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#23「天職」は作るもの - ポジティブ心理学 -

この記事では、「仕事を ”天職“ だと捉えている人がどのように ”天職” を見つけたのか」について、数回に分けて一緒にみていきたいと思います。前回の記事で、人は仕事を「労働」「キャリア」「天職」と捉えることが多く、各々の見方によってモチベーションとなるものが異なるということを学んできました。

ここでは、特に仕事を「天職」だと捉えている人たちにフォーカスしてみたいと思います。前回でも述べましたが、「仕事観」に良いも悪いもありません。一方、ある研究報告によると、自分の仕事を「天職」だと捉えている人たちの方が人生における満足感や仕事に対する満足感が高いと言われています。「仕事観」は人それぞれだと思いますが、仕事を「天職」だと捉えている人たちはどうやってその「天職」を見つけていったのか、気になりますよね。ここから3回に分けて、彼らがどのように「天職」に出会っていったのかを一緒にみていきたいと思います。


「天職」は見つからない

それでは、仕事を「天職」だと捉えている人たちから「天職の見つけ方」を学んでいきましょう! ・・・ と勢いよくスタートしたいところなんですが、研究調査によって明らかになったことは、「天職」だと捉えている人たちは、その「天職」を見つけたわけではなかったんです。ガクッって感じですが、そりゃそうですよね、人間それぞれ十人十色。その人に完璧に合致している仕事なんて存在しません。では、なぜ彼らが「自分の仕事は天職だ」と言えるのか?それは彼らが自分なりに目の前にある仕事を作り変えていたからなんです。(これをジョブクラフティングと呼びます)

目の前の仕事を自分なりに作り変える

「いやいや、決められた仕事、勝手に作り変えちゃだめでしょ!」と思われる方もいらっしゃるかと思います。倫理観や道徳心が強い人ほど、そう感じますよね。安心してください。ここでいう「作り変える」とは、「床屋さんなのに、店長に内緒で勝手にパン屋を始めちゃおう」みたいな感じの話ではありません。与えられた業務内容を行うのは前提で、それを行う上で、自分ならではの味付けをするというイメージです。具体的に自分の仕事を「天職」だと捉えている人たちがどんな味付けをしているのか、一緒にみていきましょう。味付け方法は大きく分けて3種類あります。今回はその1つをご紹介します。

「業務内容」を作り変える

まず1つ目は、「業務内容」を自分なりに味付けしちゃうという方法です。例を挙げた方が分かりやすいかと思いますんで、例を用いて説明してみますね。

例えば、床屋さんの場合。床屋さんの業務内容って、主に「髪を切ること」ですよね。髪を切ることで対価をもらえるわけなんですが、ある理髪店で働いているマルオさんは床屋さんになって5年目、自分の仕事(髪を切ること)に正直、飽きてきちゃっていました。そんなマルオさん、あるとき、常連のお客さんが来店し、いつものように髪を切っているとき、お客さんが浮かない表情をしているのに気がつきました。

「どうしたんですか?」とマルオさんが伺ってみると、実は家庭内で問題があることを、そのお客さんが話し始めたのです。マルオさんは髪を切っている最中、親身にそのお客さんのお話を聴き、「それはご心配ですよね」と共感してあげました。もちろん、それによって、そのお客さんの問題が解決したわけではないのですが、自分の悩みを誰かに打ち明けることができたその方は、少し軽くなった表情で「ちょっと楽になりました」と微笑んで、お店を後にしていきました。

この出来事をキッカケに、マルオさんは「自分の仕事は “髪を切ること“ だけじゃなく、”会話をすること” も含まれているんだ。お客さんには見た目だけじゃ無くて、心もスッキリして帰ってもらいたいな。自分もその方が気持ちいいし」と思うようになりました。それ以降、業務中、会話に集中しだしたマルオさんは、元々もっていた気立ての良い性分もあり、改めて自分の仕事に楽しみを見出していきました。(つづく)

「髪を切ること」だけでなく「会話をしてスッキリさせる」ことも業務内容に付け足し、自分の仕事にやりがいを見出した床屋さん

いかがでしょうか?ここまで床屋のマルオさんの例を見ていきましたが、彼は「髪を切る」という業務内容に対して、「お客さんと会話をして、気持ちをスッキリさせる」という内容も付け足したことで、自分の仕事の意味合いが変わり、自分の仕事を「天職」だと感じるようになっていきました。このように、自分の業務内容を拡げたり、付け足すことで「天職」に作り変えちゃうというのが1つ目のやり方です。

皆さんの置かれた状況ではいかがでしょうか?仕事のどの部分にもっとフォーカスしたら「自分らしい」と思いますか? 何を付け足したら、もっと「自分らしい」と思えますか?ぜひ、考えてみてください!

さて、ここでは、自分の仕事を「天職」だと捉えている人たちは、自分にぴったりの仕事を見つけたというよりも、目の前の仕事を自分なりに作り変えていたこと、そして、その1つの方法として、「業務内容」を自分なりに味付けしていたことについて学んできました。次回は2つ目の方法として、「人間関係」を変えることについて一緒にみていきたいと思います。(つづく)

【参考文献】
Wrzesniewski, A., and Dutton, J. E. (2001). Crafting a job: Revisioning employees as active crafters of their work. Academy of Management Review, 25, 179-201.

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Shin Matsuguma | 松隈信一郎
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