見出し画像

無人駅の待合室で

 忙しかった4月も終わり、ゴールデンウィークが始まった。久しぶりのリフレッシュとして私も昨日から旅をしている。北海道に来て早一ヶ月が経つが札幌から一歩も出ていなかった。だからこれを機に1周してやろうではないかと思ったのである。その初日のことを書こうと思っている。

 昨日は朝一番に札幌を出て鉄道に揺られて稚内を目指す予定だった。しかし知り合いが途中まで同じ方向に車で向かうというので、鉄道からは見られない景色を見るのも良い勉強だと思い、乗せていただいた。海岸線の道を進んだのだが、思った通りで知らないことがたくさんあり、非常によい勉強になった。

 ところが道の渋滞や悪天候もあって予定よりだいぶ遅れてしまった。嫌な予感はしていたが案の定その予感は当たってしまい、乗ろうとしていた列車にタッチの差で乗り遅れてしまった。ここは東京ではない。今はまだ午後8時だが次の列車が来るのは3時間後。それまで無人駅の待合室で1人で待つこととなった。

 これまでも本州で似たような経験をしたことはあったが、今回は少し事情が違う。この時期の北海道はまだまだ寒い。少し山に入れば雪も残っている。待合室にはストーブが置いてあったのだが、電源はつかない。トイレも一度外に出なければならず、基本的には待合室から動くことはできない。諦めてシャドーピッチングのような真似をして体を温める。おまけにヒグマのニュースなんかを目にする機会も増えているせいでどこか心が落ち着かない。

 私が待っている列車はその日の終電である。万が一乗りそこなえばそこで夜を明かさなければならない。近くに宿がある様子はなく、あったとしても終電を逃した23時以降の時間に泊めてもらえる場所を探すのは至難の業だろう。ここで私を脅かすかのように待合室に貼ってあった掲示には、私が乗ろうとしているダイヤは日によって運行されない旨が書かれている。もちろんその日は運行予定日だとわかっているから待ったわけだが気が気でない。もちろん駅員さんはいないし、私以外に待つ者もいない。

 あと2時間、1時間半、45分、30分、、、とカウントしていく。少し余裕を持って4,5分前にホームに向かうがまだ列車が来る気配はない。誰もいない23時を過ぎた駅のホームで1人、冷たい風に吹かれるのはなかなか心細い。

 若干遅れていたようで列車は2,3分遅れてホームに入線したきた普段なら何も思わないのだがこの時だけはなにかあったのではないかとこの2,3分が本当に長く感じた。前照灯の光が見えた時の安心かはこの上ないもので乗車して席に着くと自分でも驚くほどに体から力が抜けた。

(祝日ということで明日から3日間はお休みします)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?