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服を着る

さくらの木は
花を散らさなければならない

そして
いちどならず
葉も散らさなければならない

散らして散らして
冬をむかえる

春に着飾った服も脱ぎ捨て
夏に繁った服も脱ぎ捨て

真冬だというのに
すべての服をコートを脱ぎ捨てた
さくらの木は
沈鬱な冬のひかりの中に立っている

まるで
そのすべてを投げ捨てて散ってしまった
姿をさらすことが
さくらの美であり
冷徹な誰かの評価を受けることのようでもあるかのように
冷たいひかりにしばし照らされ
風に吹かれ

そして
冷たい季節が終わってから
またつぼみをつけ
服を着る