スマートスーツを選ぶ理由
人手不足が深刻化しています。
経営者や労務管理の責任者の皆さんは、労働力を確保するために、これから相当のご苦労をするのではないかと思います。特に、中高年の労働者を雇用する場合、転倒や労災などの行動災害に罹災する確率が高く、これらの労災は完治して復職するのに数日から数週間の期間を要すると言われています。
かつて、日本の労働習慣には、「ケガと弁当は自分もち」といわれていました。これは雇用状況が買い手市場だったときの話です。今は労働者がしっかりと保護され、解雇も制限があります。それに加えて、現場の人手不足があれば、働き手の皆さんがケガなく、職場に満足して末長く働いてもらうことを考えなければなりません。
言うまでもなく、従業員のウエルビーイングが高めることが、労災予防や生産性の向上に有効ですが、そのための職場環境を使用者側、企業側が整備してあげなければなりません。
私たちは「スマートスーツ」というアシストスーツを大学などと共同開発し販売しているベンチャー企業です。実は、このスマートスーツが従業員のウエルビーイングに役立つツールでもあるのです。
まずは、スマートスーツの特徴について解説します。
スマートスーツは、作業によって身体(特に後背部)にかかる負担と疲労を軽減するアシストスーツです。補助力を最大25%に設定することで作業による適度な負荷がかかります。この運動刺激によって作業者の体力を維持、増進知することができます。私たちはこの概念を「軽労化」と言ってます。
アシストスーツというと、多くの方は「力持ちになれる」、「パワーアップのための機器だ」、「持てないものが持てるようになる」と考えられるのですが、実は自分の持っている力はスマートスーツを着用しても変わりません。
パワーアップ(力持ちになる)ためには、新たな動力が必要になります。もモータやコンプレッサを利用することが多いのですが、これを動かすには、電源であったり、圧縮空気などが必要となります。また、動力を制御するためにセンサやコントローラなども必要になります。さらに、自らの骨格や筋肉では発生した力を受け止めることができないので、身体の外側に固いフレームが必要であったり、機器の重量や発生した力を床に逃すための仕組みが必要になります。
つまり、機器の重量が重くなり、装着が難しくなり、価格が高くなります。そして何より、動作が制限される可能性があります。
一方で、軽労化を目的としたスマートスーツは、自分の持っている筋力をアップすることはないので、補助力を自らの身体に分散します。つまり、腰の負荷を軽減した場合、肩や胸、下肢に負担を分散するのです。
また、腰の負担を減らす場合、腹圧を高めることが重要ですが、中腰姿勢時にお腹に回したベルトで、適度に締め付けることで自らの腹筋を刺激して腹圧を高めることができます。
さらに、新しいタイプのスマートスーツは下肢部の固定位置を膝下にすることで、しゃがみこみ姿勢からの立ち上がり動作を支援するようにしています。
これらを安価な弾性体(ゴム材)で実現しているのです。そしてこれらは特許技術になっています。再現性を証明するために、大学の研究室での検証を重ね、幾つもの論文として発表しています。また、厚生労働省が第三者機関で効果の検証を行い、腰痛予防に効果があると認められています。
これだけの優れた特徴があっても、現場の作業者に定着させるのは難しいとスマートスーツを購入した経営者や労務担当者からの相談があります。それは、腰痛による労災件数が非常に多いものの、保護具等の装用義務がないことがあります。腰痛発症の原因を追求するのは難しく、腰痛の労災認定も基準がわかりにくくなっています。
「ケガと弁当は自分もち」という労働文化があると冒頭で書きましたが、腰痛に関しては、いまだにこの風習が生きているように思えます。
日本では腰痛の労働災害基準が不明瞭と書きましたが、世界の基準はどうなっているのでしょうか?
米国労働安全衛生研究所(NIOSH)では、腰椎圧迫力の基準値を3,400Nに設定しています。3,400Nでも3割の人には腰痛発症があるという数値です。欧州もこの数値に倣っているということで、おそらく、日本でも3,400Nというが基準になると思われます。今のうちに、できるだけ、この基準値以下に抑えた作業体系を作りたいものです。
「軽労化ナビ」では、作業の腰部負荷を計測することができます。今の作業体系での腰部負荷を知ることで、具体的な腰痛対策を講じることができるようになります。