
魔女の森のおひめさま15 #物語
いつだって素敵なものは、百貨店にあった。
キラキラしたお洋服も、外国からの質の高いチョコレートも、幸せそうな家族も。
だから、おひめさまははじめに家を後にしてからすぐに日本橋の古き良き風情を残す、百貨店に足を踏み入れた。
何か自分を強くしてくれる、新しいひめの人生にふさわしいものを購入したくて。
価格はお年玉から、1万8,000円だけ残していた。
大きなモニュメントのある、まるで天空か美術館かお寺の欄間のような空間から、一階の美容品を扱う戦場のような場に降り立った。
何周も何周もして、冷や汗をかきながら、それでも少し美人すぎない、人当たりの良さそうな女性定員に声をかけた。
その声は、どう考えても自信に満ち溢れたしっかりものの声であった。
ひめはこの時初めて、自分以外の何者かになれたのであった。
黄金に輝く香水瓶にラッピングをされながら、もしかしたらこのまま上手く行くかもしれない予感に打ち震えた。
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