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映像現場で戸惑う人 #15

イベントステージや大道芸、劇場での公演など、パントマイムを用いた作品を披露する現場は多種多様である。しかし、その中でもちょっと趣の違う現場となるのが映像現場だ。具体的にはCM、TV、※PV、MVなどとなる。
※企業の映像案件、ミュージシャンのプロモーションビデオなど

有観客の現場においては、基本的に自身の持っている技能を用いて、パフォーマンスを披露し、その場を盛り上げたり、楽しませるということが求められている。しかし、映像の現場になると求められていることがそもそも変わってくるのだ。

パントマイムを専門とする人に来る映像現場
珍しいからこそ、慣れていないと戸惑いがちなポイントを整理してみたいと思う

何が出来るのかを把握していない

映像の現場に出る際に最も把握しておくべき点として、現場の方々はパントマイムに詳しくないということだろう。呼んだはいいものの、その人がどんなことが出来て、それがどのような効果を生むのかは、ハッキリと見えていないのだ。

依頼をしてきているのだから、何となくのイメージはあると思う。しかし、それも実際は漠然としたものであることが殆どだ。パントマイムというものをきちんと見たことのある方の方が少ないので、壁のイメージや、動かない人だったり。極端な話、不思議な動きが出来るビックリ人間、のような認識をされていることも少なくない。

何となくピエロ的な役が欲しいので、だったり。ここでジャグリングをして欲しいんだよね!という依頼だって平気である。つまり、その人物が持っている演目を欲しているのではなく、大きなイメージの中でのパントマイムの人を求めて依頼しているのだ

現場で具体的な指示があることは殆ど無いと思っていいだろう。こういうシーンがあって、こんな風にメインの方がいるのだけど、ここでなにか面白いことが出来ないかな?と、こんな具合で振られることの方が遥かに多い。

映像現場に用いるべきもの

なので、これから映像現場に立つことがあった際には、是非この点を事前確認、もしくは用意しておくべきという点を6つ程あげてみよう

1、時間
撮影シーンや絵コンテなどが把握出来ている現場なら、どれくらいの尺があるのかを確認しておこう。映像現場の場合は数秒〜1分以内であることが殆どだ。もちろん、即興的な側面も現場に行けば出てくるだろうが、与えられた尺の中で、欲しい絵面を作り、完結しなければならない

2、振り付け
このように動いてくれと振り付けがもらえることは殆ど無い。こちらから積極的にこのようなことが出来ますと、選択肢を提示することが重要である。時間の項目に書いたように、与えられる時間は一瞬であることも多いため、キラームーブと呼ばれる、見栄えのする技を持っていると役に立つ

3、衣装
用意されていることもたまにあるが、基本的にはこちらが用意して持ち寄ることが多いだろう。映像現場の場合はブランドやロゴ一つとってもNGなことがあるので、稽古着から本番衣装まで、ハイブランドや目立ったデザインであるものは避けた方が無難である。確認出来るのであれば、バリエーションをいくつか提示しておくか、色々と対応出来るように当日も数点持っていった方が安全である。

4、道具
どんな絵面を求められるかわからない。パントマイム=ピエロ(サーカス芸)と認識されていることもあるので、ジャグリングやマジック道具なども含めて、他の技能も持っているならば一通り持っていくべきだろう。それが役立つことも大いにある。

5、メイク
メイクさんが付いて下さることもあるが、役柄によっては自分でする必要がある。事前に指定されていなくても、急遽必要になることもあるので、メイク道具の準備やメイクのバリエーションを自身で学んでおくことをオススメする。

6、請求書
他の仕事でも同様ではあるが、映像現場は企業同士がやり取りをする。仲介会社を通さずに自身で仕事を引き受けた場合は、現金払いなどではなく、公的な書類のやり取りが発生する。請求書や領収書などの処理が出来るようフォーマットを準備しておこう。

他にも、台詞があったり、ダンスの振り付けが出てきたりなど、急な無茶振りは当たり前だと思った方が良い。どんな要求があったとしても、やれる限り応えなければならないのが映像の現場である。

提案する能力と瞬発力

パントマイムの面白いところでもあり、難しい点でもあるが、現場に立つ為に必要となる能力に演出力がある

すなわち《この場面に求められている絵面をどのように表現するか》という能力である。

これは自己プロデュース力でもあるが、ディレクターやプロデューサー、またクライアントに向けて、この方向性ならこういう演出はいかがでしょうかと、提案していく力が必要であるということだ。

向こうはパントマイムのことに詳しくないのだから、こちらがどのような手の内を持っているのかがわからない。こちらから提案することによって、現場の方も判断材料が増えるだろうし、それによって撮影がスムーズに進むことにも繋がる。映像現場というのは時間の足りない中進められていくので、じっくり熟考している時間や撮り直しをしている余裕は無いのだ。

呼ばれたからには役割が与えられているだろう。この場面において求められていることは何なのかをつぶさに判断し、曖昧な時はコミュニケーションを取りながらポジションを確認する。画角と尺の制約の中で、候補となる表現をこちらから提示し、確認とゴーサインを貰って、スムーズにそれを演じてみせる。この瞬発力こそ映像の現場にて最も求められ、必要とされる能力と言えるだろう。

やりたいことと求められていること

自分の作品を披露する場では、基本的に自分の演じたいものや、アーティストとしてやりたいことが自由に表現できる。

しかし映像現場においては、求められていることと役割がある。役者さんでは表現出来ない要素を期待しているからこそ、専門職であるパントマイミストへ依頼が来ているのだ。それらを理解した上で、プロフェッショナルな仕事をしよう。

映像の仕事の影響力は大きい。
仕事に大小はないが、TVやCMで見られることを喜んでくれる人はとても多い。

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