たおやかに進む
森の小道を婦人に押されて
たおやかに進む車椅子
老女は微笑んでいる
木々の切れ間からの光りを
手に遊び
ゆっくりと進んで行く車椅子
ちりちりと地面の葉をひいていく
そう
この森の木はまるで動けない
昨日あった場所に立ち続けて
数年、数十年、同じ場所にいる
同じ景色で
同じ仲間と
ちりちり、ちりちり
車椅子が葉をふみ通る
動けない木が
せめてもの願いを込めているのか
夜の間
葉を散らし
その舞い散った葉が
まるで木の歩いた足跡のように
点々と道に続いている
もしかしたら
夜の内
木々は歩けたのではないか
葉に願いを託し
そっと森を歩いていたのではないのか
ちりちり、ちりちり
車椅子を押す婦人は
老女に何か囁きながら
笑っている
老女は葉のように
手を振りながら
道を進んで行く
ある穏やかな日の木陰にたどり着くまで