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トランプ、大統領に返り咲くってよ。見えてきた私たちの生きる「今」(1)【エンタメの思考実験で混沌に備えられるアメリカの底堅さ】

11月5日。世界は一つの転換点を迎えたのかもしれません。
アメリカ大統領にドナルド・トランプ氏が再選したからです。

思想家の内田樹先生は、アメリカ市民の判断について、

「世界がカオス化すること」を選んだということだと述べておられます。

前回の大統領選挙では、兎にも角にも、トランプはダメだ。
トランプでなければ、誰でもいいと言わんばかりの拙速な対応に追い込まれたアメリカは、トランプ再選阻止のために急ブレーキを踏んだ。

ところが、MAGAトンネルの暗闇を抜けても、一向に社会が明るくなる気配がない。

アメリカ市民は、ポスト・トランプの社会に絶望し、アメリカの輝きを唱え続けるトランプ氏の存在を再定義したのでしょう。

アメリカ市民でない私でさえ、ウクライナの問題を解決できるのは、トランプ氏しかないと思うようになったほどだからです。

アメリカ市民は、タフだと痛感します。

日本人は、こうはいかない。問題があり続けても、それ以外の選択をした場合の世界が恐ろしくて、政権与党に権力を与え続けている。「腐っても鯛」という言葉のある文化なのだと感じます。

今より悪くなるかもしれないし、新しい選択をして、未知の局面に追い込まれた時のストレスに耐えられないのでしょう。

そんな心理的環境が、与党への過剰な評価であったり、アクロバティックな擁護の背景にあるのではと私は思っています。

ただ、その反応はある意味普通なのかなとも思います。
やっぱりアメリカ市民がタフなのでしょう。

このアメリカ市民のメンタルの強さは、注目に値すると思っています。

アメリカは、トランプ氏のような取り扱い注意の大統領が登場しても、何とか現状にアジャストするのかなとも思います。

というもの、こんな混沌とした時代にも↓のようなエンタメがビジネスとして成立する社会基盤があるからです。

トランプ氏によって、アメリカは分断されるとメディアが騒いでいるよりも先に、エンタメは、すでにその先の内戦を描いている。

企画が立ち上がり、予算が付き、撮影のための準備を考えると、アメリカは、その「イフ」をはるか前に考えている。
そして、アメリカ市民は、すべてではないものの、エンタメを通して、思考実験をしている。

こういうことができるアメリカには、底堅い強さを感じます。

未知の局面への備えをエンタメを通して可視化しておくという文化があるのでしょう。

残念ながら、この国ではそれがあまりに少ない。特に小松左京先生亡き後、この「イフ」を思考するエンタメの後継者が育たなかったことは大変残念でもあります。

荒唐無稽な状況を人為的に設定し、そこから人間の思考や行動を思考するエンタメがないことは、結果として、「未来はこうなります」というインフルエンサーの「小遣い稼ぎ」を可能にしている。

彼らの思考が悪いとは思いませんが、正直、あまりに読む先が浅く短すぎる。賞味期間が数年程度の未来予測など、あってもなくてもあまり意味がありません。

「5Gが未来を変える」などとスタイリッシュな大学のセンセイがおっしゃっても何の意味もない。なぜなら、そんなあたりまえのことは、思考実験の材料にすらならないからです。

それよりも、間違ってもいいから大きな「ホラ話」からこの国の未来を描くエンタメが出てこないのは、残念でもあります。

その意味では、『シン・ゴジラ』は「イフ」のカテゴリーに入っていたように思います。

私たちは、もっと未知なものに耐性を持たないといけない。それは、強く自戒することでもあります。



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