マイナンバーカード問題に潜む恐ろしい「思考」(6)【令和の時代に蘇るインパール作戦の亡霊】
マイナンバーカード問題について考えています。
この問題を考えると、現代社会に生きる私たちの思考に潜む問題を感じるようになりました。
前回はこちら
正直なところ、こんなに回数を書く予定はありませんでした。あにはからんや、次々に問題が噴出しています。そこには、この国が抱える根源的な問題がこのマイナンバーカード問題に、横たわっているのでしょう。
今回は、旧日本陸軍のインパール作戦との類似性です。
インパール作戦については、主に3つ問題点があるとされています。
(1)作戦の無謀さ
(2)兵站の軽視
(3)トップの無責任
まず、作戦の無謀さ。
インパール作戦が立案された当初、陸軍内部でも反対意見が多かったとされています。しかし、当時の東条英機首相の強い意向により、陸軍内部に反対しにくい空気が醸成され、徐々に反対意見が小さくなったとか。
マイナンバーカードの問題も、マイナ保険証の計画の推進のため、先に健康保険証を廃止する法案を通してしてしまった。そこで、問題を正面から受け止める空気が消えてしまったのではとみています。
担当大臣のこの発言も、国民に向けてというよりも、身内への牽制の意図が色濃くにじんでいるとみています。
医師会のこのような反対をみると、マイナンバーカードのステークホルダーは医師会ですらなく、マイナ保険証は、マイナンバーカード推進の生贄になった可能性は否定できません。
これを見ても、根回しなどの周到な準備などせずに、保険証廃止という「作戦」を強行したのだろうと私は見ています。これが無謀だったことが後から証明されていく流れであることは、現実を無視している以上、ある意味必然です。
次に兵站の軽視。
インパール作戦が無謀な作戦であるというのは、兵站の軽視からも明らかでもありました。
これもマイナ保険証との問題にも影を落としています。
マイナンバーカードとの紐づけをどのような工程で確実に処理していくのかをちゃんと詰めないまま強行したことから自治体の過剰な負担になっている。
これに資格確認証を発行する手間も含めると、これはまさに兵站の軽視に他ならないといえるでしょう。
仕事量やそれに関わる人の数、そしてかかる日数。
こういった実務レベルの見積もりが明らかに軽視されている。
机上の空論の典型例であり、机上で立案する人間が偉いという傲慢な姿勢の証左でもあるのでしょう。
そして、最後のトップの無責任。
インパール作戦を主導した司令官は責任を問われず出世。一方で、勇断により部下を守った師団長は、閑職に追いやれる結末になりました。陸軍という組織の無責任体質も問題となりました。
ここにもインパール作戦との類似性が見て取れます。
自分に責任があるとしたトップの責任の取り方がこちらとか。
これが何が問題なのか。
それは、「オレには責任はない。責任は下の人間が取れ」と言っているに等しいことでしょう。
この大臣の表明は、マイナンバーカード、マイナ保険証に関わる多くの官僚、役所の人々に責任を強いる宣言でもある。
このままいけば、想像以上の大問題になる可能性があると思っています。
私は、これに関わる方々には、「命を守る選択をしてください」と伝えたいレベルで危機感を感じています。
組織のトップが無責任であることが何をもたらすのか。私たちが先の戦争から学ばないといけないことの一つであると思っているので、ことは深刻だと理解しています。