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マーケットを見る秘訣&2024年振り返り~2025年見通しをきいてみた!

こんにちは。
SMBC日興証券note編集部です。

日本のウォールストリートと言えば、東京日本橋の兜町。
世界有数の株式取引量を誇り、多くの小説の題材にもなった、
兜町(通称:しま)です。

太田 千尋。SMBC日興証券の投資情報部に所属し、証券取引所記者クラブに駐在しているマーケット担当記者に向けて、日々、株式市況の解説をしています。

彼のレクチャーは10年近くの歳月を経てますます存在感を増し、今では記者たちが発信するマーケットニュースには欠かせない存在となっています。(某経済部記者談)

今回はそんなマーケットの「語り部」の太田さんに、仕事へのこだわりや今年のマーケット振り返り&今後の見通しついて聞いてみました!
(インタビュー:2024年12月10日実施)


プレスルームってどんなところ?

―はじめに、太田さんの仕事内容について教えてください。

太田: 兜町プレスルームに常駐して、メディアの皆さんに株式市況の解説をしています。対象は主に証券取引所にある記者クラブ、いわゆる「兜クラブ」所属の記者の方々ですね。

ほぼ連日、対面とオンライン同時配信でレクチャーを実施しています。
コロナ以前は対面のみだったので、コロナ流行のピーク時にレクチャーを休止することになってしまったこともあって、コロナ後にオンライン配信も始めました。

―証券会社ならではの仕事ですね。当社でこの仕事を担っているのは、太田さんひとりと聞きました。

太田:そうですね。当社の株式市況レクの歴史はけっこう長く、私が知っているだけでも4代目になります。こうした期間中に、コロナ禍を含め何度か撤退の検討がなされましたが、そのつど報道機関の記者の皆さんの熱い声もいただき、現在に至ります。

―1日のスケジュールを教えてください。

太田:だいたい朝7時前に出社して、前日の海外マーケット、経済指標、要人発言などをチェックします。朝にお問い合わせをいただく際には、その日の株価の想定レンジを必ず聞かれるので、その用意も必須です。

その後、7時半からの株式関連部署のブリーフィングに参加します。
大きなコーポレートアクションが起きた時などは、アナリストからの見解がレクチャーの大きな支えとなっています。その他、当日のスケジュール確認などをしていると、あっというまに9時の取引開始時間が近づいてきます。あれもこれも同時に…となることも多いです。

―なるほど。マーケットが始まる前の情報収集が大切なんですね。
朝からスピード感があります。その後はいかがですか。

太田:定例のレクチャーの他、取引時間中のお問い合わせ対応も行っています。相場が大きく動いたり、市場に影響を及ぼすようなイベントがあると、経済系以外の記者の方からの急な問い合わせもあります。
夕方から夜にかけては、個別銘柄のデータチェックを行います。
朝から晩まで相場にべったりです(笑)。

―個別銘柄はどれくらいの数をチェックするんですか。

太田:リアルタイムで動きをモニタリングしているのは1,000銘柄ほどですね。その中で売買代金の上位50銘柄くらいが「その日の相場の顔」ともいえる特徴を表すことが多いと感じていて、株価が動いた背景はこれらをメインにチェックします。

ちなみに毎朝起きるのは5時半頃。皆さんのイメージする証券マンとしては遅い方ですかね?朝に弱い証券マンなんです(笑)。
一方で、夜はアメリカの経済指標を見てから寝ます。サマータイムの時期は寄り付きを見てから寝たりもしますね。

「マーケットからのメッセージ」とは?!

―太田さんがこの仕事をするうえで「こだわり」や大切にしているポイントはどんなところですか?

太田:売買代金のボリュームをよく見て、お金の動きがどうなっているかを正しく読み取る、ということを重視しています。
株価の動きも重要なんですが、その背景でお金がどんな動きをしているか、お金が集まりだしているフェーズなのか、あるいはもうお金が引き始めているフェーズなのかを見極めることに重きをおいていますね。

大切にしていることとしては、まずはマーケットの声を聴くこと。そしてそれをできる限り正確に伝えることです。
マーケット自身が生き物みたいな部分があるので、丁寧に見ていると、いろいろなメッセージを発してくれていますよ。

マーケットを毎日チェックしていると「あれ?」と思うことが結構あるんです。ずっと寝ていた株が動く、売買代金がポンと増えている、など。
オールドビッグカンパニーでもそういう動きを示すことは多いです。
マーケットが教えてくれることを見逃さないことですね。

―今年はどんなメッセージがありましたか?

太田:8月の暴落はまさに「日本の上場企業にとって円高はダメ!」というメッセージでしたね。2024年前半の円安進行で、日本のあちこちで”円安怖い”という風潮が広まったことへの対応がもたらしたものでもあるんですけどね…。上場企業の収益構造への認識を広めるキッカケになったんじゃないかと思います。

―なるほど!とてもわかりやすいです。
一方で、プレスルームの仕事で一番大変だったことは何ですか?

