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(読書記録) このメタファーがすごい 「逆ムスカ」|「傘のさし方がわからない」岸田奈美 

 2月の読書記録は、岸田奈美さんのエッセイから推しメタファーの紹介です。読んだ本は「傘のさし方がわからない」。どの短編も笑いあり、涙ありとページをめくる手が止まらない「かっぱえびせん的」なエッセイです。


1、本の概要

 例えば、第1話の「全財産を使って外車を買った」は本当に感動的な話。家族をつなぐ愛に溢れたお話となっています。読んだのが電車の中でなくてよかったと思えるほど、ボタボタと感動の涙を滴らせてしましました。

手に入れて、ようやくわかったことがある。
父は、ボルボがほしかったんじゃなくて。家族を楽しませたかったのだ。
そのためなら、お金なんて、いくら使っても惜しくはなかったのだ。

出典:「傘のさし方がわからない」 岸田奈美

 
 だがしかし、今回はこれと同じく印象に残った、「逆ムスカ」について紹介していきます。

2、ムスカとは?

 そもそも、「ムスカって何?」ですが、ジブリの名作「天空の城ラピュタ」の敵ボスです。Wikipedia のリンクも貼っておきます。

 ムスカは、飛行石の魔力に目が眩んだ悪役。ただ、「こういう醜いところって多少は誰の心にもあるよなあ、もちろん自分も」と思え、人間らしいといえば人間らしい。
 ラピュタは根強い人気があり、いまだに地上波の金曜ロードショーでも定期的に放映されています。ファンの方はご存知の、「バルス」祭りがあるアレです。

3、じゃあ逆ムスカとは?

 「バルス」は物語の中で、とびきりの必殺技。ドラクエで言えばギガデイン以上、Starwarsで言えばデススターのビーム以上、ガンダムで言えばコロニー落とし以上の破壊力と言えば伝わるでしょうか?唱えることで、天空の城がバラバラに崩れて無に帰すわけですから(興味が偏っているのはご容赦を・・・)
 
 前置きは長くなりましたが、「逆ムスカって何?」に移ります。ラピュタの中では、バルスを唱えたことによる光があまりに眩しく、ムスカが「目が・・・目が・・・」と絶叫して失明する名シーンなのですが、岸田さんはこのように連想します。

「いかがですか?」お姉さんが問いかける。
「目が・・・・・・目が・・・・・・見えます・・・・・・」
おどろきすぎていて、逆ムスカのような発言をしてしまう。
きりの中みたいにぼやけていたわたしの視界が、はっきり、くっきり、している。明らかに目がよくなっている。

出典:「傘のさし方がわからない」岸田奈美

 内容を一文でまとめると、「最高のヘッドスパで視界が開けるほどすっきりした」となりますが、アニメ(ジブリ)に絡め、さらに「逆」をとって捻りを加えた、メタファーのイノベーションです。ちょっと思い浮かばないけど、言われるとヘッドスパで感じた爽快感がスーッと一発でわかるパワーワードだと思い、ここに書き残しておきたかったです。

4、終わりに

 岸田さんのエッセイ、本当にユーモアが効いていて、読んで元気ももらえて素晴らしいです。

 ここまで読んでいただきありがとうございます。良かったらぜひ手に取って読んでみてください。ほっこりと前向きな気持ちに浸れますよ。

 つぶやき:これからは、才能や能力が「覚醒した」というときは、逆ムスカとかスルバ(バルスの逆読み)とか言ってみようかな。流行るかどうかは知らんけど。

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