「柔らかさを保持したままスケールアップしていく未来を楽しみたい。」─SmartHR プランニング部の挑戦
人材会社で22年、法人営業、そして障害者雇用領域でキャリアを構築
──まずはSmartHRに入社するまでの有本さんのキャリアについて聞かせてください。前の会社が、在籍期間22年と長いですよね。
有本:はい、2社目の在籍期間が長かったんです。入社当時はインテリジェンス、今はパーソルグループと社名が変わっていますが、上場直後の社員200名くらいの頃に入社しました。
大学時代はややサブカルな、アナーキーなゼミに所属していまして(笑)。社会に出るのがちょっと嫌で、就職活動も全然熱心ではなかったんですよ。新卒で入った会社はとりあえず、という感じだったので、すぐに転職することにして。
──転職先はどんな観点で選んだんですか?
有本:保守的な環境は合わないと自分でもわかっていたので、成熟した業界よりは、まだ柔らかさがあって伸びている業界がいいなと思っていました。2000年頃は企業のニーズの変化や派遣法改正などに伴って人材業界が伸びているタイミングだったので、人材系で探して。当時はまだ“どベンチャー”な雰囲気だったインテリジェンスに、第二新卒のタイミングで入社しました。
──そこから20年以上、様々な経験をされてきたと思いますが。
有本:入社後は約8年間、法人営業に携わっていました。新規参入組として無名な会社だった頃にテレアポから始めて。事務派遣領域や人材紹介事業、広告媒体の法人営業としてプレイヤー、そしてリーダーを経験しました。
営業成績はよかったですが営業が得意だと思ったことはないです。
──そうなんですか!?
有本:初対面の人とうまく話したり、お客さまの前でプレゼンをしたりすることには当時、苦手意識があったんです。ただお客さまとのコミュニケーションから何を求められているのか理解して、それを常にスピーディに打ち返す、ということは徹底してやっていました。お客さまからしたら「気がついたら全部お任せしちゃってた」という状態になっていただいていましたね(笑)。
──なるほど。すごいです……!
有本:その後、障害者雇用領域の新規事業 dodaチャレンジ事業にジョインしました。後輩が立ち上げた事業だったのですが、営業同行の際に自分も話を聞いて、すごく面白そうだなと。その営業の帰り道に「私もこの部署に行きたい!」と伝えて、翌日には上司にも異動希望を出しました。それで翌期には異動を実現しました(笑)。
──これもまた、すごいスピード感ですね。そこまで有本さんのモチベーションを駆り立てたのはなんだったんでしょうか?
有本:それまでやってきたこととは領域もゴールの考え方も異なる世界だったんですよね。直前まではメディカルとITの領域を担当していて、専門知識を駆使しながら適切な人材を絞り込んで紹介するスキルが必要とされていました。これに対して障害者雇用は、多様な人がそれぞれに異なる制約を持っている中で、その人を活かせるような組織での配置を考え、環境をつくって働いてもらうことが大事です。その違いに興味を覚えました。
もともと私は小さい頃から、社会にある差別や偏見に過敏に反応するところがあり、変えていきたいという意識をずっと持っていました。障害者雇用の事業は、社会に浸透している価値観の変容を促すことができる。自分がもともと持っていた軸にマッチするなと、直感的に思ったんですよね。
そうして11年間、障害者雇用領域でキャリアアドバイザー組織とコンサルティングサービスの立ち上げ、事業企画部門など、様々な組織を担当してきました。2016年4月以降は事業責任者に就任し、障害者専門の人材紹介事業である「dodaチャレンジ」や就労移行支援事業、コンサルティング事業の事業成長に貢献してきました。
「何歳になっても人は成長し続けられる」と、環境を変えることを決意
──やりがいも責任もあるお仕事に就いている中だったと思いますが、転職を考えたのはどんな契機があったのでしょうか?
