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個別指導塾スタンダード(福岡市博多区)の民事再生手続き開始について思うこと【多店舗展開型個別指導塾が抱える構造的難しさ】

九州を拠点に東北や新潟にも教室のある個別指導塾スタンダード(福岡市博多区)が民事再生手続きに入ったとのこと。

同社、HPに掲載されている説明文書では、今後も教室運営は継続するとのことです。

https://std-ie.jp/img/saisei_tetsuzuki_annai_.pdf

個別指導塾スタンダードは、私の理解では、「低価格・多店舗展開型」の個別指導塾という位置づけです。

ライバルは、福岡市内では、業界ナンバー1の「個別教室のトライ」やベネッセグループとなった「東京個別指導学院」、福岡都市圏での出店を強化している「対話式進学塾1対1ネッツ」、直営とフランチャイズが混在する「明光義塾」あたりになるのではと思います。

確かに競争は激化しているところがありますが、「個別指導塾スタンダード」は価格が安いことが魅力で、上記のライバルが手を出しにくいところでもあるので、今後も事業は継続していけるのではと思います。

ただ、このような多店舗展開型の個別指導塾は、構造的な問題を抱えているとも思っています。

それは、受験対策の脆弱さです。多店舗展開型の個別指導塾が重視するのは、サービスの均一化です。あたりまえですが、同じ料金をいただいているのに、サービスの格差があることは、許されません。

そのため、このような塾が重視するのは、「誰が教えても同じようなサービス内容となる」ことです。ある意味当然のことでもあります。

それを担保するのが、カリキュラム重視による指導です。現実的には講師に力量の差がでるのは仕方ないので、カリキュラムの消化を講師の役割とさせることで、さらに講師に指導マニュアルで均一化した方法で対応してもらうことで、サービスが安定します。

ただ、これを講師目線で見ると、オリジナリティの確立という点で、ほぼキャリアアップは絶望となるので、副業であるとか、ステップアップの一里塚という位置づけでないと続けられません。
結果として、大学生が講師となることが現実的な対応策となります。

「東京個別指導学院」はそれを逆手にとって、大学生のキャリアアップの一助としてのとりくみをしているようです。

受験対策としては、構造的問題を抱える個別指導塾ですが、普段の学習の一助という点では、使い勝手が良い塾と言えます。

また学びの多様化にも対応しており、このような個別指導塾は、不登校の生徒の学習サポートであったり、学年を下がっての復習であったり、授業型塾のサポートであったりと多様なニーズを拾っていることも事実です。

受験対策に難を抱えるこのような塾は多店舗展開型となるのは必然となり、その行くきつく先には、市場の飽和、供給過剰となり、今回の「個別指導塾スタンダード」は、その影響を受けた結果と言えるのかもしれません。

福岡市は少子化の影響が少ないエリアなので、首都圏や関西圏の塾にとって魅力的なエリアとして今後も大手の進出が見込まれるエリアだろうと思っています。

戦略が違う塾にいるとはいえ、他山の石とすべき事例が多くある今回のニュースだったとも感じています。


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