太田:コロナ禍でレクチャーできなかった時ですね。記者の皆さんと対面で話ができなくて、電話になるとどうしてもコミュニケーションが薄くなるんですよ。そうするとやっぱり伝わり方が充分とは言えなくて。
また、対面のレクチャーだと、複数の人に同時に情報を提供できますが、電話だとそれができない。そういった部分も大変でした。

―「マーケットを正しく伝える」を信念としている太田さんならではですね。マーケットが下がっている時はいかがですか?

すごく下がっている時はもう理由が明白なので、かえって苦労はなかったりします(笑)。逆に大変なのは凪の相場、つまり、株価に動きがない時ですね。市場に影響するイベントが無い時なんかがそうですね。

2024年振り返り&2025年見通し

―太田さんから見た2024年はどんなマーケットでしたか。

太田:まず日経平均が最高値をとったこと、これが一番大きなニュースでした。それから夏に歴史的な大暴落がありましたが、それに代表されるボラティリティー(価格変動)の高さ。これも2024年の株価の動きという点で特徴の一つでした。それから、企業の経営姿勢の変化も明確化しましたね。

―何やら難しそうですが、「企業の経営姿勢の変化」というのは?

太田:2023年はじめに、東証が「PBR(※)が1倍を超えるような企業になりなさい」とメッセージを発したんです。それを受けて、企業はIR活動や株主還元の強化を進めました。
この時点で企業の動きにかなり変化が出始めましたが、2024年に入ってからは政策保有株の削減(持ち合い解消)が本格化したんです。この背景にはさまざまなものがあるのですが、効果は大きいと考えています。

※PBRとは?
「Price Book-value Ratio」の略で、いわば企業の(帳簿上の)解散価値といえ、株価が1株あたり純資産(BPS:Book-value Per Share)の何倍まで買われているかを見る投資尺度。詳しくはコチラ

政策保有株を削減することでできたキャッシュを、設備投資、研究開発投資、ヒトへの投資、それからまた新たな株式投資(M&Aやベンチャーへの投資など)、自社株買い、配当原資などに振り向けるようになりました。
この結果、企業自体の強化につながり、従業員、取引先、株主など幅広いステークホルダーにポジティブな影響が期待されます。
これは2025年以降も続くと見込んでいます。

―つづいて、2025年の見通しはいかがですか。

太田:株式市場で重要視されている代表的な財務指標にROE(=株主資本利益率。純利益/株主資本)というのがあるのですが、このROEとPBRには相関関係があります。つまり、ROEが上昇するとPBRも上がる傾向があり、イコール株価水準も上がる傾向がある、ということです。企業の資本政策はすでに動き始めていて、このROEの分母の部分への対策は粛々と進んでいます。
2025年で重要になってきそうなのは、分子の「利益」ですね。
日本の上場企業はグローバル展開している企業が多いので、企業業績は世界景気に連動するようになっていると思っています。

世界経済で見ると、アメリカはトランプ次期大統領の就任後にいろいろな政策を打ち出してくると思いますが、スローガンの“MAGA”の趣旨からすれば、アメリカ自体の景気が悪くなるようなことがあれば支える側にまわると考えています。

要注意なのはヨーロッパと中国。ヨーロッパは主要国の政治混乱もあって、財政面でのテコ入れは期待薄で、景気はECB(欧州中央銀行)の利下げ頼みの状況です。中国では、2024年末にかけて政府当局が積極的な財政金融政策の実行を示唆し始めるという変化が出てきたので、今後の具体策に期待しています。市場では春の全人代への注目度が高まっています。

―ズバリ、2025年の日経平均の予想を教えてください。

企業の利益成長に沿った株価推移を見込んでいます。利益はだいたい1桁台後半パーセントの伸びになると想定できるので、日経平均は43,000円から 45,000円という可能性があると思いますよ。

―最後に、太田さんから読者の皆さんにメッセージをお願いします。

太田:株式市場をもっともっと身近に感じてほしいですね。
私は昭和の末期に証券会社に入ったんですが、その頃と比べると、株式市場とか株式投資が、ずいぶん一般化してきました。でも、もっともっと身近に感じてもらえる存在になってほしいと思います。

真剣に経営している会社に対して、応援の気持ちを込めて投資する。
そして、その結果が良い資産形成になる、そんな循環が生まれると良いなと。
そのために投資もマーケットも、もっと身近に感じてほしいですね。

編集後記

「株レクの太田さんには本当にお世話になっている。みんな太田さんに育てられた。」
太田さんのレクチャーに参加している記者の方からの感想です。

編集部メンバー一同も、長年マーケットを見て伝え続けてきた太田さんの豊富な知識と分かりやすい説明で、マーケットの面白さを再確認しました。
今回のインタビューは盛りだくさんの内容で、ここに掲載できたのはほんの一部ですが、それらが少しでも伝われば幸いです!

さて、早いもので2024年も残すところあとわずか。
今年も1年間、SMBC日興証券公式【note】をご覧いただき、ありがとうございました。
来年も皆さまに当社の取組みに関する情報をお届けしてまいります。
どうぞよいお年をお迎えください!

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