シンデレラになんてならない - 読書感想文『すべてはモテるためである』
森ノ宮駅に着くと環状線が人身事故だとアナウンス。思わぬ足止め。
そのまま改札の脇の本屋に吸い込まれて、暇つぶしになりそうな文庫を探す。
という、よくある偶然の選択の末に出会ったのが表題の本です。
すみません、表紙がかわいくて、つい。
これと並行して『天才はあきらめた』を読んでいたのですが。
共通する「モテ」のキーワードを軸に、2冊を交互に行き来するとまぁ面白い。
『天才はあきらめた』で描かれているのは、モテたいという気持ちと、どこかにはびこる「自分は天才じゃないか」の勘違い。
そして、それに翻弄されて楽観と悲観を行き来する山ちゃん。
それに対して、『すべてはモテるためである』はさながら、攻略本のような役割を果たしています。
「いやいや、そこ勘違いするなよ」とたしなめ続ける本書。
『天才は~』の感想文で、そのキーワードに「両極端」を挙げましたが、『すべては~』で推奨されるのはその一方の端っこ。すなわち謙虚、冷静側でいることを常に求めてきます。
この本を読んでいると、心がずーんと沈んでいくのがわかります。
音が聞こえるぐらい。ずーんって。
だって、否が応でも自分がモテないことが明らかになってしまうのですから。
いや、ただモテないだけならいいんです。「なんか気持ち悪いから」「なんか変だから」「趣味が灯台めぐりだから」・・・うん、そういうのは別にいいんです。
モテない男(自分)にとってもっとも直視したくない現実。
それは、「自分みたいなモテないやつは巷にいっぱいいる」ということです。
本書では、モテない男たちを6つのタイプに分類しているのですが、このパターンをもとに「お前はよくあるモテないタイプ③の男で、それはこうこうこういう理由であるからに、モテない」と断言されるわけです。
僕らは日々なんとなく「もしかしたら自分は何か特別なんじゃないか」といった妄想にとらわれて生きています。
実は思いがけない才能を発揮して一躍スーパースターになるだとか、自分にしか備わっていない特殊な性癖がかわいいあの子になぜか刺さり、好意を持たれちゃっていやん、だとか。
でも、それを真っ向から否定する「モテないのパターン化」。
お前みたいなやつは類型化できるくらいこの世にごろごろ余っていて、ゆえに誰からも選ばれないんだぞ、と厳しく指摘されているような気分になります。
さらに続くダメだし。
ここで話はそれますが。
自分は特別だと思い込みながら、そこにあぐらをかいて結局何者にもなれない、という過ちは、若さのなせる特権です。
それをモチーフにした話は枚挙にいとまがないほど。
本や映画になるくらいなのですから、それだけ多くの人の共感を呼びつつも、「おもしろい」わけですよね、この「待ってればモテるんじゃね幻想」。
そして若者がどういう態度だから、微笑ましく時にちょっと苦々しく見ることができる。30過ぎのおっさんがこうだと、目も当てられない、ああ。
話を戻します。
上記の手厳しいご指摘をまとめると、こうです。
「お前みたいなやつはごろごろいて需要がないのに、どうしてお前はそんな自分を変えることなく、何か奇跡が起きるのを待っているだけなんだ?そりゃモテんわ」
ということですね。
はい、おっしゃるとおりです。
具体的にじゃあモテるためにどうしたらいいの?の解説についてはもちろんこの本を読んで学んでほしいと思うものの、ひとつだけヒントになりそうなお言葉を。
この、「相手と同じ土俵に乗る」という行為ができれば、モテるようになるというのです。おのずと、ひとりでに。
さてはてここで自分の行いを振り返ってみると、常に自分は「一人相撲」なわけです。
相手が同じ土俵にあがっていないのにそれに気付かない鈍感さを振りかざし、あげくこっちの一方的な好意を押しつけることで、それを「優しさ」だの「アピール」だのと読み違える。
自分の価値観を一方的に押しつけるだけでは、当然ながら自分が変わることはできません。
だからモテないんです。なるほど。
あぁ、書いていてしんどくなってきました。
最近の失恋もまさにこのパターンじゃん。
この本と向き合うと、冷静になれます。
自分の中のおごりをしっかりと見抜かれているような気になります。
鏡を見て、生気の無い自分の顔を見ているような、そんな気に。
と同時に、自分に恋愛はもう無理だとも、思ってしまうのが副作用だったりしますが・・・。
さて、何から変えていきましょうか。
キャバクラでも行きますか(←これ、本書で書かれていたれっきとしたアドバイスですからね!)
2023.7.26
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