クリエイター特区プロジェクト AR展示作品を見てきた
三井不動産が取り組んでいる、未来の都市のあり方を考え、実装するためのプロジェクトに「未来特区プロジェクト」というものがあります。
「未来特区プロジェクト」は「生存特区プロジェクト」「コミュニケーション特区プロジェクト」「クリエイター特区プロジェクト」の3つから成り立っています。
現在、3つの中の1つである「クリエイター特区プロジェクト」の企画として、日本橋を舞台に"UNBUILT"というコンセプトの下、リアル、デジタル、またそれらのミックスとしてARによる作品の展示が行われています。
今回はその展示作品を見に行ってきたので、感想を書きたいと思います(ARに絞って書きます)。
AR展示
AR展示では面白い試みがなされていました。それは、展示する3作品中2 作品のアイデアを一般公募で募集するというものです。応募できる人に条件はないため、「こうすれば面白くなるのではないか」というアイデアを持っている人であれば、誰でも提案できるという夢のような機会になっていました。
これ自体が、新しい都市開発のあり方だなと思いました。都市開発は一般的に金銭的にも時間的にもコストのかかるものですが、デジタルとリアルの中間であるARだからこそ、実現できたアイデアだったのではないでしょうか。
職業や年齢、性別に依らずアイデアを持っている人が正当に評価され、それが社会に本当に実装される、というフローは都市開発に限らず社会のあらゆる側面において大切なことだと感じました。
AR展示では「能ミュージック、能ライフ」「Nihonbashi Ad Parade」「dpN dots per Nihonbashi」の3作品が展示されています。その内、「Nihonbashi Ad Parade」と「dpN dots per Nihonbashi」が一般公募から実現したアイデアです。
それでは作品の紹介をしたいと思います。
能ミュージック、能ライフ
上記ポスターにスマホをかざすと、ARによる能の劇がスマホ上で流れます。スマホの平面上に、突如として奥行きが生まれ、そこに3次元の舞台が出現したような体験になっています。
舞台上に能楽師とともに、能面を被ったサラリーマン、JK、スウェット姿のおじさんがいるのがカオスで印象に残っています。多種多様な人によって構成されている都市空間をそのまま表しているように僕には見えました。
リアルの能では絶対に実現しないであろう、JK、リーマン、スウェットおじさん、能楽師のコラボレーションはARだからこそ実現できたものだと思います。それぞれが干渉し合うことなく、自分のことだけに夢中になっているのもまた印象的です。
能では変身、憑依の意味として面をかけるそうです。インスタで映え写真を投稿し、SNS上で別の人格を作り上げている現代人は、スマホの前で面をかぶっているとも言えますね。
能の世界と現代人の都市生活。全く関係ないようで、実は繋がっているのかもしれない。
Nihonbashi Ad Parade
これはコレド室町にある福徳の森にて展示されている作品です。
スマホをかざすと、神輿のような巨大なオブジェクトが出現します。このオブジェクトは、本作の名前にもあるように機能としては広告塔の役割を果たしています。インスタグラムを通じ、指定されたハッシュタグと共に投稿された写真がこの広告塔にリアルタイムで掲載されるようになっています。
インスタグラムの写真が広告として機能するのは今に始まったことではありませんが、それらへのアクセスが検索窓を通じてではなく、現地のARオブジェクトである点が本作の特徴になっています。まさにリアルとバーチャル(インターネット)の中間にあるARの特徴や魅力をうまく捉えた作品になっているなと感じました。
自分の投稿が広告塔に変化をもたらし、それがまた都市風景の変容へとつながる。その変化をもたらしているという手触り感が、人と都市の新しい関係性を描いているように僕には感じられました。
dpN dots per Nihonbashi
こちらも福徳の森にて展示されている作品です。福徳の森の床にある、市松模様にスマホをかざすと作品が出現します。
本作はドットで表現されたオブジェクトが出現し、それが一体何であるのかをクイズ形式で回答するというものです。出現するオブジェクトは、例えば日本橋や人形焼といった、日本橋に関連のあるものとなっています。
この作品の面白いところは、クイズ形式で楽しみながら日本橋のことを知れるところです。都市の歴史や豆知識を知ることは本当は面白くて、それらを知るだけで違った街の見方が獲得できるはずなのですが、教科書的なインターフェースになってしまうと、どうしてもつまらないものになってしまいます。本作のように、クイズ形式で楽しみながら歴史に触れられるのは良いですね。
クイズで当てたオブジェクトが図鑑のようなコレクションに登録される点も、収集欲を上手く刺激していて、クイズに正解しようというモチベーションにも繋がっていました。
ただ、ドットで表現されている分、(当然ですが)オブジェクトの解像度が低かったため、それが何であるかを当てるのが難しかったです。いや、知識があればもっと解像度が高く見えていたのかも・・
これが、その場にいる全く知らない他の人たちと協力しながら答えるような謎解き形式になっていても、(都市空間における人と人の関係性を変える点で)また違った面白さがあったかもしれないなぁと思いました。
まとめ
上述したように、「Nihonbashi Ad Parade」と「dpN dots per Nihonbashi」は一般公募によるアイデアだったわけですが、実は僕もその公募に応募していました。結果は残念ながら採用されなかったのですが、今回はそれもあって展示を見に行ってきました。
採用された作品が実現されているのを見ると、悔しいと言う気持ちが芽生えたと同時に自分の企画の及ばない点も浮き彫りになりました。総じて、とても学びのある機会だったので、今回このような機会を作ってくださった方々には感謝の気持ちでいっぱいです。
今後またこのような機会があれば、再度挑戦したいなと思います。
展示は6月19日(日)まで開催されているので、ぜひ足を運んでみて下さい!