有本:22年の間に大企業へと成長し、入社当時と比較して組織としての機動力の変化を感じるようになってきていました。執行役員になって自分も経営に近い立場で携わっていく中で、求められる大企業として守らないといけないディフェンシブな部分と、一方で自分はもっと手を動かして、頭も働かせて、汗をかいて働きたいという思いの間で、ジレンマを感じている部分はありました。
ただ、パーソルという会社の事業が好きで、そこで携わる仕事も、一緒に働く仲間も大好きで。自分が携わっている事業の社員たちを守りたいという責任感もあって、社を離れる決心はつきかねていたんです。
そんな中、パーソルを出る決断をした最も大きな契機は、パーソルグループで実施してくれた山口周さんの上級管理職向け研修プログラムを受けたことでした。リベラルアーツをテーマにしたプログラムで、政治、生命科学、哲学など、各分野の第一人者の皆さんが講演をしてくださって、さらにセッションするというものです。刺激に満ちていて、視野が広がり内省も進みました。お会いした方々も若手から70代まで本当に様々で、ずっと年配の方でも博識で、頭の回転がとても速くて、思考に柔軟性と深さがあって。こんなにも人は成長し続けられるんだ、と感動しました。
自社への責任感で仕事を続けてきて、自分自身も20年以上同じ会社にいて、果たして新しいところに飛び出せるのか不安もありました。でも「いや、年齢じゃないな」と。今こそ自分自身の成長に立ち返ろう、と環境を変える決心がついたのは、この経験のおかげですね。
SmartHRに転職した決め手はミッション、経営層への共感
──自身のさらなる成長の機会を求めて転職することを決意し、いろいろな会社を検討されたと思います。その中でSmartHRを選んだ決め手はどんなことだったのでしょうか?
有本:新しい挑戦をしたくて、大企業ではなくスタートアップを中心に探していく中、信頼できるエージェントさんから紹介してもらったのが最初のきっかけです。それで会社のことを徹底的に調べていきまして、なかでも印象的だったのは、COOの倉橋さんへのインタビュー記事です。COOがこれだけ解像度高く事業のことを理解し、事業戦略についても自分の言葉で明快に発信しているのはすごいなと。こういう人のもとで働けたらいいなと思いました。
ミッションやバリューに共感できたのも大きいですね。コーポレートミッション「well-working 労働にまつわる社会課題をなくし、誰もがその人らしく働ける社会をつくる。」は、人を限定せずにすべての労働の課題を解決することを示しています。
私は営業経験が長いこともあって、「成果」を追求するマインドは身に染みついています。でも成果というのは単に数字を追うことだけではありません。例えば障害者雇用では、対話を通じて企業の偏見を解消し、多様な人材を受け入れてもらえるよう働きかけます。そうやって社会の価値観を変えていくこともまた「成果」です。それにやりがいを感じている私の思いも内包できるミッションだと感じました。
──会社のミッションやバリューに深く共感して入社していただけたんですね。長く勤めた環境から新しいカルチャーに飛び込むことへ不安はありませんでしたか?
有本:面接でいろいろな人と話をしていく中で、迷いは生じなかったんですよね。他社の面接では、いい会社だなと思っても自分がそこで働くイメージがつかない感覚もあったんですが。SmartHRでは自然と、「ここでやってみたい」と思えました。
──それがまさにカルチャーマッチなのかもしれないですね。マネジメント職ではなくメンバーとして入社することについては、抵抗はありませんでしたか?
