スケールアップ企業として、スピード感とダイナミックさを両立して挑む─SmartHRのエンタープライズへの挑戦
SmartHRでは現在、従業員2,001名を超える大企業を対象としたエンタープライズ領域での取り組み、そして採用と組織づくりを強化しています。
SmartHRでエンタープライズの開拓に挑戦する醍醐味はどんなところにあるのか?
フラットな目線で紐解いていただくべく、ハイクラス転職・キャリア支援で30年近くの実績を持つ人材紹介会社クライス&カンパニーの菱沼史宙さんにインタビューをお願いしました。SaaS業界への豊富な知見に加え、日々転職希望者と向き合う視点から、鋭い質問を投げかけていただきました。
*同内容の動画も公開しております!こちらもぜひご覧ください。(内容は重複がございます)
https://youtu.be/aKycgwz9Sgs?si=6yePT9O7iADrC242
なぜエンタープライズ領域を強化するのか
菱沼史宙さん(以下、菱沼):本日はエンタープライズ領域の開拓というテーマで色々とお話を伺えればと思います。SmartHRは、創業期から労務管理プロダクトで急成長を遂げてきていて、その印象は今も強いです。今後のエンタープライズ領域の開拓余地はどのように捉えていますか?
佐々木:エンタープライズ領域へのサービス導入はまだまだ伸ばしていけると考えています。
SmartHRは労務管理クラウドでシェアNo.1*ですが、日本の労働力人口から見れば、SmartHRのカバー率はまだ数%にすぎません。SmartHRの売上比率を従業員規模で見ると、従業員2,001名以上のエンタープライズ、501〜2,000名のミッドマーケット、500名以下のSMB(Small and Medium Business)の3分類で、それぞれ約3割というバランス型になっているのが現状です。エンタープライズの中でも今、サービス業や製造業、医療福祉業などで引き合いが非常に多くなっていて、これらの業種は日本の労働力人口の5〜6割を占めています。ここには、大きな開拓余地があると考えています。
また労務管理クラウドの市場そのものも非常に伸びていて、タレントマネジメントも年に30〜40%の成長が見られる市場なので、ホワイトスペースはまだまだある状態ですね。
菱沼:エンタープライズでも売上比率が3割強に達しているということは、以前から大手企業との取引も進めてきたということですよね。なぜ今、改めて注力していく姿勢を示すことになったのでしょうか?
佐々木:SmartHRは「well-working 労働にまつわる社会課題をなくし、誰もがその人らしく働ける社会をつくる。」というコーポレートミッションを掲げています。先ほど労働力人口に対するカバー率の話をしましたが、ミッションを実現するためには、働く人全体に対する影響度をより高めていくことも考える必要があります。そういう意味で、影響範囲がより大きいエンタープライズ領域へサービスを広めることは必然だと考えています。
さらにプロダクトの進化や組織改編などを通じて、エンタープライズ企業に価値を届ける体制が強化されているタイミングというのもあります。
SmartHRの「マルチプロダクト戦略」を紐解く
菱沼:現在のSmartHRの戦略キーワードは「マルチプロダクト」と聞いています。労務管理から広がるマルチプロダクトの優位性はどんなところにあるのでしょうか?
佐々木:“Where to play”、どこで戦うかというポジショニングと、“How to win”、つまり組織実行力の話があります。
まず、“Where to play”についてお話します。
SmartHRは労務管理のプロダクトで市場に参入し、正確で最新な「従業員データ」がSmartHR上に自然と蓄積される仕組みを開発・提供してきました。入退社や社内異動といった従業員ライフサイクルのデータに加え、社会保険も扱うため結婚、出産、引越しなどのライフイベントのデータもすべて最新の状態で集まってきます。この従業員データの蓄積があることで、各プロダクトのシナジーを生み出すうえでの強固なポジショニングがとれる。これは市場拡大において大きな優位性になります。
また、SmartHRは労務管理の担当者だけでなく、全従業員が使うプロダクトであるのも特徴です。この特徴を活かし、生産性の向上だけでなく、離職率の低下や組織のエンゲージメント向上といった価値を提供していくために、労務管理以外の領域にもプロダクトを提供していく戦略をとっています。タレントマネジメント領域もそのひとつですね。
SmartHRはローンチから8年の間にプロダクトを18個リリースしてきましたが、これからプロダクトの開発ペースを格段に早めていきます。
菱沼:なぜそのハイペースでプロダクトを開発できるのかも気になるところです。秘訣はどんなところにあるんでしょうか?
