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80年代ベストセラー小説回顧録


 ちょっと寝かせていて、時期外れになった記事なんですが、例年公開される年間ベストセラーに関する記事です。

 ランキング好きの自分にとって、毎年の風物詩みたいなもんなんですが、実用書やビジネス書、タレント本などを含んだ「総合」カテゴリーになると、自分の好きな『小説』が1位になることはあまりないし、いつもベスト10に2~3冊って感じで、ちょっと寂しさを感じてしまいます。

 まあ、そんな感じなのは今に始まったわけじゃなくて、昔からそうなんですよね。

 ただ、私の大学時代、あの80年代の終わりに、小説が1位だった年、しかも、上位10冊のうち7冊が小説だった年があるのをご存知でしょうか?

 さらに7冊のうち、同作家さんの作品が5冊も!

 実は、それが1989年なのですが、そんなにベストセラーになった作家さんが誰だか思い浮かびますか?

 今回は、その1989年を目指して、80年代の総合カテゴリーのベストセラー(トーハン調べ)を回顧しながら、自分にとって印象的だった小説について ”note” していきたいと思います。


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【1980年】

1位 「蒼い時」 山口百恵
2位 「ノストラダムスの大予言(Ⅰ・Ⅱ)」 五島勉
3位 「ツービートのわッ毒ガスだ」 ツービート
4位 「項羽と劉邦(上・中・下)」 司馬遼太郎
5位 「人生抄」 池田大作
6位 「自分のお金をどうするか」 野末陳平
7位 「MY SEX」 奈良林祥
8位 「四季・奈津子(上・下)」 五木寛之
9位 「公文式数学教室」 公文公
10位 「55年版 頭のいい税金の本」 野末陳平

「トーハン調べ」

 自分の本屋通いの中で、記憶に残っているのが、朝ドラ『カムカムエブリバディ』でも話題になってた 「ノストラダムスの大予言」ですね~。
 私も持ってました。ハイ。

 ただ、小説でいえば、この年は五木寛之さんの「四季・奈津子」です。

 四季の名前をもった四姉妹を描いた四部作のうちの1冊です。
 映画かなんかもされたので印象に残ってるんでしょうね。
 な、なんかですね、子どもながらに、ちょっとエロティックなイメージで、”烏丸せつこさん”と”阿木燿子さん”がですね、……ゴニョゴニョ



【1981年】

1位 「窓ぎわのトットちゃん」 黒柳徹子
2位 「人間万事塞翁が丙午」 青島幸男
3位 「なんとなく、クリスタル」 田中康夫
4位 「神戸ポートアイランド博覧会公式ガイドブック・マップ 」
5位 「アクションカメラ術」 馬場憲治
6位 「この愛いつもまでも」 加山雄三
7位 「白ゆりの詩」 創価学会婦人部編
8位 「ノストラダムスの大予言(1~3)」 五島勉
9位 「新・頭のいい税金の本」 野末陳平
10位 「叱り方の上手な親下手な親」 田中澄江

「トーハン調べ」

 ”戦後最大のベストセラー”と称される、黒柳徹子さんの自叙伝「窓ぎわのトットちゃん」が売れまくってる中、印象に残ってるのは、田中康夫さんの「なんとなく、クリスタル」なんですよね。

 大学時代に読んだはずなのですが、内容については、あまり記憶がなかったり….(おいッ)💦
 ただ、小説や映画よりも、柴田恭兵さんが歌ってた(映画とは無関係の)「なんとなく、クリスタル」が印象的すぎたかもしれません。



【1982年】

1位 「プロ野球を10倍楽しく見る方法」 江本孟紀
2位 「悪魔の飽食」 森村誠一
3位 「窓ぎわのトットちゃん」 黒柳徹子
4位 「気くばりのすすめ」 鈴木健二
5位 「親離れする時読む本」 神津カンナ
6位 「プロ野球を20倍楽しく見る方法」 江本孟紀
7位 「続・悪魔の飽食」 森村誠一
8位 「積木くずし」 穂積隆信
9位 「日本国憲法」 写楽編集部
10位 「人類は地球人だけではなかった」 矢追純一

「トーハン調べ」

 森村誠一さんといえば、角川映画の原作となった「人間の証明」や「野生の証明」のイメージだったのですが、731部隊に関する「悪魔の飽食」は小説ではないんですよね。
  穂積隆信さんの「積木くずし」も小説じゃないんで、この年は、上位に小説がない年なのです。