有本:それについても、パラシュート人事をしない理由を倉橋さんが語っている記事を事前に読んでいたので、不安はありませんでしたね。それに、前職でもマネジメント採用の難しさは経験していて。経営統合で両社から人員が集められた際、同じ業務領域の部署でもシステムやマネジメント体制が変わることで様々な齟齬が生まれ、業績も組織コンディションも悪化したことがあったんです。それ自体は避けられないことだったと思うのですが、自分が「正しい」と思っていることでも相手にとってはそう捉えられない、相手の目線に寄り添ったマネジメントが重要であることを痛感しました。
パーソルとSmartHRは人事領域という共通項はあるにしても、私にとってはSaaSは初めての業界で、環境も全然違います。まずはちゃんとプレイヤーとして手を動かしてみるのは必要なことだと認識していましたし、実際そうしてよかったですね。
SmartHRカルチャーのよいところ、そして解消したい課題
──入社してからの有本さんのお仕事について簡単に紹介をお願いします。
有本:従業員数2,001人以上のエンタープライズ企業を対象にした事業本部でプランニングの事業部に所属していて、4月から部長を務めています。インサイドセールスからセールス、カスタマーサクセスまで一気通貫で見るポジションですね。エンタープライズ事業本部のKGI、KPIを達成するための戦略・戦術の実行を支援する役割です。
──入社してみてどうですか?印象的だったことがあれば教えてください。
有本:あまりにも情報量が多すぎて。
──入った社員はみんな言います。よさでもあり課題を感じる点でもありますね。
有本:前職だったら絶対クローズにされていたような情報も自由に見られるので、それはすごく面白く、興味深く読んでいます。でも情報が散乱していて、どれが最新でどれが公式の情報なのかキャッチしづらいところはありますね。
今はだいぶ慣れてきましたが。最新や公式の情報にタグをつけるなど工夫で解決できることですし、みんなが自律駆動でどんどんアウトプットしていて、それをいつでも好きに読みにいける環境は本当に素晴らしいので、それ自体はキープしていきたいですね。
ほかにも「なんていい会社なんだ!」と思ったことを思い出しました。ある時、クオーターの折り返し時期に業績が芳しくなかったことがあって、それをキャッチしたPMMが、目標達成のために何かできることがないかPMMの視点で考えて発信してくれたんです。さらに私たちプランニングのSlackチャンネルに来て、「もうちょっと解像度を上げたいからモニタリングの数字を見せてもらえませんか」とやり取りが始まり、そこから新しい施策が決まりました。
そのPMMにとっては、自分のミッションに完全にリンクする話ではないのに、自発的に仲間も巻き込んで動いてくれているわけです。SmartHRの事業成長を最大化することが最も大事で、それに向かってまさに自律駆動している。1,000人規模でもそれができているんだなと、SmartHRのカルチャーの浸透を実感するできごとでしたね。
──そういうシーンはSmartHRではあちこちで見られますね。反対に、課題だと感じるのはどんなことですか?
有本:自律駆動のもう一つの面というのでしょうか。自律駆動が賞賛される組織なので、やりたいことがあると、それぞれがプロジェクト的に進めていくことになります。会社の規模が大きくなってくると、事業本部としての優先づけに沿わない形でリソースが使われすぎてしまうリスクがあります。自律駆動はカルチャーとして守りつつ、もう少し全体最適を考えたリソース配分になるように工夫は必要だと考えています。
一つの有効な手段は、上段の全体戦略や優先度を明確に発信していくことじゃないかなと思います。それがメンバーに浸透すれば、みんなが戦略に沿うかたちで、自分にできることはなんだろうと自律駆動で考えていけるわけで。これは経営陣や事業責任者の発信が大事であるとともに、それを浸透するように伝播していくのもマネジメントやプランニングの重要な役割だと思っています。
カオスの中で課題解決を楽しめる人にはまたとない環境
──有本さんは2023年にSmartHRに入って1年あまり。1年過ごしてみて、今、SmartHRに入る面白さはどんなところにあると感じますか。
有本:SmartHRって、1,000人規模に成長してだいぶ落ち着いているかと思いきや、けっこうカオスなんですよ。社会が変わり、社会が変わればサービスも変わり、組織も人が増えて変化し続けています。変数が多すぎる中で、整理しなければならない新しい課題が毎日入ってくる、という感じです。
そのカオスの中で、情報を整理して、論点を整理して、課題設定して実行して……というのをガンガン回していくのが好き、という人には、またとない環境だと思います。
──カオスを楽しめる人を求む、ということですね(笑)。
有本:私がまさにそうです(笑)。こんな感じでずっといけたら、楽しい会社だと思います。
入社前にCEOの芹澤さんのnoteを読んで、透明性やスピード感といったカルチャーを残したまま成長していくと発信していることにも感銘を受けたのを覚えています。CEOの立場で発信することで自分に逃げ場をなくして、絵に描いた餅じゃなくて本当に実現していくんだという覚悟を感じました。私はそれを信じたいなと。柔らかさを保持したまま、スケールアップしていく未来を私も楽しみたいですね。
マネジメント経験者の転職シリーズ 第1回は以下よりご覧ください。
SmartHRのセールスに関するその他の情報は以下よりご覧ください。
制作協力:イトウヒロコ
撮影:@garashi(SmartHR)