『ダミアンハースト 桜』
題名にもある通り、ダミアンハーストの桜展に行ってきたので、それについて書きたいと思います。
ダミアンハーストは現存する現代アーティストの中でも最も有名なアーティストの1人です。サメをホルマリン漬けにした作品やダイヤモンドで装飾した髑髏の作品が有名です。
全体を通して作品の質感が印象に残っています。質感はマチエールとも言われますね。
キャンバスに殴りつけられた絵の具には、それ自体が身体に訴えかけてくるものがありました。
絵画を眺めていると思わず手で触れたくなる、そんな質感です。
ここでアクションペインティングについて話したいと思います。
ジャクソン・ポロックやウィレム・デ・クーニングを代表作家とする20世紀の現代美術の一つの様式にアクションペインティングというものがあります。
アクションペインティングでは、作家の芸術行為そのものや、作品ができるまでの過程に重きが置かれています。今回の桜シリーズもこのアクションペインティングの流れにある作品群だと言えます。
この動画の冒頭でも、絵の具を投げつけている様子が撮影されています。
絵の具の投げ付けられた痕跡や飛沫が生々しい質感を作り出しているのだと思います。
アクションペインティングは、作品という結果のみではなく、作家が作品と向き合った過程がキャンバス上に可視化されているので、作品が持つ時間軸が拡張されているなと感じました。
また、作家の意図しない偶発性も表現に含まれている点がアクションペインティングの良さの一つだなと思いました。
次に注目したのは、桜がドットの集合体で構成されている点です。
近くから絵を見ると、桜であると認識する事が出来ませんが、遠くから見ると桜であると認識する事が出来ます。
キャンバスに近づき、遠ざかりを繰り返しながら鑑賞する事で、具体と抽象を行き来するような感覚に陥りました。具体と抽象の境界を曖昧にした作品でもあるなと思いました。
以上です。