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「うまみとだし」+「まぜまぜ」文化は手強かった。アニサキスアレルギーvs.日本の食文化
今日は、アニサキスアレルギーの人の除去が大変な理由、日本の食文化の特徴、除去後の食生活などについて書きます。
1. 「うまみとだし」文化
一般の方々は、アニサキスアレルギーと聞いたら「魚介を食べなきゃいいんでしょ」と思われる方もいらっしゃると思います。
実はそう簡単ではありません。なぜなら、日本の食生活には魚介が原材料のうまみとだしが深く浸透し、切っても切れない間柄だからです。
お味噌汁など、よく「だしが効いてておいしいね」とか、魚介だしのラーメンなど、だしを売りにしている人気店も多いですよね。外食、お弁当、スーパーで購入する加工食品等、うまみとだしの原材料・添加物はあらゆる食品に入っています。たまごのお寿司にも、煎餅にも、漬物にも、お好み焼きにも、焼き肉のたれにも、あ~。
なので、アニサキスアレルギー(完全除去)になった途端、食べられる物がないという緊急事態になる訳です。
2. 「まぜまぜ」文化が更に追い打ち
「うまみとだし」文化に加えて、日本では、一つの品に多くの食材を使うことが好き、味付けして混ぜる・加工した状態で提供されることを好む食文化があります。
例えば、アメリカでシンプルな野菜だけのサラダを食べようとする。外食でも、スーパーでも、どこでも簡単に購入できる。日本では、外食でもコンビニでも難しい。既に味付け・加工されていたり、具(エビ、ツナ等)がたくさん入っていて、それらがアニサキス的にはNGだったりする。
ここでクイズです。あるコンビニのサラダ系メニュー(関東)のリンクを添付しました。49種類あるメニューの内、アニサキスアレルギー(完全除去)の人が安全に食べられるメニューは何個あるでしょうか?
答え:表示を見ていないので正確には分かりませんが、恐らく5個(不明なメニュー1個を除く)。東京で販売されているのは、その中の2個だけ。行った時に売られている保証はない。
上のコンビニの写真を見て頂ければ、日本人は「まぜまぜ、味付け、いろいろな具がはいっているのが好き」というのが分かると思います。
「うまみとだし」文化に加えて、この「まぜまぜ」文化がアニサキスアレルギーの人に追い打ちをかけます。一体化してしまっていて、NGな物を簡単に取り除けない状態で売られているからです。
「あ~、何でこの食材加えちゃったんだ~」、「味付けしないでほしかった」、「何が混ざっているか分からないからやめておこう」ということになります。
そんな訳で、食べられない物がかなり多くなってしまう、アニサキスアレルギーの人の悩み。一般の方々にも少し分かって頂けたら嬉しいです。
3. 除去後の禁断?症状
ここからは、慣れ親しんだ「うまみとだし」「まぜまぜ」文化から、ある日突然、アニサキス完全除去になった時、どんな感じだったかについて書きます。
除去直後は、何を食べても味気ない、おいしく感じない、食事が楽しくない感じに。お腹はいっぱいになるのに、舌と脳が「つまらない、飽きた」と不満を言っている。家族用の普通食を調理したり、外食時に美味しそうなにおいがしてくると、お腹がすいていないのに口の中に唾液が・・・
除去後2-3か月経つと、そういう反応も出なくなりました。逆に、食材個々の繊細な味が分かるようになってきました。例えば、しいたけの香りをすごく強く感じるようになったり、小松菜のちょっとスモーキーな味も分かるようになりました。熟れたトマトにも、甘さと酸っぱさだけでなく、うまみやコクを感じたり。
その後は、「食欲がわかない、他の味や食材を食べたい」発作が時々起こっては「除去食で大丈夫、満足です」となる周期を繰り返している感じです。除去後1年経った今は、家で食べるのには不満はなく、家族の普通食と自分の除去食が同時に並ぶ食卓でも、いいな~とは、ならなくなりました。
4. 振り返っての感想
除去生活を振り返って、思ったことを書きます。
a. 食事全体がヘルシーになった
以前は、原材料・添加物表示をしっかり見ることはなかったです。食物への意識が高まって、今は自分や家族の体に入ってくるものを、きちんと選ぶようになりました。そして、食事全体もヘルシーに。
野菜 増↑
調味料 減↓ => 塩分・油分・カロリー 減↓
加工食品 減↓=> 添加物(魚介由来以外も)減↓
外食ゼロ (これは悲しいけど、体にはいい)
複合調味料だと、どの位の塩分や油が入っているか分かりにくい。シンプルな調味料(塩・醤油・油等)を必要な分だけ使うと、どの位入れたか分かり、調節もしやすく健康的です。
b. 食べ過ぎず、胃もたれ・脂肪も減った
必要量以上に、つい食べ過ぎてしまうことがなくなりました。お腹の脂肪も減って、細いパンツが履けるようになりました。BMIは19、体脂肪率は22-25%(発症前は29%)。少し高めだったコレステロールや中性脂肪も、現在は問題なし。動きやすくなったので、ダンスの動きにキレが出てきたかも。
c. うまみ・だし中毒だった?
今まで外食や加工食品の「うまみ・だし」漬け・中毒になっていたと思います。手間をかけず手軽においしい、もっと食べたくなる、ないと物足りなくまた購入、脳への刺激で食欲全般がブーストされる。
アニサキスアレルギーになって、シンプルな食生活もいいなと思います。野菜と適量の肉を買ってきて、過剰な調味料なく、自宅で調理して、適量を食べて、体を健康に保つ。(時々、体に悪いけど複雑な味、おいしい物も食べたくなりますけどね)
d. あったらいいな
こんなメニュー・商品が増えると有難いなという、希望を書いてみました。食物アレルギーの方だけでなく、健康意識の高い方、ダイエットをしたい方、基礎疾患のある高齢者の方、インバウンドのベジタリアンやハラルの方などにも、需要はあると思います。
できるだけ加工度が低い商品:例 蒸したりオーブンで焼いた野菜、果物を盛りつけただけのデザート、蒸したり塩だけで焼いた肉、湯豆腐、だしを使わないしゃぶしゃぶ。
基本メニューに、具や調味料をオプション化、積み上げ方式でカスタマイズできる商品:例 野菜だけの基本メニューにオプションでトッピングを追加できるサラダ、Subwayのように自分で具やパンを選べる・NG食材を入れない選択肢ができるサンドイッチ。
一品に使う食材数を多くし過ぎない商品、混ぜたら何が入っているか明記している商品
うまみ・だしの添加物なしでも、おいしくて安全、価格が高すぎず普段使いできる商品
そんなこんなで、食生活は以前より健康的になったと思います。アニサキスに、自分の食生活を見直す機会をもらったようなものですね。
いつも長文お読み頂き有難うございます。