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AIで、一人ひとりに、最短で「わかる!」の危険性

全国の塾でAI学力診断を伴った教材が流行している。「◯◯◯プラス」などの教材だ。生徒に問題を与え、AIが苦手な箇所を見つけ出し、学習課題を絞る事で無駄の無い学習が可能になると言う。目先の学習効果を考えれば、一見非常に便利な機能が満載だ。しかし、未来を生きる子どもの能力を伸ばす事を目的として使う場合は全く適切ではない。

これからの目先の事すらわからない、何が起こるかわからない不確実な世界(VUCA社会)を生き抜くには、「問題解決能力」だけではなく「問題発見能力」が重要になると言われている。「いったい何が問題なのか?」と試行錯誤する事で問題発見能力は鍛えられる。そして、それが不確実な未来を生き抜く大きな力になる。しかし、課題の発見をAIに頼る癖を身につければ、どうなるか想像し難くない。

やってもやってもうまく行かない経験は成長には必要だ。失敗を乗り越えたり、乗り越えなかったりして人は成長する。教育現場はなぜ子ども達の失敗に寛容ではなくなったのだろう。一見遠回りとも言える試行錯誤が成長の原動力になるのに。なぜ学習の中心とも言える試行錯誤をAIに任せるほどに学習の効率化を目指し、子ども達の「地頭の養成」を目指さずに、ノウハウとテクニックで点数を上げる事ばかりに集中するようになったのだろうか。

子ども達の将来の成長と幸せを願い、思考力や忍耐力を最大限に伸ばせるように、時には優しく見守り、時には厳しく鍛える事が指導者の役割だ。しかし、競争に遅れまいと焦るばかりに大切な「手加減」をAIに譲ってしまった学習塾は多いようだ。AIは手加減を知らない。指導者の役割とは子ども達を便利なサービスに依存させる事ではなく、独り立ちできるようにサポートする事では無かっただろうか?

何をすべきか分からなくても、何をすべきで無いかはわかる。それが分からない人は倫理観がないだけではなく、美的感覚が無いのだ。安易な流行に乗る者に決定的に欠けているのはそれだと思う。

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