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ノスタルジアの魔術師を考察する話


 「ノスタルジアの魔術師」って、かなり大げさな気がしますが、作家:恩田陸さんは、その郷愁を誘う描写等から、こう呼ばれてるそうです。


 自分は、恩田陸さんの作品が大好きで、かなり読んでるほうだと思うのですが、読書仲間には、苦手としてる人も少なくないです。

 その人たちが、恩田作品を苦手としている理由のほとんどが「結末がはっきりとせず、もやもやする」ってことだったりします。

 そこで、恩田作品が苦手な人や、これから読んでみようと思ってる人へのガイドとして、恩田作品を一部、考察してみようと思います。



1. 恩田作品は「ミステリィ」として読まずに「ファンタジー」として読むべし

 まあ、確かにミステリィとして読めば、最後はスッキリ謎解きで終わってほしいと思うものですが、恩田作品は必ずしもすべての謎が解かれるわけじゃないんです。

 例えば、日本推理作家協会賞受賞作の『ユージニア』なんて、ミステリィとして読むと、かなりもやもやっとさせられます。(推理作家協会賞なのに!!)

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 なので、恩田陸さんの作品は、ミステリィ風味であったとしても、ファンタジーやスリラーとして読むのが、正しい読み方のような気がします。

 ミステリィとして読んではいけない作品としては、他にも『Q&A』『きのうの世界』『夢違』などもそんな感じです。


2. 恩田作品の大作は上巻を楽しむべし、で、下巻では変なスリルを味わうべし

 恩田作品には、時々、上下巻の大作が現れますが、これらの作品でも、謎がすべて解決されるわけではないため、な~んかもやもやってすることが多いです。

 その代わりと言ってはなんですが、前半、謎が謎を読んでいるときは、ムチャクチャ面白いです。

 特に『ネクロポリス』なんかは、小説内での世界観の構築と、謎が広がっていく様子が相まって(+ちょっと怖いし)、ページをめくる手が止まらなくなること必死です。

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 上巻は「え~」みたいな終わり方で、すぐさま下巻を手に取ってしまうのですが、読み進めていくうちに、残りのページで物語が収束するのだろうかって心配になります。

 そんな、変なスリルを楽しむのが恩田作品の大作の楽しみなのかもしれません。


3. 恩田作品の黄金パターンを網羅するべし

 恩田作品を読んでいくと、似たような構成の作品に出合うことがあります。

 「限られた登場人物の間で、会話が交わされていくうちに、いろいろな謎が少しずつ明らかになっていく話」、この構成は、恩田さんのお得意パターンなんですが、この構成の作品には外れがなく、どれも面白いです。

 さらに分化すると、比較的閉ざされた状況の場合と、移動しながらの場合の2パターンがあって、前者の場合の作品としては『木曜組曲』『ネバーランド』『蛇行する川のほとり』『訪問者』『木洩れ日に泳ぐ魚』『消滅』など、また、後者としては『黒と茶の幻想』『まひるの月を追いかけて』『夜のピクニック』などがあって、恩田作品の中でも人気のある作品も多いです。


 特に私的にお勧めしたいのは、歩きながら話をしていくパターンの『夜のピクニック』『黒と茶の幻想』ですね。

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 どちらも面白い作品ですが、青春を感じたいときは『夜ピク』、大人を感じたいときは『黒茶』がいいと思います。(『夜ピク』って約し方はなんかエロいですよね)



最後に.....

 恩田さんは短編集も多いのですが、特におすすめなのは『光の帝国』ですね、常野物語シリーズとされる能力者ものですが、なんかいい話も多くて、ぜひ、読んでもらいたい作品です。

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