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事件簿 ③ マスタード事件

除去生活中のハプニングをお伝えする、事件簿シリーズ。今日は、マスタード事件です。前半は反応が出た時のこと、後半はマスタードアレルギーについて、海外情報も入れながら書きたいと思います。


1. 発端

シンプルな調味料、食材に飽きた

除去開始後8か月後、食生活も安定した頃、シンプルな調味料のみの味付けに飽きた〜。 

アニサキスアレルギーの人は特に、使える調味料が限られてしまうのです。私のメイン調味料は、塩、胡椒、醤油、レモン汁、植物油。頑張っていたのですが、さすがに飽きました

食材も私は魚介・鶏・豚がNGで、「もう牛もも肉は食べたくない」「さっぱりしたものが食べたい」と、食欲が沸かなくなりました。

「味と食材に飽きた」と不満が出るほど、この頃には炎症も沈静化してきていたのだと思います。以前は「安全な食物なら、何の不満もなく食べます」という感じでした。不満や葛藤は、元気になってきていた証拠でもありました。

輸入食料品店で安売り

除去開始後、新しい食料品店と食材を新規開拓するため、輸入食品店にも時々立ち寄るようになりました(カルディみたいな所です)。

アニサキスアレルギーの人は、和系・中華系・アジア系はNGな物が多いのですが、ダシ・うまみの添加物が入っていない、欧米系の食物で大丈夫な時があります。

例えば、国産のポテトチップスはNGの場合が多いのですが、アメリカのポテトチップス代表格的な商品は、OKだったりします。アメリカでは、味がシンプルな方が飽きがこなく、長期間多くの人から愛されるからでしょうね。

(注意:上記商品、私は大丈夫ですが、製造過程のコンタミ情報は未確認なので、微量でも反応する方はお気を付け下さい)

小麦・グルテン・乳・卵のアレルギーの方は、洋系より和系スイーツの方が食べられる物が多そうで、似たような感じなのかなと思います。

そんな訳で、輸入食料品店に立ち寄った時に、100円で安売りされている業務用ディジョンマスタードを発見。

「こんなにたくさんはいらないけど、フランス産で原材料は大丈夫そう。安いし、味が変わって食欲が沸くかも」と購入。これが事件の発端となりました。

2. 事件発生

フレンチドレッシング作り

除去開始時にドレッシングは全て廃棄。久しぶりに、ドレッシングをサラダにかけて食べたいなあと思い、自分で作ることに。

購入したディジョンマスタード、オリーブ油、レモン汁、穀物酢を混ぜ、フレンチドレッシングを作りました。 

このドレッシングはさっぱりとして、サラダにも肉にも合うので、アレルギーの心配がない方には、おすすめです。

テスト失敗

ドレッシング数滴を1週間試して大丈夫そう。その後、小さじ約2杯(底に沈殿していたので、マスタード濃度濃いめ)を夕飯に使用。

その晩、顔と腕がちくちく。朝起きると、左の頬・目・喉・足指が腫れ(血管性浮腫)、腹痛、下痢、声がれと続きました。

症状1週間継続

私の場合、症状が出てしまうと、その後1週間位、あちこちが腫れたり、引っ込んだり、不調が続きます。この時も、腹痛や下痢、膨満感、声がれ、喉の腫れが1週間程続きましたが、血圧や呼吸は大丈夫でした。

3. 原因究明

症状が出た朝の家族との会話

私:「久しぶりに腫れて、症状出ちゃった

家族:「昨日、何か当たっちゃうもの食べたっけ?」

私:「マスタードのドレッシング、量増やしたんだよね。それ以外は何も」

家族:「じゃあ、マスタードかね。でもマスタードでアレルギーなんて出るのかな? 聞いたことないよね」

私:「そうだよね。とにかく、作ったドレッシングはもうやめとく」

兆候はテスト時に出ていた

よくよく思い起こせば、ドレッシング数滴をテストしていた時、鼻先だけちくちくしていたんですよね。新しい花粉症?と思ってました。

いつもは鼻から口まで広い範囲がちくちく、耳の奥もむずむず、手足の甲もちくちく。数滴テストしていた時は、鼻先だけだったので、甘く見ていました

原因物質絞り込み

  • ドレッシングに入っていたもの:マスタード(マスタード種子、食酢、食塩、亜硫酸塩、ph調整剤)、オリーブオイル、胡椒、レモン汁、穀物酢(米、アルコール、酒かす)

  • マスタード種子と亜硫酸塩以外は、大丈夫そう。どちらかな?

