【来日記念】現代最高のチェリスト:ヨーヨー・マ 知っておきたい5つの魅力
伝統的なクラシック音楽の枠を超えて、あらゆるジャンルで活躍するチェロ界の巨人:ヨーヨー・マ。そのキャリアの長さと幅の広さから、ともすると「難しそう…」と敬遠する方がいるかもしれませんが、それはもったいない! 2023年10月25日から始まる来日公演を前に、改めて彼の魅力を探ってみませんか。
〈プロフィール〉
ヨーヨー・マ(馬 友友、Yo-Yo Ma)は1955年生まれ。フランス・パリ出身の中国系アメリカ人で、今や世界で最も名前を知られたチェロ奏者と言っても過言ではないでしょう。4歳からチェロを始め、6歳の時パリでリサイタルを開いて以来、その卓越した演奏技術で高い評価を受けています。ハーバード大学では人類学を学びつつも、音楽の才能を発揮し、これまで19部門ものグラミー賞をはじめ多くのアワードを受賞しました。
彼の演奏はクラシック音楽に留まらず、幅広いジャンルにまたがります。クラシック作品の他にも、ジャズ、ポップ、映画音楽、民族音楽など多岐にわたるスタイルを取り入れ、その柔軟性と多様性で幅広い音楽ファンを魅了しています。
また、彼の音楽の活動には社会的な使命感が伴っていて、「シルクロード・プロジェクト」など音楽を通じて異なる背景を持つ人々や文化を結びつけるプロジェクトや、若い音楽家たちに向けた支援や教育活動にも力を入れています。その奏でるチェロの音色だけでなく、その背後にある人間味あふれるキャラクターと情熱で称賛を浴びています。
〈ヨーヨー・マ 5つの魅力〉
ヨーヨー・マは世界でもっとも有名なチェロ奏者であり、その音楽的な才能と人間的な魅力によって多くのファンを魅了しています。ここでは彼の5つの魅力にフォーカスしてお話ししたいと思います。
1.卓越した演奏技術
4歳から父親にチェロを学び、その後NYの名門ジュリアード音楽院でレナード・ローズなどに師事。ジュリアードでは教師から「君に教えることはもう何もない」と言われたという逸話が残っていますが、彼の演奏は技術的に優れたものでありながら、深い感情と表現力も備えていて、聴衆に深い感動を与えます。
「最初に父から『バッハ:無伴奏チェロ組曲第1番』のプレリュードを習った。1日目に父から教わったのは最初の8つの音符だ。これを2回繰り返して1小節になる。左手で使うのは指1本、どんな子供にもできる。2日目は2本の指を使い、初日と似たようなパターンの繰り返しだ。3日目は3本の指と増えていき、毎日1小節ずつ弾けるようになった。プレリュードは42小節あるので、42日目には1曲弾けるようになっていた」
引用:ヨーヨー・マ 新盤バッハ「無伴奏チェロ組曲」を語る(日経新聞)
2.幅広い音楽ジャンル
伝統的なクラシック音楽だけでなく、さまざまなジャンルの音楽にも取り組んでいます。彼はクラシックからジャズ、ポップス、民族音楽など幅広いスタイルで演奏し、その柔軟性と多様性が彼の才能を際立たせています。これまでリリースした100枚を超えるアルバムは彼の幅広い興味・関心を反映しているといえるでしょう。
『ニュー・シネマ・パラダイス』、『海の上のピアニスト』といったエンニオ・モリコーネが残した数々の名曲では、登場人物に寄り添うようなチェロの響きで私たちの心を震わせます。また、中国の作曲家タン・ドゥンによる映画『グリーン・デスティニー』(2000年公開)のサウンドトラックは第73回アカデミー賞・作曲賞を受賞しています。
アルゼンチン・タンゴを芸術の域に到達させたといわれる作曲家でバンドネオン奏者:アストル・ピアソラ(1921~1992)を取り上げた作品集『ヨーヨー・マ プレイズ・ピアソラ』(1997年)は100万枚を超える空前の大ヒットを記録しました。
