苦痛の時
なぜ遠くに眼が行かないのか
自分の足元だけ
遠くを見る眼が失われる
ほんの眼の先にある
光景ですら入らない
今日
くぬぎのきの木
しげしげと長年連れ添った
相手のように
くぬぎの木を見る
幹に深い縦シワ
いくつもいくつも
いったいここ何年で
この木になにがおきたのか?
人知れぬ苦労を重ねているのか
いつ年をとりはじめ
いつの間にしわしわになったのか
改めて見るまでは
その苦悩の皺の存在にも気づかなかった
苦しみが解き放たれた
青空に
どうか…
どうか…
しわのかずだけ
しあわせに
高く高く
しあわせに
気づいてあげられなかった
くぬぎの木の苦悩の痕