うちの現場でスマートスーツが使えるのか?とお考えの方に
スマートスーツはアシストスーツのひとつですが、アシストスーツといってもさまざまな製品があります。その中でどれを選ぶかは、作業現場の環境や作業者の体力、期待する効果などによって異なります。
もし、作業者の筋力増強を希望されているのでしたら、スマートスーツを選ばない方が良いでしょう。なぜなら、スマートスーツは自分が本来発揮できる力以上の力をアシストする目的で開発、提供していません。
たとえば、床の上いある20kgの材料をコンテナに入れて机の上に持ち上げる作業があって、これを担当する作業員はこれをひとりで1日に100回実施しなければならないとしましょう。担当作業員からは疲労の声は聞きますが、まだ腰痛の訴えはありません。しかし、労務管理者はこの作業を腰痛リスクの高い作業だと認識していて、生産性を維持しながら、腰痛労災の発生防止のために何か対応をしなければならないと考えています。
このような場合、現場の作業改善にはいくつかの手段が考えられます。
例えば・・・こんなアイディアが思いつくでしょう。
床から机の上に材料を運ぶ作業自体をなくす。
その作業をリフトなどの機械やロボットなどを使って実施する。
作業者の能力を高めるアシストスーツを用いて、1回に運ぶ材料を50kgにしして持ち上げる頻度を減らす。
作業員に軽労化を目的としたアシストスーツを着用させて、肉体にかかる負担と疲労を軽減する。さらに作業による適度な運動刺激で作業員の体力の維持増進を図る。
といった解決策が思いつくと思います。他にもまだアイディアがあるかもしれません。スマートスーツの導入は、「4.」に該当します。
スマートスーツを導入した作業現場でも機械やロボットの導入と比較されたことはあります。例えば、海に浮かぶイカダから吊るした養殖コンテナを会場に持ち上げる作業がありした。作業員(漁師)は数時間の間にいくつものコンテナを海上に持ち上げるのが重労働と感じ、腰痛を訴える仲間も多かったことから、イカダの上にウィンチを導入して機械的に巻き上げることを提案しました。
しかし、ウィンチにセットする手間、ウィンチが巻き上げる時間、ウィンチから取り外す時間、ウィンチを移動させる時間などを考えたとき、結局、ウィンチでは時間がかかりすぎて仕事にならない。と判断し、スマートスーツを導入しました。海水にさらされる環境では金属を使う装置は錆びてしま雨ということもありました。
上記の作業では作業者の筋負担や作業効率を測定しましたが、スマートスーツを着用した場合、腰痛発症リスクも作業効率もともに10%ほど向上したというデータを得ています。(水産庁のプロジェクト(水産業革新的技術導入・安全対策推進事業)で実際に行ったものです。)
作業をロボットなどに代替させる場合には、比較的大きな新たな投資が必要になったり、手作業でのスピード感とのギャップで生産性が大きく低下する場合もあります。
また、増力化を目的とするアシストスーツの場合、1回に持ち上げる量は増え、作業員の負担も軽減しますが、そのようなアシストスーツは大型で外部から電気などの動力源を必要とするため、大掛かりな準備が必要です。作業者もその作業だけを実施するのであれば効率的ですが、他の作業の合間にある重作業だけだと、全体での生産性が上がるかどうか検証が必要になります。
作業現場の労働環境は、それぞれ事情が違うと思いますので、しっかりと導入後のシミュレーションを実施した上で、作業現場の労働改善を行うべきでしょう。
スマートサポート社では、導入する作業現場の労働状況などをお聞きして最適なスマートスーツの導入方法をご提案しています。