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ジャンル分け無用の森高ワールド


 お正月に実家に戻っていたら、新しい店がオープンしてたり、あったものが無くなってたりと、ちょっと街並みが変わってたんですよね…
 そんな時、なんとなく頭の中で流れた歌が…

この街ぃが だーい好きよ~ 生まれた街だかぁら ♪

 ってフレーズの、森高千里さんの

『この街』1991.2

 作詞:森高千里/作曲:斉藤英夫/編曲:平田祥一郎

 この歌、好きだったんですよね~

 ミニスカートに、何とも言えない単純な振り付け、そして、この打ち込み系のサウンドが初期の森高千里さん!って感じなんですが、そこに森高さんの素朴な歌詞がのると、なんとも郷愁をさそうとこがあって、しみじみ良い歌なのです。
 森高さんの故郷である熊本が舞台かと思ったら、長ーく、森高さんを支えた作曲家:斉藤英夫さんの故郷をイメージしたものらしいです。

子供の頃遊んだ広場は 大きなビルが
みんな消えてゆく 空に浮かぶ白い雲のように

でもこの街が大好きよ 生まれた町だから
空はまだ青く広いわ 田んぼも
この街が大好きよ のんびりしてるから
魚も安くて新鮮

 わかりやすい言葉で綴られる森高千里さんの歌詞って、聴くと、す~っと頭に入ってきますよね。
 そして「魚も安くて新鮮」でまとめるあたりが、また、森高さんらしい歌詞なのです。


 森高千里さんって、単純なアイドルとは呼べないし…  でも、歌姫って感じでもなかったし…  個性的で、独特なポジションにいたアーティストだったんですよね。
 今回は、そんな森高千里さんについて ”note” していきたいと思います。






◎抜群のミニスカインパクト

 森高千里さんといえば、初代のポカリイメージガールで、糸井重里さんと出演したCMが話題になったんです。
 銀色夏生さんの詩集「わかりやすい恋でもモデルをしてたりしていて、私にとっては、ピュアで透明感のある”美少女”って印象でした。




 そんな森高千里さんが歌を歌ってると知ったのは『ザ・ミーハー』(1988.4)のあたりなんですが…
 まあ、正直に言うと、ちょっと残念な印象だったんです。
 80年代末は、いわゆるアイドル全盛の時代が終わりを迎えていて、新しくデビューする方たちにとっては厳しい時代だったと思うんですよね。
 なので、制作側もいろいろな戦略で売り出そうとしたのでしょうが、なんか森高さんの場合は当初のイメージとのギャップが強くて、、、迷走してる?って印象だったのです。 

『ザ・ミーハー』1988.4

 作詞:森高千里/作曲・編曲:斉藤英夫

 このPVなんかも、ちょっと安っぽい感じですよね… 
 ただ、この曲の、自らをただの ”ミーハー” と称する自虐的な歌詞は、森高さん自身による初めての作詞だったんです。
 そのことを私が知るのはずっと後のことなんですが、アイドルらしいキラキラ感のないこの歌詞をシングルにするなんて、書いた森高さんも個性的ですが、それをさせたスタッフもかなり冒険してる感じですよね。

 そんな、他のアイドルとは違った個性派路線が功を奏してきたのでしょう。その後『ザ・ストレス』(1989.2)のウェイトレスのコスプレが話題になり、そして、ミニスカート姿で歌う『17才』(1989.5)でブレイクしていくわけなのです。
    このミニスカート姿のビジュアルはインパクト抜群でした。


 その『17才』の勢いそのままにリリースされたアルバムが

「非実力派宣言」1989.7


 私としては、決してミニスカートに目が眩んだわけではないのです!
 いや、ちょっと眩んだかもですが、あえて、実力派ではないことを宣言するなんて、かなり面白いコンセプトだと思ったんですよね。

 それで、このアルバムを聴いてみたのですが、なかなか楽しいアルバムだったのです。

 シングルではユーロビートチックだった『17才』のアレンジがいきなり違っていたりして、アルバム全体が意外とバンドサウンド的な仕上がりだったんですよね。
 打ち込み系とバンド的な生音系の曲がバランス良く配置され、森高さんの独特な歌詞世界あり、小芝居あり、「非実力派宣言」というタイトルを含めて、アイドルをコスプレしたコンセプトアルバムのような印象を持ったんです。

『夜の煙突』

 作詞・作曲:直枝政太郎/編曲:カーネーション

 ”カーネーション”ってバンドが参加しているのも、このアルバムを面白くしている要素のひとつです。
 『夜の煙突』は、カーネーション”のカバーなんですが、本家よりいいんじゃないかって印象だったのです。



