ロンゴのススメ
Contemporary Artist "Robert Longo"
現代美術って、よくわからないけど、想像力を掻き立てられますよね。
そんな現代美術作品の中には、わからないなりに、自分の感性に直接響いてくる作品もあったりするんです。
自分にとって、そんな作品や作家さんを”note”していきたいと思います。(紹介するのはその時代の現代美術なんで、すでに現代ではなくなっていることには容赦ください。)
ロバート・ロンゴ
アメリカ合衆国のアーティスト(1953/1/7~ )
初期のドローイングから80年代は多様な手法を組み合わせた作品を発表している。
【ロンゴの魅力】
ロバート・ロンゴってアーティストは、どんな作家なのと聞かれても、なかなか一言では表現しにくい作家さんなんですよね。
ドローイング(描画)や、コンバイン(連結)作品、映像作品まで、その手法は幅広く、作風も様々なんです。ただ、代表的な作品として有名なのは、やっぱり、人物をモノクロで描いた初期作品「Men in the City」のシリーズだと思います。
こんな感じの作品なんですが、実物は等身大以上に大きくて、並べて鑑賞すると、なかなか迫力満点の作品です。
木炭やグラファイトを使ったドローイングなんですが、人物をカメラで撮影した後、一瞬のポーズをとらえた姿を拡大して、精緻に写し取ってる作品です。
だったら拡大写真でいいんじゃないか?という議論も当然ありますが、写真とは異なる印象を受けるのも事実なんです。
また、まるっきりのハイパーリアリズムとも違っていて、当時、他のメディアと一体となった新しい作風を感じたのです。
クールな「Men in the City」シリーズは、けっこう人気があって、辻仁成さんの『クラウディ』の表紙に使われてたりしたのも憶えています。(辻さんらしいですよね。)
静止した独特のポーズに魅了されるんだと思うのですが、これって、”ジョジョ立ち” にも通じる魅力だと思うのです。
「Men in the City」の後は、それまでのドローイングと違ったものを組み合わせる構成的な作風に変化していきます。
ドローイングとドローイングの構成から、レリーフ状のものをコンバイン(連結)させたものや、時には彫刻と組み合わせた作品など、ロンゴの世界が広がっていくように、作品の様子も変わっていくのです。
<Arena Brains>
<Feeling the Pressure>
絵の上に白い建物のような立体がコンバインされた作品ですが、下の人物画には立体の影が出来てます。
<All You Zombies>
<Now Everybody>
ドローイングと彫刻を組み合わせてるんで、ほとんど舞台みたいな感じなんですよね。<All You Zombies>なんか言うまでもありませんが、<Now Everybody>の方の彫刻も、スターウォーズでカーボンフリージングされたハン・ソロを思い出させて、なんかSFを感じてしまうんですよね。
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【ロンゴの映像作品】
ロバート・ロンゴは、いろんなメディアを駆使するアーティストで、映像作品にも関わっています。
その代表作の1つが、ニューオーダーの『Bizarre Love Triangle(ビザール・ラヴ・トライアングル)』のミュージックビデオです。
1986年に発表されたこのミュージックビデオがすごく格好良かったんですよね。
都市の様々な映像を高速コラージュしたような作品で、「Men in the City」や「Arena Brains」など、それまでのロンゴ作品のイメージも使われてたりしていて、ニューオーダーのミュージックビデオなのに、それよりもロンゴらしいアート作品に思えて仕方なかったですね。(後日、ニューオーダーのビデオクリップ集を通販で買ったのも懐かしい思い出です。)
そのロンゴが映画製作に取り組んでいるという噂を聞いた時は、それほど驚くことはなかったのですが、原作がSF作家ウィリアム・ギブスンの「記憶屋ジョニー」と聞いた時は、ちょっと心が躍りました。
主演は『スピード』後、『マトリックス』前のキアヌ・リーブス
加えて、アイスTや北野武さんも出てたりして
かなりの期待値を持って観ました。
まあ、それなりに面白かったんですが、けっこう普通のSF映画って感じの印象でした.......
脳にジャックインしてからのサイバースペースのイメージとか、結線されたイルカや、舞台となった”橋”の様子など、ガジェット的には面白かったんですけどね。
商業映画の難しさってとこなのか、普通にまとまっていて、”なんじゃこれ”みたいな新しいビジョンが観れなかったのが残念でした。
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映画公開と同時期である1995年には、日本でも「ロバート・ロンゴ展」が開催されました。
これまでの代表作に加えて、実際の弾丸を使った「デス・スター」や、旗を樹脂で塗りこめた黙示的な「ブラック・フラッグ」シリーズなども展示されていました。
自分は大阪展を観に行ったのですが、やっぱり会場で観ると「デス・スター」とか大きくて、すごく迫力がありました。
大阪会場自体も未来的なビルだったので、なかなかSF感あふれる展覧会でした。
<Death Star>
<Black Flag>
ロバート・ロンゴは、80年代から90年代にかけて強い輝きを放ったアーティストではあるんですが、作品のカッコよさは、今も変わらず、私にとっては憧れのアーティストのままなのです。
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