  • 3か月に1度の診察時に医師へ報告

  • マスタードの抗体検査はしなかったので、根拠をもってマスタード種子が原因とは言い切れませんが、食べて症状が出たので、瓶入りマスタードは除去することに

4. マスタードアレルギーについて調べてみた

「マスタードなんかでアレルギーが出るんだろうか?」と興味が沸き、ネットで調べてみたら、衝撃でした。マスタードアレルギーは、海外ではよく起こる食物アレルギーだったのです

マスタードについて

  • マスタードはアブラナ科。口腔アレルギー症候群(OAS)、花粉・食物アレルギー症候群(PFS/PFAS)の原因物質の1つとされ、カバノキ科花粉、ヨモギなどとの交差反応性があるとされる。

  • マスタードの種類:黒、茶、黄、白、オリエンタル。白・黄は辛さ弱め、黒・茶は辛さ強め。

  • 瓶詰め黄マスタードは、黄(Sin a1)とオリエンタル(Bra j1)の種子が主原料。アレルギーの主原因は黄マスタードに含まれるSin a1(酵素・熱の影響を受けない)。

  • 欧米でよく使用されている食品例:ドレッシング、マヨネーズ、バーベキューソース、ケチャップ、ホットドックソース、シーズニング、スープ、ピクルス、ハムなどの加工品、スナック菓子、離乳食、インド・ロシア料理 

アニサキスと似てるな。いろいろな調味料や加工品の味付けに使われている。患者さんが気づかずうっかり食べてしまいそうと思いました。

海外でのマスタード表示義務事情

EU/UKでは表示義務

マスタードの生産・消費が盛んなフランスやスペインでは、マスタードアレルギーが深刻な問題のようです(私の食べたディジョンマスタードもフランス産)。EUで表示義務がある14のアレルゲンに、マスタードが入っていました。イギリスも同様でした。

カナダでも表示義務

カナダでも、(優先度の高い)食物アレルギーの11の原因にマスタードが入っており、表示義務あり。

https://www.canada.ca/en/health-canada/services/food-nutrition/food-safety/food-allergies-intolerances/food-allergies.html

アメリカでは表示義務はなし

アメリカで表示義務がある、9つの主要な食品アレルギーに、マスタードは入っていませんでした。

アメリカのグルテンフリー、セリアック病

話はそれますが、グルテンとセリアック病について、一口メモです。

アメリカではセリアック病が深刻な問題となり、2013年に食品アレルギー表示および消費者保護法に基づいてグルテンフリーの表示規則が、2020年には発酵・加水分解物およびそれを含む食品に関するグルテンフリーの表示規則が施行され、追加的に補完されている形かと思います。

私の30年来の親しいアメリカ人の友人も、数年前セリアック病の診断を受けました。セリアック病は不耐性でアレルギーではないのですが、除去が必要なのは全く同じなので、お互いに慰め合っています。

5. 振り返って感想

成人特有の食物アレルギーの大変さ

事件の発端になった、除去食への不満はどうして起こっているのか、自分なりに考えてみました。

小児の食物アレルギーと比較した時、成人の食物アレルギーに特有な大変さの1つは、何十年も慣れ親しんで習慣となった食生活・味覚をある日、突然変えなければいけない事だと思います。 自分の好きな食物、味付け、そのバラエティや組み合わせ、外食の楽しさ、食事と密接結びついた人との交流等、生まれてから何十年もかけて築き上げてきた、自分固有の食事文化が既に存在する

アレルギーの発症を機に、突然その文化を変えなくてはいけなくなる。その変え方を教えてくれる場所もほぼない(栄養指導も保険適用外)。

食物アレルギーの場合、発症前と変わらず元気なことが多い。でも、毎日の食事は以前のようにはいかない。場合によってはとなり自分の命を脅かしかねない。そこに葛藤が生まれて大変なんだな、と思いました。

少しづつテストする方法はよかった

昨年発症して以来、安全か不明な物は、全て少量から、加熱できるものは加熱して試し、徐々に普通量に増やしていくという方法を取っていて、それは良かった。

今回も、最初にたっぷりマスタードを使っていたら、いきなり呼吸困難になっていたかもしれません。

注意:私の場合は、3か月1度の診察で頻繁に相談できない環境なので、自分でテストせざるを得ないのでこの方法を取っています。症状や環境はそれぞれ違い、必ずしも私の方法がベストではないので、医師と相談されて下さいね。

でも、テストする前に調べるべきだった

いろいろな食物に反応しやすい体質にも関わらず、多数の国で表示義務があるようなハイリスク食材をたまたま選んでテストしてしまい、事前にもっと調べるべきだったと反省しました。

本事件からの学び安売りに惑わされるなかれアレルギーは心の隙間に要注意、ですね。

日本でもマスタード、ちょっと心配

最近、日本でもハニーマスタードソース、ドレッシングなど、マスタードを使う食品・お店が増えてきましたよね。マスタードにアレルギー反応が出る方がいないといいなと、少し気がかりです。また、花粉症・交差反応の件も、ちょっと心配です。

そして冷蔵庫で場所を取っている、大量のマスタード、どうしようか。いつもお読み頂き有難うございます。皆様、よい週末を! 


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