【1983年】

1位 「気くばりのすすめ」 鈴木健二
2位 「積木くずし」 穂積隆信
3位 「探偵物語」 赤川次郎
4位 「和田アキ子だ文句あっか!」 和田アキ子
5位 「老化は食べ物が原因だった」 B.フランク
6位 「続・気くばりのすすめ」 鈴木健二
7位 「女らしさ物語」 鈴木健二
8位 「メガトレンド」 J.ネイスビッツ
9位 「佐川君からの手紙」 唐十郎
10位 「意識革命のすすめ」 広岡達朗

「トーハン調べ」

 ベストセラーに名前が見えるのは、角川映画の原作だった「探偵物語」だけなのですが、赤川次郎さんはムチャクチャ人気がありました!
 多作なので分散してるんでしょうが、作家別に集計したら間違いなくトップだったんじゃないかと思います。



【1984年】

1位 「プロ野球しらなきゃ損する」 板東英二
2位 「プロ野球これだけ知ったらクビになる」 板東英二
3位 「ソープバスケット」 日本フラワー技芸協会編
4位 「愛情物語」 赤川次郎
5位 「メインテーマ(PART1~3)」 片岡義男
6位 「人生汗と涙と情」 浅尾法灯
7位 「新常識わが家の銀行利用法」 野末陳平他
8位 「愛、見つけた」 小林完吾
9位 「告白ハンパしちゃってごめん」 高部知子
10位 「第四の核(上・下)」 F.フォーサイス

「トーハン調べ」

 小説でランキングしてるのが赤川次郎さんの「愛情物語」と片岡義男さんの「メインテーマ」という….
 角川映画強し!、そしてブロックバスター戦略強し!!なのです。



【1985年】

1位 「アイアコッカ」 リー・アイアコッカ
2位 「科学万博つくば’85公式ガイドブック」
3位 「プロ野球殺られても書かずにいられない」 板東英二
4位 「わが家の確定申告法」 野末陳平
5位 「首都消失(上・下)」 小松左京
6位 「豊臣秀長(上・下)」 堺屋太一
7位 「ダーティペアの大逆転」 高千穂遥
8位 「ああ人間山脈」 松山善三
9位 「チェッカーズ IN TANTANたぬき」 扶桑社編
10位 「洋子へ」 長門裕之

「トーハン調べ」

 小松左京先生の最後のSF大作「首都消失」が流石!って感じでベストセラーになってますが、注目は 高千穂遥さんの「ダーティペアの大逆転」なんですよね~。

 どこかで書いたのですが、現在のライトノベルに見られる”一人称口語”の源流は、新井素子さんと、この高千穂遥さんの「ダーティペア・シリーズ」にあるのは間違いないのです。
 人気だった第一作「ダーティペアの大冒険」から5年ぶりの続編だったこと、また、同時期にテレビアニメ化もされたことでベストセラーに名前を連ねてるんでしょうね~。
 大好きな作品だったのですが、ここまで売れてたのは意外でした。

 この続編、文庫ではなく単行本だったんです。
 お小遣い的には痛かったです!



【1986年】

1位 「自分を生かす相性殺す相性」 細木数子
2位 「化身(上・下)」 渡辺淳一
3位 「日本はこう変わる」 長谷川慶太郎
4位 「知価革命」 堺屋太一
5位 「うつみ宮土理のカチンカチン体操」 うつみ宮土理
6位 「運命を読む六星占術入門」 細木数子
7位 「大殺界の乗りきり方」 細木数子
8位 「大前研一の新・国富論」 大前研一
9位 「プロ野球、ここを喋る奴はうちから出ていけ」 板東英二
10位 「聖子」 神田法子

「トーハン調べ」

 後に「失楽園」でブームになる渡辺淳一さんなんですが、その路線の始まりが、この「化身」なんですよね~。
 さすがに手を出せないのですが、よく映画化されてベッドシーンが話題になる作家さんのイメージなのです。



