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フィッツジェラルドをたしなむ夕べ

 Francis Scott Key Fitzgerald


 今回は、「ロストジェネレーション」の作家のひとりとされるアメリカの小説家F・スコット・フィッツジェラルドについて "note" します。

 最初に白状してしまうと、フィッツジェラルドの作品が好きかと聞かれると、ちょっと返事に困ってしまう自分がいます。
 回答は、「好きな作品がある。」って感じですかね。


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 フィッツジェラルドって名前を知ったのは、村上春樹さんの「ノルウェイの森」の中で、主人公が読んでいた本として「グレート・ギャツビー」が出てきたことからなんですが、まあ、昔の作家さんだというぐらいの印象なんですよね。

 その後、村上春樹さんにハマっていくわけなんですが、自分の中で、村上春樹さんの存在が大きくなるごとに、フィッツジェラルドの存在も大きくなるという感じだったのです。
 それで、いつか「グレート・ギャツビー」を読んでみようと思っていたのです。

 楽しみにしていて、初めて読んだのが 野崎孝訳版だったのですが、今ひとつ面白さが分からない.... 。
 そのうち、村上春樹訳版も出版されて、もう一度、読んでみたのですが、やっぱり面白さが分からなかったり.... 。

 

 村上春樹自身が敬愛するこの「グレート・ギャツビー」
 そこそこの村上ファンとしては、面白さが分からないなんて言ってはいけないような感じなのですが、やっぱ相性なんでしょうね。

 文章はきれいだと思うんですが、ギャッビーが思いを寄せる女性ディジーの魅力が今ひとつ分からなかったからなのか... 哀しい感じはあるのですが、今ひとつハマりきらなかったです。


 ただ、長編「グレート・ギャツビー」は合わなかったけど、短編はけっこう好きだったりします。

 特に村上春樹さん監修の短編集は、ちょっとした隙間に読むのにピッタリで、文庫本は出張やお出かけのお供として活躍してくれています。


『マイ・ロスト・シティー』は、4つの短編と1つのエッセイ+村上エッセイ1編でまとめられた作品集。

「残り火」
「氷の宮殿」
「哀しみの孔雀」
「失われた三時間」
「アルコールの中で」
「マイ・ロスト・シティー(エッセイ)」

 実は、表題作のエッセイが味わい深くて好きな作品。
 この短編集(中公文庫版)はけっこう読みなおしています。


 ファンブックのような印象で、8編の村上エッセイが中心です。フィッツジェラルドの短編は2作だけです。
 でも、その2作が面白いのです。

「自立する娘」
「リッチ・ボーイ」


 5つの短篇と2つの村上エッセイでまとめられた”フィッツジェラルド・ブック”の第2弾。

「ジェリービーン」
「カットグラス」
「結婚パーティー」
「バビロンに帰る」
「新緑」

 自分の中で、もっとも読んでいるのがこの作品集。
 5つの短編のどれもが好きなのです。
 自分にとっては、これぞフィッツジェラルドなのです。


「冬の夢」
「メイデー」
「罪の赦し」
「リッツくらい大きなダイヤモンド」
「ベイビー・パーティ」

 表題作の「冬の夢」をはじめ、どれも面白かったです。自分的には「リッツくらい大きなダイヤモンド」や「ベイビー・パーティ」が特にお気に入りです。
 エッセイのない純粋な短編集というとこも良いので、文庫本になるのを待って、早や10年....  ま、まだかなw


 今のところの最新短編集で、8つの短編と5つのエッセイを収録。
 前作『冬の夢』が初期短編集であれば、こちらは後期の作品たちを収録しています。
 正直、短編の出来不出来はありますが、もう、ここまで読んできたら、どれも愛おしく思えるのだから不思議です。

「異国の旅人」
「ひとの犯す過ち」
「クレイジー・サンデー」
「風の中の家族」
「ある作家の午後」
「アルコールに溺れて」
「フィネガンの借金」
「失われた十年」
「私の失われた都市(エッセイ)」
 他エッセイ4編

 実は、エッセイの中の1編「私の失われた都市」は、最初に紹介した『マイ・ロスト・シティー』の表題作だった1編を、再度、翻訳し直したリマスター版みたいなものです。
 でも、このエッセイだけでも価値のある本になっていると思います。


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 ということで、フィッツジェラルドの短編は、ほんと、けっこう好きなんですよね。

 未だに良さの分からないという長編『グレート・ギャツビー』問題は残ってるのですが、好きな短編のひとつ「冬の夢」は、ギャツビー前夜の傑作と言われているので、それが面白く感じた今、もしかしたらって思っています。
 20代、30代と読んでみた本なのですが、今度、50代で再読してみると、ちょっと違った印象を持てるかもしれません。


 また、村上春樹さんは、最後に紹介した後期作品集に「ある作家の夕刻」という意味あり気なタイトルを付けています。
「ロスト・ジェネレーション」と呼ばれるフィッツジェラルドの作品には独特の寂しさがあるのが魅力なのですが、だからこそ、フィッツジェラルドの作品を読むのは、深夜とかではなく、黄昏時がピッタリなのかもしれませんね。