見出し画像

不登校と身体リズムの関係: 「起立性調節障害と学びの継続を支える取り組み」

近年、不登校になる子どもたちの中で、「朝起きることができない」という理由から学校に通えないケースが増加しています。当塾でも、同様の悩みを抱えるお子様が多く見られ、学校には通えないものの、夕方から開始される塾での学習には参加できるという状況です。このようなお子様へのサポートを続けていますが、学校に通学しなければ進学に必要な単位を取得することが難しいため、症状に向き合いながら通学の可能性を模索することが重要です。

保健室登校なども一般的な対応策として行われていますが、人目を気にして通学しにくいとの意見も多く聞かれます。このような状況の背景には、医学的に「起立性調節障害(Orthostatic Dysregulation)」と呼ばれる症状が関与していることがあります。文部科学省や医療機関の統計によると、起立性調節障害を抱える子どもたちの割合は年々増加しており、中学生の約10~15%が該当するとされています。

起立性調節障害の原因

起立性調節障害の原因は複合的であり、明確に断定することは難しいものの、以下の要因が関与していると考えられます

自律神経の乱れ
急激な身長の伸びやホルモンバランスの変化が影響する。
生活習慣の変化
夜更かしやスマートフォンの長時間使用による睡眠不足。
ストレス
学校生活や家庭環境における精神的な負担が自律神経に影響を及ぼす。
運動不足
適度な運動が不足することで血流の調整が困難になる。


効果的な治療法

起立性調節障害の治療には以下のようなアプローチが効果的とされています。

1. 生活リズムの改善
毎日同じ時間に起床し、適度な運動や朝食を摂る習慣を取り入れる。
2. 医療機関での治療
必要に応じて薬物療法やカウンセリングを受ける。
3. 心理的な支援
親子間のコミュニケーションを改善し、ストレスを軽減する。
4. 学校との連携
登校時間やスタイルを柔軟に調整する「分散登校」や「オンライン授業」の活用。


学びを継続する支援策

起立性調節障害を抱える子どもたちでも、身体リズムに合わせた学び方を取り入れることで学習を継続することが可能です。以下にその具体例を挙げます。

・オンライン授業の活用:
午前中に起きることが難しい場合、午後や夕方に学習できる仕組みを整備する。
・個別指導プログラム:
一人ひとりの生活リズムに合わせたカリキュラムを構築する。
・家庭教師やサポートスタッフの派遣:
柔軟な時間帯での学習指導を行う。
・学校外学習の認定:
通信制高校やインターネットを活用したプログラムで学びを補完する。


全国的な学習支援の事例


1. メタバースを活用したオンライン学習支援(さいたま市)
• さいたま市教育委員会は、不登校の児童生徒支援センター「Growth」を設立し、メタバース空間「FAMcampus」を活用したオンライン学習環境を提供しています。これにより、家庭学習でありながら出席扱いとすることが可能となり、2023年度には362人の児童生徒が利用しています。

2. ICTを活用した学習支援(北海道)
• 北海道教育委員会は、ICTを活用して不登校の児童生徒への学習支援を行っています。オンライン授業やデジタル教材の提供により、「学びを止めない」「心を近づける」取り組みを推進しています。

3. NPO法人による学習支援(Learning for All)
• NPO法人Learning for Allは、不登校の子どもたちに対して学習支援を行っています。個別指導や信頼関係の構築を重視し、学習遅滞の解消や進路相談など、包括的なサポートを提供しています。


尼崎市の取り組み


当塾の地元である尼崎市でも、不登校支援に力を入れています。塾生の中には、尼崎市の支援を活用しながら当塾での学習に取り組むお子様も多く見られます。

• 子どもの育ち支援センター「いくしあ」
尼崎市は、子どもや子育てに関する課題や困難を抱える家庭を支援する総合施設「いくしあ」を設立しています。この施設では、教育支援室やサテライト教室を設置し、学校と連携した不登校児童生徒への支援を行っています。また、発達相談支援やユース相談支援など、多角的なサポートを提供しています。


保護者と子どもへのメッセージ


起立性調節障害は決して「怠け」や「甘え」ではなく、医学的に認められた症状です。子どもたちが安心して自分のペースで学び続けられる環境を整えることが、保護者や学校、そして社会全体の課題です。この症状を抱える子どもたちにとって重要なのは、「できること」に焦点を当て、自信を取り戻すことです。

不登校や起立性調節障害に直面する親子が安心して未来への道を模索できるよう、柔軟な学びの選択肢を提示し、社会全体で支えていく必要があります。

いいなと思ったら応援しよう!