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「トレンド」を軸に考察。石破茂氏と河野太郎氏の戦略の違いとリスクの取り方【勝利至上主義思考を脱する先にある未来】

昨日、第102代内閣総理大臣に自民党総裁の石破茂さんが就任されました。
自民党総裁選に最後の挑戦と公言した戦いを制しての首相の座でした。

奥様は、地元鳥取で総裁選投開票の様子を観ておられた様子。
恐らく敗戦も視野に入れて、地元の支持者にこれまでのお礼を述べておきたいと思われたのではと想像しています。

決選投票前で2位だったのが、総裁に選ばれるとは思わず、ほんとに皆さまのおかげだと思って感謝してます。

上記記事より

にその片鱗がみてとれると思っています。

石破茂さんの戦いを振り返ると、「勝つことを前提にしない(できない)」勝負の在り方、戦い方を考えさせられるなと感じています。

これまでのメディアを通じて流れて来る石破さんの論評は、批判的なものが多かった。

特に強い批判があったと感じるのは、「勝つためには〇〇しなければならない。なのに石破はそれをしない」という類のもの。

特にここ10年は、安倍元首相という自民党を席巻した揺るぎない強大なパワーに対して、距離を取り続けることへの批判は多かった。
ただ、口には出さない(出せない)ものの、安倍元首相の政治姿勢に対して、いつかは綻びがでるという大局観があったのではと思っています。

しかし、その姿勢はご自身の政治家としての「寿命」とのバランスという点では、危険な賭けでもあった。

「安倍的な思考と行動」という「党内トレンド」とどう向き合うかという点も含め、非常にリスクのある戦略だったと思います。
少なくとも、勝利を前提とできる戦略ではなかったでしょう。

石破さんの今回の勝利に驚きを隠せないのは、昨今、勝利を前提としない戦略思考を持つ人がほとんどいないからだと感じています。

その点では、今回ブービー賞に甘んじた河野太郎さんの戦略の方が、よっぽど現実感があると私は思います。トレンドに自ら歩み寄っていく姿勢が見られているからです。

権力を伺う自民党議員にとってタブーである「脱原発」の旗は下して内閣に入り、リベラル寄りの思考は停止させ、一方で強いリーダーを意識しての強権的な姿勢を誇示し、SNSを駆使して支持者を拡大させる。「ブロック太郎」の異名は、キャラクターの形成ではむしろ勲章である・・・という思考です。

そのような行動の背景にあるのは、お父様の河野洋平さんを反面教師とされていたからではと私は思っています。リベラルの政治スタンスを貫き、政治家として高潔な人物として評価を得たものの、結局は頂点には届かなかった。

父は、勝てなかった。勝つ思考ではなかった。現実に適応することへの努力が足りなかった。

そのように総括されていたのかなと感じます。

「勝つためには〇〇しなければならない。だから自分は、何でもする」
という姿勢が河野さんの行動にはあるのかなと感じています。

今回の自民党総裁選の結果だけをもって、お二人の考え方の雌雄を決することはできないとは思っていますが、

ただ、勝利至上主義を捨てていた石破さんが総裁選で勝ちを得たことで、「安倍的なトレンド」に区切りをつけ、新しいフェーズを生み出したことは間違いないでしょう。これも一つのイノベーションであり、アウフヘーベンなのかなと私は見ています。

個人的には、ここ20年程、あまりに社会は勝利至上主義に陥っていたのではないのかと感じています。

勝つことに意味があるとするのは当然としてよいかと思いますが、
だからといって、

勝った者は何をしてもよい。
勝った者の思考は、そうでないものの思考よりも優れている。

という考えがはびこり、その結果

負けた者は冷遇されてもやむを得ない。
負けた者の思考は、誤りであり、愚かである。

となり、これが通俗道徳の復権につながったのかなと感じています。

そして、何より権力に批判的なことを言いにくくなったことが一番の問題だと感じています。

なぜなら、権力を持つ者は、勝利者の象徴として最たるものだからです。
だから、たかが一般庶民が権力者にモノを言うのは、けしからん
・・・となる。

権力者に文句があれば、お前が権力を持てという言説は、通俗道徳を根に発展した思考なのではないかなと思っています。

安倍さんと距離を保ち続けた石破首相の誕生は、ひとまず、ここ12年近くの政治のトレンドであった「安倍的なもの」に区切りをつける効果があったと思います。

このエアポケットとなる瞬間に、「新しいトレンド」は生まれてくるのでしょう。それがいいものである保証はもちろんありません。より悪いものが生まれてくることも十分あり得ます。

その意味で、石破新首相のタクトの振り方は、この国の次の10年を決めるほどの力があるのかもしれません。

特に石破さんの場合、冷遇期間が長かったことで、澱のように溜まった不満が蓄積しているという見方もでき、これまでの自民党政権よりも「強権的」な政治が展開される可能性もある。

そのこともあり、政治権力は、国民がちゃんと監視しないといけない。権力に迎合しても何も問題を解決しないということは、私たちが改めて理解しておかないといけないことなのだろうと思います。

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