塾ビジネスでも重要なFLRについて考える(2)【FLR「コスト」への過剰な意識が生み出す悪魔のシナリオ】
飲食業界で重要な要素とされるFLRについて考えています。
前回はこちら
今回は、このFLRが重要であるとわかっていても、滅びの道を歩いてしまう人間の性について書いてみます。
経営者になると、人はケチ臭くなると言われます。経営という数字を管理する立場になると、そう簡単に「入り」は増えませんから、どうしても、「出」を絞りたくなる。
そのため、支出を削って、何とかしようとするのはある意味自然なことでもある。
では何の支出を絞るのか。そうなると、どうしても人件費を絞りたくなる。
理由は単純で、ビジネスにおいて、人件費の割合が高いからです。
さらに消費税は、非正規雇用を外部コストに換算するので、課税対象から外せる。そのため正規雇用を減らし、非正規雇用に置き換えるインセンティブがはたらく。非正規雇用は、コスト削減の有効な手立てになりがちでもあります(これだけでも、消費税は悪税なのです)。
とりわけ、塾業界は労働集約型ビジネスと言われるだけあって、人件費が突出しています。ですから、収益を増加させるためには、いかに人件費を下げるかという点は、合理的な側面を持ちます。
しかし、これは悪魔の囁きでもあります。
私は、塾講師のキャリアを通じてこの悪魔のささやきに乗った人たちを多数見てきました。
それについては、こちらで書いています。
結果として、あまりに無残な末路となります。
これは、人件費の話(今回のテーマでは、「L」になります)が、これは、Fでも、Rでも同様なのではと思っています。
FLRの「コスト」は確かに経営のカギを握っていることは間違いないですが、だからといって、それを削ればいいという単純な話ではないということでもあるのではと思っています。
失われた30年。この国では、いかにコストを下げるかは、疑われることのない正しい考え方だと信じられてきました。
しかし、見るも無残な今のみじめな現状をみるとそれは誤りだったのだろうと思いますし、それ以外に解釈のしようがない。
逆張りが常に正しいとは思いませんが、これについては、コストは、下げるものではなく、可能な限り上げることが大事だということと思います。
時間がそれを証明したと思います。
Fの質を上げると、サービス力が上がり、Lの質を上げると、優秀な人材が集まり、またはとどまり、結果(合格実績、生徒さんの成績の向上)が上がり、Rの質を上げると集客の効率が上がる。
やはり、可能限り考えるべきことは、FLRコストを下げることではなく、FLRクオリティを高め、それにかかるコストアップによって達成されるクオリティ向上をできるだけの売り上げに反映させる知恵なのではと思っています。
そうすることでしか、好循環は生まれないと思っています。
あまりに当たり前のことなのだろうと思いますが、これが難しい。
それは、コストをカットすることは、すぐにもできますが、コストを維持または上げて、その増分を収益増で補うということは、誰もができることではないからでしょう。
ただ、商売の本質はいかに投資をして、それを回収できるかという点にある。お金は資本としてビジネスに組み入れない限り、新しい利潤を生みません。それは、メカニズムとしての資本主義の鉄則だと思うからです。
金融資本主義とか株主資本主義は、その意味では、いびつなシステムではないかなと思っています。私は、このいびつさがもっとも大きいリスクだと思っています。
この国の製造業が加速度的に力を落としているのも、経営者たちが株主配当を重視するあまり、会社の足腰を弱らせていることに問題がありそうに思います。
他の業界のことはともかく、少なくとも、FLRコストを上げ、FLRクオリティを高めるための知恵が塾業界には必要なのではと改めて思っています。
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