣に向き合っていきますというボルボの意思表示がされているのだ。写真をよく見ると、下には「自動車メーカーのタブーを培った環境広告」というキャプションが貼られているようだ。
高度経済成長を通じて自動車産業は大きく成長した。しかし、大きく成長した結果、公害や騒音といった環境問題も生み出してしまった。経済の成長の代償として業界内では触れてはいけない暗黙の事実だったに違いない。
しかし、ボルボはこのタブーを切り開いた。「環境汚染を助長したことを自覚しているからこそ、未来について真剣に考える」という姿勢をこの広告で見せた。一行にデカデカと自分たちのネガティブポイントを書き出して。この自社の課題を自覚しているという主張が反対に大きな信頼と未来への期待をもたせたのだ。
現在サステナビリティ・SDGsといったワードが頻繁に聞かれるようになった。広告もただ商品の販促やブランディングだけでなく、サステナビリティを意識した、社会課題の解決を訴えかけていくものが増えてきている。
しかし、この広告は1990年代。20年以上前に生まれているのだ。この社会課題を解決する姿勢を広告に出す、といったことを最先端にやっている(※他にもあるだけで知らないだけかもしれないのであったら教えてください)。
このネガティブな文章からポジティブなブランディングを行っている文章、その姿勢がとても好きだ。その後他の広告もたくさん見てきたが、この広告の存在を忘れたことはない。
この広告は現代の広告の歴史の先駆けといっても過言ではない。
自社のアピールだけではなく社会課題の解決を導くために、広告というメディアをもっと活用していく社会になると、未来が少しずつ明るくなるのかもしれない。