小学生の不登校、その子の想いがあるもので…
「特に学校で何かあったわけじゃないと思うんですけど…。」
小学生の不登校の相談で、“原因”について、困った顔をした保護者の方がよくつぶやく一言です。
中学生以上だと、人間関係や成績評価等、確信はもてなくても子どもが何に辛いのか、保護者も想像しやすいのかもしれません。
子どもの様子を見ると、よくわからないけど、どうにも言い表せぬ不安。
大人はどうしても、小学生の子が学校に行けないことを想像するのが難しいのかもしれません。ドラえもんの世界のように、ジャイアンもスネ夫もいるよ。辛い思いもたくさんあるよ。だけど、最後には笑って終われるんだよ、と。(それまでちょっとの我慢だよ)
文科省の調査で、小学校の不登校として、本人に係る要因で一番多いのは「不安」傾向です。
その調査の回答は学校がするので、先生も、子どもが何かしらの不安を感じていると捉えていることになります。しかし、その多くは学校生活に適応できていないから、と考えているようです。
これは例えるなら童謡『おばけなんてないさ』の感覚です。勢いで行っちゃえば、そのまま行けるんじゃないだろうか。そんなかかわり方を保護者や学校がしているのを何度も見てきました。「教室行っちゃうと元気なんですけどね…」なんて。
私は、体験から何となく子どもの行けない想いが分かる気がします。
私は転校した小学4年生の頃に、おそらく些細なことがきっかけだったと思うのですが、男子が女子の腹部を思いっきり殴ったのです。「ゲホッ」と女子は崩れ落ち、痛みでのたうち回っています。
そして、それから間もなくその女子は立ち上がり、今度は男子に思いっきり飛び蹴りを入れるのです。何が起こったかわかりませんでした。まったく理解できなかったのです。その後もしばらく取っ組み合いが続き、ついに私は大きな声で泣きました。泣くしかできませんでした。ずっとずっと泣きました。声が誰かに届くまで止めてはいけないと思いました。
ようやく「先生、何か転校生が泣いてる。」と他の子が職員室に行ってその場は収まりました。
「この世界でおかしなことが起こっているんだ!」そう私は訴えていたのに、おかしいと思われたのは私の方でした。なぜ狂ったように泣いていたのか先生に事情を聞かれても、「喧嘩してるのを見たから。」としか答えようがありません。
先生は「驚いたんだね。」と言っていました。でも、そんなことではないのです。公然と暴力が振るわれている光景に恐怖で震えたのです。少年時代の私の心は、それについていけなかったのです。
小学生の表現はシンプルです。「男子がうるさくてムカつく。」「先生が好きじゃない。」「女子は悪口ばっかり言ってる。」という言葉になって出てきます。そのまま受け取ると「そんなことで学校行けないの!?」と感じられるようなことです。
「誰だってそう思うことはある。好きな人ばかりじゃないよ」と。だから、大人は“何か(大きなトラブルが)あったわけじゃない”と捉えてしまいます。
もちろん私個人の感覚がすべての子に当てはまるとは思っていませんが、少なくとも子どもの「不安」に鈍感ではいられません。
だから、子どもの「学校が怖い」という想いに対しては、「そんなところにいられないよね」と声をかけることからかかわりが始まります。