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相撲

幼い頃
どんな遊びを大人としても
負けてくれた

ゲームでも鬼ごっこでも
メンコでもかくれんぼでも

大人はいつも簡単に負けてくれた

だからわたしは大人と遊ぶのが好きだった
最後には抱き締めてくれるし

しかし祖母とある日相撲をとった居間で

負けてくれるはずの祖母は5歳のわたしを
投げ飛ばした
いかに老いているとはいえ
大人の力だ

いかに女とはいえ
大人の力だ

投げ飛ばされたわたしは
ショックのあまり口が聞けなかった

ごめんごめんと頭を撫でて抱き締めてくれるはずの
祖母は
「遊ぶのはこれまで」
といって台所に立って料理を始めた

子供ごころながらにも
祖母にも虫の居どころが悪い日があることを知った
そして大人の力も

結局相撲をとったのはその一回きりだった

祖母はすぐに癌で亡くなった
取りたくてもとれない相撲

生きたかったに違いない
わたしとの暮し

悔しかったに違いない
虫の居どころが
腹の虫が…
世の中の理不尽さが

悔しかったに違いない
宣告されなくても
いのちの火が消えつつあることを知ること