佐々木:効率的にプロダクトを開発していくための共通基盤の整備と、スピードを保つための組織づくりが挙げられます。
ここでは組織について触れますが、私たちは今のSmartHRのフェーズを、スタートアップでも大企業でもない「スケールアップ企業」と呼んでいます。私たちは今もスタートアップのスピード感を持ち続けていると自負しています。まだスタートアップと言われる時期に私がPMMとしてプロダクトを立ち上げたときには、一人で商談のアポをとって提案して、受注したらオンボーディングもやって……と、やはりリソースが足りていませんでした。今は1,000名を超える社員がいて、リソース配分・投資もダイナミックに行うことができます。スタートアップのスピード感を失わず、大きな企業体としてのダイナミックさを両立していくのが、スケールアップ企業。これは新規プロダクトを複数並行して立ち上げていくマルチプロダクト戦略を実行していくうえで非常に大事だと考えています。
菱沼:なるほど。組織間の連携や組織を横断してスピードを保つ仕組みがより重要になってきますね。
佐々木:おっしゃる通りです。組織の強い実行力、というところで非常に重要になるのが二つ目の話、“How to win”です。2024年1月、SmartHRは大きな組織改編を行いましたが、その背景には組織実行力の強化があります。SmartHRのカルチャーは、「オープン、フラット、遊び心、そして自律駆動」。これを保ちながらより大きな組織としての実行力を確立していくことは、現在取り組んでいるテーマでもあります。
エンタープライズ領域でのSmartHRの強み
菱沼:エンタープライズでの導入事例にはどんなものがあるんでしょうか?
佐々木:複数ある中から2社ご紹介します。まずサービス業のすかいらーくグループさまでは、年末調整機能の導入をきっかけに、現在は労務管理機能を中心にご利用いただいています。ファミレスをはじめさまざまな飲食ブランドを展開されていて、店舗等のパート・アルバイトの皆さんにもSmartHRを利用いただいています。
菱沼:パート・アルバイトの方まで。
佐々木:はい。正社員がオフィスや自宅のデスクトップから使用するだけでなく、モバイルでも入力や申請ができるのがSmartHRの特徴です。店舗の店長さんってすごく忙しいんですよね。店舗の運営に発注、季節ごとのメニュー展開に加え、労務管理や手続きの負荷も高いです。紙の手続きだと手間もコストも大きいので、SmartHRを通じた業務効率化にご期待いただいています。
もう1社、デンソーグループさまをご紹介します。デンソーグループは製造業ですが、サービス業と似たところがあり、オフィスワーカーだけでなく工場従業員も多く働いています。もともと導入されていた人事の基幹システムと併用してSmartHRをご利用いただいています。
菱沼:たとえば、企業がシステムを導入やリプレイスする際には、SmartHRのどこに魅力を感じているのでしょうか?