【1987年】

1位 「サラダ記念日」 俵万智
2位 「ビジネスマンの父より息子への30通の手紙」 K・ウォード
3位 「塀の中の懲りない面々」 安部譲二
4位 「MADE IN JAPAN」 盛田昭夫
5位 「詩集広布抄」 池田大作
6位 「極道渡世の素敵な面々」 安部譲二
7位 「別れぬ理由」 渡辺惇一
8位 「塀の中のプレイ・ボール」 安部譲二
9位 「ノルウェイの森(上・下)」 村上春樹

10位 「62年版頭のいい銀行利用法」 野末陳平・海江田万里

「トーハン調べ」

 今だに版を重ねているという「サラダ記念日」が大ヒットしたのがこの年でした。なぜか、私も持ってました… それぐらい大ブームでしたよね。
 でも小説を見ると、いよいよ「ノルウェイの森」が姿を現してます。
 他にも、安部譲二さんが3冊、渡辺惇一さんが1冊と、計5作の小説が上位にいます!



【1988年】

1位 「こんなにヤセていいのかしら」 川津祐介
2位 「ノルウェイの森(上・下)」 村上春樹
3位 「ゲームの達人(上・下)」 シドニィ・シェルダン
4位 「私の人間学(上・下)」 池田大作
5位 「裕さん、抱きしめたい」 石原まき子
6位 「ダンス・ダンス・ダンス(上・下)」 村上春樹
7位 「金子信雄の楽しい夕食」 金子信雄
8位 「頭が突然鋭くなる右脳刺激法」 品川嘉也
9位 「あなたは3日間で巨人軍と別れられる」 桂三枝
10位 「十津川警部の挑戦(上・下)」 西村京太郎

「トーハン調べ」

 そして「ノルウェイの森」がロングセラーとなったこの年!
 え、2位なのですか?(1位はこの本だったのですね。)って感じですね。
 他にも、ブームとなっていた、西村京太郎さんやシドニィ・シェルダンの名前もあります。
 西村京太郎さんなんかは、毎月新刊が出てるんじゃないかと錯覚するのぐらい多作でしたし、シドニィ・シェルダンの作品は、いつも平積みされてた印象です。



 そして、いよいよ小説が上位を占めた年、1989年なのですが、5冊も上位に入った作家さんというのは、実は

 

"吉本ばなな"さんなのです!



【1989年】

1位 「TUGUMI」 吉本ばなな
2位 「キッチン」 吉本ばなな
3位 「消費税こうやればいい」 山本雄二郎
4位 「時間の砂(上・下)」 シドニィ・シエルダン
5位 「白河夜船」 吉本ばなな
6位 「うたかた/サンクチュアリ」 吉本ばなな
7位 「哀しい予感」 吉本ばなな

8位 「消費税 実務と対策はこうする」 山本守之
9位 「ノルウェイの森(上・下)」 村上春樹
10位 「人麻呂の暗号」 藤村由加

「トーハン調べ」

 当時、どれだけ ”ばななブーム” だったのか窺える感じですよね。

 という私自身も「キッチン」にはまった口で、あの装丁に魅かれて読んでみると、すごい読みやすかったんですよね。
 新しい同世代の小説家って感じでした。

(5冊のリリース時期)
「キッチン」 1988/1/30
「うたかた/サンクチュアリ」1988/8/5
「哀しい予感」1988/12/15
「TUGUMI」 1989/3/20
「白河夜船」 1989/7/15

 前年、「キッチン」のリリース時からかなり話題になっていて、その時の大ベストセラー作家、村上春樹さんの次に来るのが、この吉本ばななさん!と言われてました。
 その噂のとおり、「キッチン」や「うたかた/サンクチュアリ」が人気となって、「TUGUMI」で最高潮を迎えるって感じでした。

 一部では、吉本隆明の娘さん!ってことも話題になりましたが、やっぱり物語の感性が時代にフィットしたんですよね。

 たくさん映画化されましたが、原作を超えるものはなかった気がします。



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 以上、80年代のベストセラーを追いかけてみましたが、小説以外でも話題になった本は憶えてますね~。
 「プロ野球を10倍楽しく見る方法」やら「気くばりのすすめ」やら、読んだことは無いくせに売れていたのは憶えてます。

 基本、読んでない小説も多かったんですが、この歳で読んでみたら、どう感じるんでしょうね。
 ちょっと興味あります。
 渡辺淳一さんとかには手が出ないんですが、そのうち、五木寛之さんあたりには挑戦してみたいと思いました。