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優駿たちの物語

 Tokyo Yushun


 今年も競馬の祭典「日本ダービー」が近づいてきました。

 自分も競馬ファンの一人としてワクワクしてしまうのですが、この「日本ダービー」というのは副称で、本当のレース名は「東京優駿」という名前なのです。

 「優駿」というと、思い出す物語があって、今回は、そのことについて "note" していきたいと思います。


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 思い出した物語というのが、宮本輝さんの小説『優駿』です。

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 1986年に刊行された、一頭のサラブレッドの誕生から日本ダービー挑戦までの成長と、関わる人々の人間模様を描いた作品です。

 著者の宮本輝さんが、競走馬好きだった亡き父親への思いを胸に描かれた作品で、刊行後ベストセラーとなり、翌1987年には吉川英治文学賞を受賞しました。


 この『優駿』という物語と出会ったことが、私がサラブレッドに興味を持ったきっかけなのです。


 物語は、ある牧場で、伝説の名馬ゴドルフィンの血を引く仔馬が生まれることから始まります。

 その仔馬には ”オラシオン”(oración:スペイン語で「祈り」を表わす。)という名前が付けられ、牧場の親子や、馬主、調教師、騎手たちなど、 ”オラシオン” に関係する人々の様々な思いが描かれていくわけで、その夢が「日本ダービー」なのです。

 正直、サラブレッドといえば、オジサンたちが集まってやってるギャンブルってイメージしかなかったのですが、サラブレッドを取り巻く人々にもいろんな人生があって、いろんな思いがあるのだと感じたのです。


 サラブレッドは家畜同様、経済動物と呼ばれていて、早く走る素質を持った馬の系統を継いでいきながら、人工的に淘汰されてきた動物です。
 そのことを見ないふりをして美化するつもりはないのですが、作者の宮本輝さんは『優駿』に、こんな言葉を寄せています。

「一頭の競走馬を中心にして、それを取り巻いている人のそれぞれの人生をつづって行くことで、サラブレッドという生き物の不思議な美しさと哀しさをあぶり出せたら」

(引用元)


 なんかですね。
 経済動物と呼ばれるサラブレッドと、私たち人間は、大きく変わらないんじゃないかと思えてきて、だからこそ熱くなるんだろうなと思ったのです。


 ちなみに、この『優駿』は、1988年に『優駿 ORACION 』と題し映画化もされています。(実は小説より映画の方が先だったりします💦)


 主演は緒方直人さんと斉藤由貴さんなのですが、緒形拳さんとの親子共演が実現したほか、監督 が『北の国から』の 杉田成道さんなので、 田中邦衛さんや吉岡秀隆さんも主要キャストで出演していました。

 後から知ったのですが、 ”オラシオン” の騎手を務めていたのは、現役だったころの根本康広調教師でした。
 JRAの藤田菜七子騎手の先生なんで、ときたまインタビューに出てると、この映画を思い出しますね。


 映画自体は、上下巻の『優駿』をコンパクトにまとめている分、小説ほど濃密ではないですが、やっぱりいい物語なのです。
 劇中、本物のレース(第54回日本ダービー:優勝馬メリーナイス)が使われていて、いろいろと逸話もあったりするのですが、それは、またの機会に!


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 この物語がきっかけとなって、サラブレッドの血統に興味を持った自分なので、レースの時は、出走馬たちの血統が気になるんですよね。

 残念ながら、 ”オラシオン” と同じように、伝説の名馬ゴドルフィンの血を継ぐ者たちはいなくなってしまいましたが、今年もいろんな父馬の名前が並んでいて、眺めてると楽しいのです。

 ディープインパクト、オルフェーヴル、キズナ、ドゥラメンテと、4頭のダービー馬をはじめとして、エピファネイア、ルーラーシップ、ロードカナロアなど、そうそうたる名馬の血を受け継ぐサラブレッドたちが登録しています。

 そんな第88回の東京優駿を楽しみにしながら、優駿たちが全力を出して、最後まで無事に走り終えてくれることを祈るのです。



 映画のイメージソングだったのは、斉藤由貴さんと来生たかおさんのデュエットだった「ORACION~祈り~」

 いろんな人の祈りが届いてくれますように....


🏇