Designship 2020にデザイナー4名でオンライン参加!全員でレポートしました!
スマートキャンプデザインブログです。
2020年10月24日〜25日開催の『Designship 2020』というデザインカンファレンスに、チーム全員(4名)でオンライン参加してきました。
さまざまなセッションがありましたが、私たち4名が気になったセッションを、1名1つピックアップして短くまとめたレポートを書きました。
1. 『またとないデザイン』を視聴してみて
1日目、2つ目のキーノートセッションで、株式会社日本デザインセンター 取締役の色部義昭さんが登壇されたタイトルです。
「またとない」というキーフレーズを使ったプレゼンテーションが印象的でした。
色部さんは『市原湖畔美術館』『須賀川市民交流センターtette』『Osaka Metro』『国立公園』『羽田空港』など、特定の施設と密接に関わるようなデザインを幅広くご経験されている方です。
それぞれの施設について制作物を交えながらコンセプトや制作意図を語るスタイルでした。
施設と関わるデザインは、1度作ってしまうとその施設にずっと残り続けるという性質もあるので、「またとないデザイン」として慎重に設計されていました。
私がいるのはWebの世界なので、実体のないクリエイティブを作ることがほとんどです。デザインが頻繁に更新されるので、色部さんのようにここまで丁寧に慎重に作ることがありません。
そんな私が色部さんのプレゼンを聴いている中で心に残ったのが
「人と建物の接点の情報の質を高めていく」
という言葉でした。
建物に入る前からデザインされていて、駐車場、フェンス、受付、自動ドアやエレベーターのビジュアルサイン、看板…などなど、訪れる人が必ず触れる場面に、その施設の個性を感じれるようなビジュアライズがなされていました。
Web業界ではスピード感も求められるため、どうしても効率的なデザインになってしまいがちです。ましては私のいるBtoB業界では機能や使い勝手、業務効率化が最優先の課題解決になるので、このような「接点の質」を上げるような取り組みはなかなかできません。
競合他社に追いつき、追い越されを繰り返していく中で、機能の競争、価格の競争、使い勝手の競争…といろいろな競争があります。自社のプロダクトに個性を見つけ、それをユーザーが触れる場所に取り込むことで、別の差別化や付加価値の創出ができるのかも、と思いました。
このセクションのレポートを書いた人
SMARTCAMP Designer モリシゲ @MorishigeYuta
2. 『医学生としてデザインに取り組んで見つけた、医療とデザインの接点』を視聴してみて
2日目、私が楽しみにしていたのは、Ubie株式会社 大木さんのセッションです。登壇者にデザイナーが多い中で、現役医学生かつUbieでPM(プロジェクトマネージャー)をされている大木さんのプロフィールにも興味が高まり、ワクワクしながら視聴しました。
セッションは『日本の医療現場は持続可能ではない』という、壮大な課題提起から始まります。
・膨大な労働時間に対し半数以上の医師たちが過労死の危険性を感じている
・医師を守るはずの国や法律も、過労死ラインの2倍以上の労働時間を容認してしまう
・医療に携わる医師たちの3割がうつの可能性を抱えている
スライドに淡々と並んでいく数字が、日本の医療現場のひっ迫状況を伝えています。このパートを聞いただけでも、医療現場の負をなんとかしなければならないことは十分に感じられます。
こうした医療現場の負を解消する正解を求めて、大木さんがアメリカへ留学した話へ、プレゼンは進んでいきます。
アメリカでは、日本のように年功序列に囚われない文化や、医師の定時退勤の実現など、最高のチームと最高の診察に出会えたそうです。一方で、アメリカの医療現場には以下のような改善点もあったそうです。
・2時間の診察が終わった後には7時間のカルテ業務
・日本の2倍の時間、カルテに費やしている
・医師の朝晩のシフト制により、担当患者を看取れないことへの違和感
アメリカで医師の定時退勤が実現できていた理由は、医師一人が患者一人と向き合う日本とは違った、デイタイムとナイトタイムによるシフト制によるものでした。
このタスクシフトが進むと、一人の患者に携わる人物が増え、連携のための「記録」が重要かつ膨大な量になっていきます。しかし、この記録作業と、カルテ上の複雑な記録情報は省くことはできません。
