過激な発言は、「危険な火遊び」。フィードバックするデジタルタトゥーのメカニズム【誠実であることは、一番のリスクヘッジだと再認識】
その広告は、ある意味不意打ちでもありました。
大手飲料メーカー、キリンは、米イェール大の教員でもある経済学者・成田悠輔氏をCMに起用。
ところが、彼のCM起用当初から、SNSで違和感があっという間に拡散しました。
それは、キリンへの不買運動への呼びかけにまで発展しています。
成田悠輔氏と言えば、「高齢者は集団自決を」という主張をしたことが問題(決して「話題」ではないと私は思います)となりました。
このような発言をする人物をCMに起用するというキリンの選択に批判が集まったようです。結果として、CMの撤回になったのは、妥当な結末だったと思います。
成田氏の発言が俎上に上がった当初は、メタファーでは?という擁護論もありましたが、結果としてこの件について成田氏は、見解について曖昧なまま放置したように私は解しています。
それが、NYタイムズの記事になる展開となった。
成田氏は、炎上対策は、常に炎上させておくこととおっしゃっていたように思いますが、個人的にリスクマネジメントとしてどうなのかなと思っていました。
そのこともあり、↓で書いた、謝罪は炎上対策の下の下
というセオリーに沿って成田氏は対応したのかなと思っています。
つまり成田氏にとって、
「過激な発言での知名度上昇」>「炎上によるリスク」
という判断だったのかなと思います。
それがあえての放置という選択になったのではと思っていますが、そのタイムラグがNYタイムズで記事化される展開を許したとも解することができそうです。
アメリカで大学教員をしている以上、この発言をNYタイムで扱われるデメリットは大きかったのか、そのあたりからメタファーだったという主張が本人の口からも出始めたように理解しています。
このような一連の展開を生んだ背景に、デジタルタトゥーの影響だと解することができるのかなと思います。
成田氏にとって、かつての自分の発言がまさかこのような展開を生むとは想定できなかったでしょう。もちろん私もそうです。
また、CMに起用した広告代理店の担当者、キリンの担当者もしかりでしょう(中には違和感のあった人もいたかもしれませんが)。
成田氏には悪いなとは思いますが、彼の人柱として得た知見は、私の認識を改めさせたとも思います。デジタルタトゥーはそれほど重いものだと理解させられました。
ただ、成田氏の立場にたって考えると、これを防ぐ手立てはやはりあったとも思います。
残念なことですが、成田氏はあまりに歴史について知見が不足してい部分があったのかなと感じます。
それは、「ドイツ人のパン屋さん」の話です。
このことが頭にあれば、「軽はずみな発言」が、バタフライエフェクトとなり、社会を混乱に陥れる可能性はありえる。仮に勢いで出た発言であったとしても、すぐに撤回し、謝罪すべきだったと思います。
結果として、成田氏はこれをしなかった。それはなぜなのか。
それは、人として誠実であろうとする姿勢の欠如だったのかなと感じます。
この結果、成田氏は今後しばらくは、CMに起用されることないでしょうし、メディアでの露出も減るでしょう。なぜなら「不快感を持つ人たちが一定数いる人物」として定量化されてしまったからです。使う側としては無視できない指標となってしまった。
成田氏はデータ重視の思考をされておられるようですが、自分自身のネガティブな要素を数値化してしまったことは、気の毒ですが、皮肉な展開になったと感じます。
成田氏は、あの発言のあと、ちゃんと謝罪をすればよかったのではと思います。強い批判にさらされ、炎上案件として、その時は厳しい状況になったかもしれませんが、「ちゃんと発言について謝罪した」という事実もまた、デジタルタトゥーとして残ったとも思うからです。
私は、誠実であることは、長い目で見るとリスクヘッジとして理にかなっているのではと改めて感じています。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?