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能を鑑賞しました
何ヶ月も前から予定していた能の鑑賞。数十年ぶり、三回目の能体験になる。
咳止めの薬を飲み、何とか体調を整えて、金色の銀杏並木の中を能楽堂まで行くことが出来た。
演目は住吉詣。
事前に講座で説明を受けていたのと、前の座席の後部に字幕が流れるので、分かり易い。
かつて結ばれた光源氏と明石の上が、住吉詣をしたときに、久しぶりに再会したシーン。
シテの明石の上とツレの光源氏の舞が始まった。
脳のてっぺんに突き抜ける横笛の澄み切った音。
おおーっという静かであるが、お腹に響く掛け声。
同じテンポで進められる二人の優雅な舞。
能面の美しさと一つひとつの完璧な所作。
いつしか、明石の上と光源氏との切なく哀しい思いに没入していた。
これが能の幽玄夢幻の世界なのだろうか?
この世のものとは思えないほど美しい、夢と現を漂う時がゆっくりと流れた。
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能楽堂の庭は、微かな夕方の光に包まれていた。
一期一会の満ち足りた時を味わい、身も心も快い疲れに包まれて、家路へと足を進めた。