3.共鳴とあくなき探求心
ヨーヨー・マは音楽を通じて、世界中の異なる文化と人々とのつながりを追求しています。多様な伝統や背景を持つ音楽家たちと共演し、それを通じてお互いの文化を理解し合おうとする姿勢はとても魅力的です。彼はとても幅広いジャンルの芸術家にインスパイアされていて、エマニュエル・アックス(p)、ダニエル・バレンボイム(p)、クリストフ・エッシェンバッハ(p)、ボビー・マクファーリン(vo)、ステファン・グラッペリ(vn)、エドガー・メイヤー(b)、マーク・モリス(舞踏家)、デイヴィッド・ジンマン(指揮者)、ジョン・ウィリアムズ(作曲家)……といったアーティストとの共同作業からエネルギーを生み出し、ジャンルの境界線を超えるパワーに変換しています。
彼の幅広い活動から、2021年、国際理解の礎となる文化芸術の発展に貢献した芸術家に感謝と敬意を捧げその業績を称える「高松宮殿下記念世界文化賞」で〈音楽部門〉を受賞しました。
▼2017年(3回目)に録音された「無伴奏チェロ組曲第5番~アルマンド」
4.シルクロード、アジア、そして日本
1998年、ヨーヨー・マがライフワークとして立ち上げた「シルクロード・プロジェクト」は、古代の交易路シルクロードに今も息づく民族音楽を発掘し、トルコや中央アジアの国々、モンゴル、そして中国のミュージシャンたちとのコラボレーションで、音の文化遺産を世界に発信する試みです。中国琵琶、中国笙、タブラ、ケマンチェ、アゼルバイジャンの伝統的な歌唱などにチェロ、ピアノ、ヴァイオリンなどが加わり、悠久の時空を体感するサウンドが紡がれていきます。2005年に放送されたNHKスペシャル『新シルクロード』では、ヨーヨーが音楽監督を務めたことでも話題になりました。その後もこのプロジェクトは続き、2017年にドキュメンタリー映画『ヨーヨー・マと旅するシルクロード』として公開されました。
5.人間味あふれる温かい人柄
2006年には国連平和大使に任命され、若者が音楽に接する機会を広げるとともに、国連の仕事を若い人々に伝えるべく取り組んでいます。
また、2020年3月14日、コロナ禍の中でボストンの自宅から「ドヴォルザーク:家路」を演奏している動画を、#SongsOfComfortというハッシュタグを付けてSNSに投稿。 その動画は瞬く間に世界中へ拡散され、かつて経験したことのないパンデミックに直面して不安と孤立感にさいなまれる世界中の人びとに安らぎと希望をもたらしました。それに着想を得て、クラシックだけでなく「アメイジング・グレイス」や「虹のかなたに」といった親しみやすいスタンダード曲も収録したアルバム『ソングス・オブ・コンフォート・アンド・ホープ』を2020年12月に発表しています。
いかがでしたか? 卓越した演奏技術だけでなく、音楽を通して社会に貢献しようとする真摯な姿勢、謙虚で親しみやすい人柄など、ヨーヨー・マの魅力を感じていただけましたら幸いです。
それでは、ヨーヨー・マの名曲・名演をプレイリストでお楽しみください。
■ヨーヨー・マ&キャサリン・ストット デュオリサイタル 2023
2023年 10月25日 (水) 名古屋公演(愛知県芸術劇場コンサートホール)
2023年 10月27日 (金) 京都公演(東寺 金堂前 *屋外)
2023年 10月28日 (土) 所沢公演(所沢市民文化センター ミューズ・アークホール)2023年 10月29日 (日) 東京公演(サントリーホール・大ホール)←SOLD OUT2023年 10月31日 (火) 福岡公演(福岡シンフォニーホール・アクロス福岡)←SOLD OUT
詳細▶ https://www.yo-yo-ma-japantour.jp/