佐々木:何より、使いやすさを挙げていただくことが多いですね。私たちも使いやすさにはこだわっていて、UIはもちろん、アクセシビリティも強化しています。また全従業員がストレスなく使えるよう、利用の学習コストが低く、なるべく説明要らずで使っていただけるプロダクトを目指しています。
加えて柔軟性、拡張性も評価いただいています。まずは入社手続きから始めて、次は年末調整も導入しようか、と利用範囲を拡げていく企業もあれば、ワークフローは別のシステムでやっていたけれどそれをSmartHRに集約しよう、蓄積される従業員データを活用しようとタレントマネジメントシステムの導入の仕方も可能です。
菱沼:なるほど、企業にとってベストのITアーキテクチャを選べるところがポイントですね。
国内では従業員データベースを軸とするSaaSではSmartHRが先行していると思いますが、海外ではその領域でエンタープライズの市場シェアを取っている事例などはあるんでしょうか?今後のマーケットの動きはどうなっていくのかなと。
佐々木:従業員データベース起点ではないんですが、給与システムから始まってプロダクトを拡張している企業はいくつかあります。私たちもマルチプロダクト戦略や組織づくりの参考にしている企業もありますね。
菱沼:そういう海外のプレイヤーが日本のマーケットで驚異になる可能性はあるんでしょうか?
佐々木:もちろんあると思います。ただ日本独自の法律や文化もあるため、スピーディーにフィードバックを得て機能を改善していける国内SaaS企業のほうが価値提供としては優位に立てると考えています。
エンタープライズ領域でのセールスの働き方
菱沼:今、エンタープライズ領域に打って出ようとしているSaaS企業は多いですが、実際にはエンタープライズ向けに機能が整っていないケースもよく聞きます。SmartHRはある程度整った状態なのでしょうか?
佐々木:だんだんと整ってきた、という状況です。数年前は求められる機能と提供できる機能のギャップもあり、導入いただいてもサクセスするうえで苦労する時期もありました。なんとか頑張って追いついてきて、今はエンタープライズの市場でもプロダクトマーケットフィットしてきました。といっても、使っていくうちに新しい課題は出てきますし、ユーザーのニーズに合わせてアップデートを続けています。お客さまと伴走しながら新しい機能を作っていくことを繰り返していかなければなりません。
SaaSに完成形はないと思っています。でも日本を代表するような企業のベストプラクティスをSmartHRでつくって、それを広げて“well-working”な社会をつくっていく、その手応えは感じています。アクセルを踏むための準備が整った、というのが2024年の現在地です。
菱沼:エンタープライズ領域で価値を提供できるプロダクトが育っているんですね。それにしても全従業員が導入するプロダクトをエンタープライズ領域で販売・導入していくのは、かなり難易度が高いのではないでしょうか?
佐々木:そうですね。一部門の特定の利用者だけでなく、その先にいるエンドユーザー、全従業員の業務効率化や生産性向上、エンゲージメント向上につながるプロダクトを提供するからには、展開の順番やノウハウは非常に重要です。今後マルチプロダクト戦略を実行していくうえでは、一人のセールス、一人のカスタマーサクセスがすべてを担うのではなく、チームで戦っていくことが求められます。プロダクト専門のセールスやカスタマーサクセス、全体の導入をサポートするプリセールスなど、新しい職種や役割をつくり新しい挑戦を始めているところです。
菱沼:例えばマーケティング部門だけ、経理部門だけしか使わないプロダクトを扱ってきた人からすると、提案の仕方やキャッチアップの難易度も高く感じてしまいそうですが。
佐々木:イネーブルメントは今、私たちも強化しているところです。入社してからのオンボーディングプログラムが2か月ほどあり、学習コンテンツやロールプレイなども用意しています。メンター制度もありますし、商談に出始めてからどうスキルアップしていくかという育成プログラムも今後作成する予定です。
SmartHRでは、マルチプロダクト戦略を実行していくうえで、プロダクトカットではなくマーケットカットで組織をつくっています。担当したマーケットに対して、多様なプロダクトで価値提供していくことを狙っています。そのためにいろんな人たちと協業してチームで動ける体制にしていて、それはSmartHRで働く魅力のひとつだと言えます。
菱沼:チームで動くという点では、SmartHRはセールスやカスタマーサクセス部門とプロダクト部門の距離が近いイメージがあります。
佐々木:そうですね、提供価値をより高めていくためにも連携は大事にしています。
プロダクト部門としては一次情報を得てお客さまのニーズの解像度を上げていきたい。一方ビジネス部門は、導入後に蓋を開けてみたらお客さまの期待と機能にギャップがあった、という結果にならないように、プロダクトの価値を正しく理解しながら、運用提案などもしつつ、お客さまに寄り添うことを心がけています。そのためにはお互い情報格差がない状態で対等に協業できることが大事だと思います。
菱沼:自分が売るものをチームで育てていくような感覚、すごくいいですね。
佐々木:会社のメンバーみんなで社会課題を解決するためにプロダクトアップデートしていく、その価値を提案していくところの面白さは体感できると思います。
今、SmartHRでセールスをやる魅力とは
菱沼:リアルな話も聞いてみたくて、エンタープライズ領域で活躍されている人は転職時、報酬水準もかなり意識されることが多いです。SmartHRではどんな報酬テーブルを用意されてるんですか?