ここで出てきたのが『複雑性保存の法則』です。
プロセスの単純化には限界があり、複雑性は減らすことでなく、移動することでのみ操作の負担を減らせるというものです。
Ubie社が取り組んでいるのは、医療現場にある情報や入力操作といった複雑性を人からシステムに「移行」することで、医師が本来向き合うべき業務(患者のケア・診察の判断)に集中できるようにするということでした。
このようなミッションに対してすばやいデザインと開発を進めるには、医療というドメインはとても複雑で難解です。ここで必要になるのがDesignshipのテーマでもある「壁を越える」行動であるということでした。
デザイナーは医学知識を身に付け、医師は自らプロトタイプをテストし、時には作り上げる。お互いが越境することで進んでいく「医療×IT領域」のプロダクト開発は難しさもありそうですが、とても面白そうだと感じました。
私自身は、日々プロダクトデザインに関わっていますが、「ユーザーファースト」なプロダクト作りが是とされる一方で、業界の発展には、発展に伴う困難や複雑性を「ユーザー」「システム」「技術者」がバランスよく負担することが大事なのではないかと思うことがあります。
医師に偏りすぎている医療業界の複雑性をシステムに分散し、ユーザー・システム・医師を、医療の参加者として正しく受け入れていく世界観は、未来の医療に対する期待が高まるものでした。
大木さんのセッションは、現役医学生というリアルな立場から医療の現状と課題を語った、力のあるプレゼンテーションでした。
昨年から参加しているDesignshipですが、今回のセッションのように、デザイナーに止まらず、各業界の深いインサイトを持つ方の登壇も増えると良いなと思います!
この記事には大木さんご本人のnoteからスライドのキャプチャをお借りしました。是非そちらもご覧ください。
このセクションのレポートを書いた人
SMARTCAMP Designer : YUME TAKAMATSU @dream_yt95
3. 『ONLINE EVENTにおけるデザインの可能性と体験の未来』を視聴してみて
株式会社サイバーエージェント執行役員チーフクリエイティブディレクター佐藤 洋介さんが、イベントの変化を「業界」「サイバーエージェント」「ツール」「コミュニケーション」「デザイン」の視点から考察し、ONLINE EVENTの可能性を説明してくれました。私自身オンライン展示会のデザイナーをしているので、今後のコンテンツ企画やデザインに活かしたいセッションでした。
イベントの種類はさまざまです。表にするとわかりやすいですね。
コロナ渦で大きな変化があったのが黄色のエリアです。この市場競争が激しくなっていることは、オンライン展示会運営に携わっているとよくわかります。
ライブエンタテイメント市場規模は、2019年に過去最高6000億円を記録、しかし、2020年現在では1750億円規模と一気に縮小。
それに反し、デジタルライブエンタテイメント市場規模は2020年現在約150億円から2024年には約1000億円規模へと約6倍になると予測されるそうです。
ONLINE EVENTを生活に共存させる5つのポイントをご紹介頂きました。
1. 体験の敷居を下げる工夫
2. 五感を「補完」をする工夫
3.「LIVE感」「生感」を感じる工夫
4.「疑似性」を通じて身近に感じさせる工夫
5.「能動性」を促す工夫
1.体験の敷居を下げる工夫
1年前でもリモートツールはありましたが、流行りませんでした。コロナ以外の要因は敷居(ハードル)が高いことです。
しかし、「はずかしさ」という深いニーズに新しいツールがマッチした。例えば、加工を施すこと、背景をつけることなどで自らをよく見せる。
共同編集することで自分以外の操作を見ながら操作できることは継続的に教育技術を見ることもできた。敷居が下がると入りやすいです。
2.五感を「補完」をする工夫
ユーザーへのオンライン体験では「五感を記憶に補完する必要がある」という表現がしっくり来ました。ONLINEで得られない感覚を新しいプロモーションで補完することです。
そして、五感は平等ではなく個人差があり、それは経験だといいます。今後は呼び起こされる記憶へより突き刺さるように情報の明確さが重要ではないでしょうか。ユーザーインタビューペルソナ設定の重要性が上がりそうだと感じました。
