さつきから夕立の端にゐるらしき 飯島晴子
夕立とはにわか雨の事だ。少し前まで空には雲一つなく、青空が澄み渡っていたのに、突如現れた暗雲が空一面を覆いつくす。その後、構える間もなく雨が激しく降る。しかし、雨はすぐに止み、また何事もなかったかのように青空が顔をのぞかせる。
夕立の時、人は予想外の事が起きているのだから、驚き慌てるはずだ。
「近くに雨宿りできる場所はないか?」
「すぐに止むのだろうか?」
「外に干していた洗濯物は濡れないだろうか?」
この句のすばらしさはこんな夕立というハプニングに対して、「ゐるらしき」という表現を使っている点にある。「ゐるらしき」という表現は、冷静で客観的に現状を見ていなければ出てこないだろう。
周囲の人間が慌てふためいている中、まるで何事もないように夕立を受け止めている作者の姿が目に浮かぶ。