佐々木:SmartHR、報酬水準が低いイメージを持たれていたのは事実だと思います(苦笑)。会社としても成長していきますし、活躍いただく方に対して報酬で報いることは非常に意識してます。ARR150億を超えてこれから200、300と成長していく企業として、収益率の確保もだいぶ整ってきて、それに伴い報酬水準も競争優位性があるレベルになってきました。セールスなど数字を目標とする職種では成果給でアップサイド設計をしています。評価と昇給・成果給の支給は半年ごとで、評価の最高値をとると等級によっては月次給与の6か月分に業績評価係数を掛けた成果給が支給される仕組みで、連続で最高値をとると基本給の約2倍の年収を見込めます。こういうところも、もっとアピールしていかないといけないですね。
菱沼:SmartHRへの転職を考えている人にはぜひ注目してほしいところですね。最後に、今SmartHRに入社することの面白さについてお話いただけますか。
佐々木:まず事業の面白さについては、マルチプロダクト戦略が本格化していくフェーズであること。やりたいことも、アイデアもたくさんあります。それを実行してお客さま、ひいては社会に幅広く価値提供をしていく、その面白さをぜひ味わってほしいです。
また、SmartHRはもう成熟した組織なんじゃないかと言われることもあるんですが、まったくそんなことはありません。経営としては、新しい組織や仕組みを変える仕掛けていくことも心がけています。これから入社される方にも、SmartHRに入って試行錯誤して、どんどん新しいことを仕掛けていってくれることを期待しています。
今後も一層の急成長を目指していきますが、個人プレーで頑張らなきゃいけない、社内で競争が激しくてギスギスしているというような空気はありません。これからもSmartHRのカルチャーを保ちながら、チームで成果を出して一緒に喜びを共有する実感も得られると思います。こういう働き方を、スケールアップ企業として、スピード感とダイナミックさを持って実現できるところが、SmartHRにこれからジョインいただく面白さかなと思います。
ご応募を迷われる方がいらっしゃったら、クライス&カンパニーさんにご相談いただくといいのではないでしょうか。
菱沼:ありがとうございます。僕から見てもSmartHRのカルチャーはずっと変わらず保たれていると思います。これからの会社の急成長も見据えながら、新しいことに挑戦していきたいマインドのある人にぜひ来ていただきたいですね。今日はありがとうございました。
佐々木:ありがとうございました。
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SmartHRでは、一緒に働くメンバーを募集しています!ご興味をお持ちいただいた方は、採用サイトや求人情報をぜひご覧ください。
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制作協力:伊藤 宏子
撮影:@houshi(SmartHR)
*デロイト トーマツ ミック経済研究所「HRTechクラウド市場の実態と展望 2022年度版」労務管理クラウド市場・出荷金額(2022年度見込) https://mic-r.co.jp/mr/02640/