
高校と資本主義。少子化は、グレーゾーンを彩色する(5)【時代は公立高校の無形財産を可視化することを求めている】
高校と資本主義の関係性が少子化によって、どのような問題を引き起こすのかを考えています。
前回はこちら。
九州は公立高校が強い。
そんな先入観は、徐々に時代とともに崩れていると感じています。
かつて、NHKで『翼をください』というドラマがありました。
若き日の江口洋介さんが主演されています。
これは、脚本家のジェームス三木さんが、福岡県のある都市の私立と公立の格差を目の当たりされ、この作品を構想されたようです。
詳しい経緯は、ウキペディアにありますので、気になる方はご検索ください。
しかし、その後、私立高校の地道な努力は、着実に実を結びつつあり、熊本県では、異変が起きているという報道がありました。
この報道を見ると、「公立高校の魅力は何か」という点は、可視化すべきというのが時代の要請ではないかなと思いました。
公立高校トップ高を中心とした魅力は、「伝統」とか「頭がよさそうなイメージ」とか、「卒業生が地元の政財界の中心を占めている」などの無形財産が多いのではと感じています。
それが、私立高校の追い上げもあり、徐々に魅力が曖昧になってきていた。そこに、授業料の無償化という流れがやってきた。
公立は授業料が安いというアドバンテージは、崩壊寸前なのですから、公立高校の魅力は、判断材料としてテーブルの上に載せないといけない。
一般に私立の方が、校舎も綺麗ですし、学食も充実している。通学にスクールバスもあったりする。私立の魅力は、比較的可視化されやすい。大学進学の合格実績も積極的にアピールしていますので、わかりやすい。
私立人気の背景には、このような可視化された魅力にあるともいえそうです。
そんな時代背景は、公立高校の意識も変わってきているのでしょう。
福岡都市圏の公立御三家のひとつの筑紫丘高校の合格実績は、こちら。
まるで、塾の広告のようなレイアウトです。ストロングポイントの強烈なアピールは、筑紫丘高校の危機感を感じさせる部分でもありそうです。
上記の動画で熊本県の担当の方がおっしゃっていたように、公立高校の魅力の強化は、統合よりも正しい方向性でしょうし、時代が求めていることに呼応する動きではと思っています。
高校を選ぶにあたり、中学生や保護者がコマーシャリズムに流れてしまうのは、やむを得ない。
公務員の方たちには、難しい面もあるでしょうが、魅力を可視化することは、今後公立高校の存続も絡むこともあり、対応が求められることなのでしょう。
あと、今回初めて知りましたが、熊本高校(くまたか)と済々黌(せいせいこう)は、ガチ勝負なんですね。
学区制の福岡県とは違うなあ、とあたらめて実感してもいます。
(福岡県の場合、小倉、東筑、福岡、筑紫丘、修猷館、明善は学区のトップになり、一部例外はありますが、競合関係にはならない)
長崎県と大分県は、平成の時代まで総合選抜(合同選抜)制を実施していました。
入学時の学力分布を均一化し、学校間の競争を煽ってきましたが、批判から辞めてしまった。これは本当に良かったのか改めて問われてもいいのかもしれません。
というのも、長崎県は都市部でも定員割れを起こしているからです。
公立高校の良さが曖昧であれば、授業料無償化の時代の流れに勝てないでしょう。その意味では、魅力をいかに可視化するかは公立高校にとって、新しい時代のテーマといえるのではと思います。