3.「LIVE感」「生感(なまかん)」を感じる工夫
アーティストのライブを例に出すと「投げ銭」「ECサイト」「バーチャル来場ステージ」「リアルチャット」「ビデオ通話」がある。これはミュージックビデオ、映像との差を生む要因かもしれません。
4.「疑似性」を通じて身近に感じさせる工夫
擬似体験は、バーチャルの中で新しい自分が存在し、新しいコミュニケーションを生みます。リアルの自分よりもコミュニケーションが取れる人も中にはいるのではないかと思います。
5.「能動性」を促す工夫
これはゲーム好きではもはや当たり前ですね。異世界で別の自分になる快感もあるのかもしれません。それはより技術の進歩によりリアルに使いものになります。
ONLINE EVENTはOFFLINEに変わるものではなく、「人間にとって新しい価値のあるものに進化をする。」と佐藤さんは言っていました。「デバイスなどの物理的な進化」「プロモーションの進化」そして、「人の進化」です。
多くのUIを監修している佐藤さんだからこその観点で、これからのイベント事業の軸を作るようなセッションでした。新しい技術が全てではなく、その先にあるユーザーへの新しい価値を想像し、その体験を届けることがこれかたのONLINE EVENTには大事だと感じました。
また、Designshipオープニングもライブ感がある演出で圧倒されました。今から何が始まるんだろうという高揚感。運営チームのこだわりは私達に新しい体験を届けてくれました。来年はONLINEはOFFLINEのどちらを主軸にやるんでしょうか。楽しみにしています。
このセクションのレポートを書いた人
SMARTCAMP Designer はなおか @hanaoka42947585
4. 『デザインを続けるということ』を視聴してみて
最近では、デザイナーの英語帳という本を執筆した有名なデザイナーである灰色ハイジさんのセッションです。
今まで日本で、制作会社でWebデザイン、広告代理店でプランニング、SaaS企業でUI/UXデザイン、フリーランスでブランドデザインと、いろいろな職種を経験した方です。
その後、サンフランシスコで働くため、移住しますが、英語が全く喋れなないため、語学の勉強のためにアメリカのデザインスクールに入学します。
デザインスクールで感じた壁と、乗り越えた方法が今回のセッションのテーマである「デザインを続けるということ」の内容です。
デザインスクールで感じた壁「何も聞き取れないし、何も伝えられない」
英語の勉強をするために、入ったのですが、語学学校と違い、ネイティブスピーカーの方ばかりなので、何も聞き取ることができず、悩んでいたそうです。
日本語なら話せるが、英語で自分の思いを伝えることができないため、何も言葉を発せられない日が続きました。
ある日、デザインの経験がない人が、ディスカッション中に悩んでいるのに気付き、誰でもはじめての環境だと、悩み苦しむことがあることを改めて感じました。
壁を乗り越えた方法
言葉は喋れないが、日本で経験してきたデザイナーとして積み上げてきた自分自身の強みを活かすことを考えました。
プランナーとして、ユーザーニーズとビジネスゴールの間を探る経験だったり、Webデザイナーとして見た目のデザインの基礎を積み上げてきていて、その強みをデザインスクールの中で共有することで、英語を学ぶことで、乗り越えました。
まとめ
職種が変わったり、海外に移住したりと、環境が変わるごとに毎回今までの経験はリセットされていると感じていました。しかし、積み上げてきたものは変わらず、言語の壁も超えてくれます。
「○○会社で働いていた」とか、「○○の実績をあげた」ということは、海外では通用しませんが、自分で手を動かしてきた経験は活かすことができる。
デザインとは、「誰にどんな価値を届けるのかを設計し続ける」ことです。価値を届ける対象が変わったとしても、デザインするということは変わらない。
このセッションを聞き、デザインとはただのテクニックではなくて、「人間とサービス」、「人間と人間」といった間をつなぐためのものだと、改めて実感しました。
このセクションのレポートを書いた人
SMARTCAMP Designer 葉栗 雄貴
以上、スマートキャンプデザインチーム4名による、Designship 2020のレポートでした!
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