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上向き作業時の腕のアシストについて

内装工事で天井を張ったり、天井クロスを貼り付けたりする方や、天井照明を取り付ける電気工事屋さん、りんごなどの果樹を収穫する農業者の方々が悩まれるのが上向き作業時の肩や腕にかかる負担です。

特に、四十肩、五十肩に悩まれる方は、そもそも肩が上がらないとか、上げた状態を保持するのがキツいと言われます。肩が上がらないとそもそも仕事にもならないので大変お困りのようです。

筆者も長らく五十肩に悩まされてきたので、その辛さはよくわかります。整形外科でレントゲンを撮って、痛み止めの注射をしてもらったり、マッサージや整体に通ったりしても、一時的に痛みは緩和しますが、根治するには長い時間がかかります。

そこで、上腕を持ち上げる動作や上腕を持ち上げた状態で静止するのをアシストする装置を開発して欲しいという要望をしばしばお受けします。そして、実際にこれまでいくつかの試作品を開発してきました。

でも、商品化して販売するには至っていません。

なぜか・・・

それは、転倒時に受け身ができない可能性があり、危険だからです。

肩関節は複数の骨に筋肉や腱で構成されていて、これらが複雑に関連して動いています。構成するパーツのどこかに炎症が発生したら、全体の動きに影響が出るのです。五十肩は、「肩関節周囲炎」というのが正式な病名だそうです。

肩は複雑な機構により、ぐるぐると回すことができます。これを旋回と言います。腕をあらゆる方向に向けることができるのです。

肘や膝の関節は単純な構造なので、一方向への曲げ伸ばしです。腰も多少の旋回はありますが、肩関節ほど広範囲には動きません。だから、アシストも概ねひとつの動作に対応すれば、他の動作を妨げることはありません。

ところが、肩関節は複雑な構造なので、ひとつの動作を支援すると、他の方向への動きが制限されることがあります。全ての方向への動きを支援しようとすると補助する機構も複雑になり、コストもかかるでしょう。

脚立に乗って上向きの作業をしている際に、腕を持ち上げるアシストはできますが、万が一、脚立が倒れて、受け身をとろうとしても、アシスト機器が動きを邪魔して、手が動かせない。といったことも考えられるのです。

転倒して頭を打つなどの大怪我をしてしまう可能性があります。
技術的にできることと、トータルで労働者の安全を考えれば、当然、安全を優先に考えることになります。

ですから、今のところ、上向き作業時の腕の補助については、私たちは積極的に実施していないのです。