雁とピンと金色の空
空は巨大なキャンバス
雲を浮かべ冷たい月を浮かべ
そしてせわしなく鳥は飛び続ける
その姿を描き続け
見飽きた時に
明日もまた同じ光景が見えるように
飛びゆく雁の一羽を
ピンでとめた
雁はその場で羽ばたきをとめると暴れた
両方の羽根元でとめられたピン
空にとめられたピン
つけたわたしにも外せない距離
やがて陽は沈んでいき
夕闇が迫る金色の空の彼方で
一羽の雁はまるで磔刑されたかのように
翼を広げたまま
やみに消えようとしている
そんな時山の方から冷たい風が吹き
冷たい月をさらに輝かせる
雁の最後の格闘
ピンをはね飛ばし
身体を水滴のように萎めると落下していく
金色の空で
ややあって鳥は二三度踠くように翼をはためかせると
体勢を立て直し
迫るやみよから逃れるように仲間を求め飛び去った
雁をとめたピンは
どこかに消えた
爛々と輝く月を残して