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rararara07
相撲
幼い頃
どんな遊びを大人としても
負けてくれた
ゲームでも鬼ごっこでも
メンコでもかくれんぼでも
大人はいつも簡単に負けてくれた
だからわたしは大人と遊ぶのが好きだった
最後には抱き締めてくれるし
しかし祖母とある日相撲をとった居間で
負けてくれるはずの祖母は5歳のわたしを
投げ飛ばした
いかに老いているとはいえ
大人の力だ
いかに女とはいえ
大人の力だ
投げ飛ばされたわたしは
ショックのあまり口が聞けなかった
ごめんごめんと頭を撫でて抱き締めてくれるはずの
祖母は
「遊ぶのはこれまで」
といって台所に立って料理を始めた
子供ごころながらにも
祖母にも虫の居どころが悪い日があることを知った
そして大人の力も
結局相撲をとったのはその一回きりだった
祖母はすぐに癌で亡くなった
取りたくてもとれない相撲
生きたかったに違いない
わたしとの暮し
悔しかったに違いない
虫の居どころが
腹の虫が…
世の中の理不尽さが
悔しかったに違いない
宣告されなくても
いのちの火が消えつつあることを知ること
が