◎森高ワールドの最盛期

 シングル『17才』やアルバム「非実力派宣言」で評価を得た後、90年代に入ると、さらに森高ワールドは広がっていきます。
 キリっとメイクのクールな美人で、ど派手なミニスカート衣装を売りにするって、今で言う ”あざとさ” 満点だったのですが、意外と女性からの支持も得ていったような記憶があります。
 それも、森高さんの書く歌詞が、20代女性の等身大の気持ちを代弁するものが多かったからだと思うんですよね。

 そんな森高さんの最盛期は、1992年から1995年あたり、シングルで言うと『私がオバさんになっても』から『二人は恋人』の頃かと思います。

 その間、ほとんどの曲の作詞とともに、作曲などのソングライティングに留まらず、ドラムやキーボード、ギター、ベースなどを演奏するなど、マルチプレーヤーとしても才能を発揮していくんですよね。
 そういった部分も、ジャンルにはまらない森高千里さんらしさなんです。


『私がオバさんになっても』1992.6

 作詞:森高千里/作曲・編曲:斉藤英夫

 カラオケブームもあって、この曲を歌ってる人はたくさんいましたね~
 でも、言われるほど、若い子が好きってわけじゃないんですよ。(←誰に言ってる?)


『渡良瀬橋』1993.1

 作詞:森高千里/作曲・編曲:斉藤英夫

 『私がオバさんになっても』とともに、森高千里さんの代表曲ですね。
 それまでも『』などの抒情的な曲はあったのですが、風景描写とともに、あらたな路線を確立した曲ですね。
 冒頭で紹介した『この街』や『風に吹かれて』もそうなんですが、森高さんの詞の中には、ふるさとや御当地的なイメージをもってるものが少なくないんです。
 この曲はその最たる曲といえる名曲なのです。
 PVでは、ドラムを叩いてる森高さんが見れますが、後半のアルトリコーダーが郷愁を誘いすぎですよね。


『気分爽快』1994.1

 作詞:森高千里/作曲:黒沢健一/編曲:高橋諭一

 作曲は "Ⅼ⇔R" の、故黒沢健一さんで、ポップな仕上がりの曲なんですよね~
 ….  で、この曲は、カラオケでおじさん方がよく女性にリクエストしてた憶えがあります~
 そんなリクエストの様子、今じゃ見られないような気がしますが、みんなでグラスを持って揺れてた気がします….  ちなみにグラスは右からですよ、右から!


『二人は恋人』1995.2

 作詞:森高千里/作曲・編曲:斉藤英夫

 明石家さんまさんと葉月里緒菜さんのドラマ「恋も二度目なら」の主題歌だった曲で、実は森高さん自身最大のヒットとなった曲です。
 少し前のFNS歌謡祭で、ドラムを叩きながら歌ってた姿が可愛かったですね。



◎結婚、そして休業前

 1996年あたりから1999年の江口洋介さんとの結婚、出産・育児による休業までは、少しずつセールスが落ちていってた時期でもあるんですが、派手さがなくなった分、自然な感じで、クールな美人というよりも可愛いさが前面に出てるようで、個人的には一番好きな時期かもしれません。

 この時期、細野晴臣さんと夫婦役で出ていたローソンのCMが可愛くてですね~、うんうん。
 このシリーズ大好きでした。


 この時期の曲も、以前のようなインパクトはなくて、落ち着いた感じなんですよね~
 きっと、ポジションやスタンスが変化してきたってことなんでしょう。
 振り付けがなくなっちゃったのは寂しいんですけど、この時期も好きな曲は多いのです。


『SO BLUE』1996.1

 作詞:森高千里/作曲:伊秩弘将/編曲:高橋諭一

『銀色の夢』1996.11

 作詞:森高千里/作曲:伊秩弘将/編曲:高橋諭一

 『SO BLUE』から『ララ サンシャイン』、『銀色の夢』、『Let's Go!』と4曲連続でシングルに曲を提供したのは、後の "SPEED" のプロデューサー兼ソングライターとなる伊秩弘将さんなんです。
 森高さんのデビュー期に関わってたライターさんなのですが、この後、"SPEED" でミリオンを連発する予兆がありますよね。
 『銀色の夢』とか、ほんと "SPEED" っぽくも聴こえちゃうんです。


『SWEET CANDY』1997.6

 作詞:森高千里/作曲・編曲:高橋諭一

 PVでの森高さんの透明感に魅かれちゃいます。
 ローソンのCMにも使われていた曲なんですが、詞を読むと、ちょっと寂しい曲なんですよね。
 こういう切なさを帯びた曲でこそ、森高さんの特徴的な歌声は映えるような気がします。
 歌詞デビュー25周年を記念した企画「200曲セルフカヴァー」の1曲目に選ばれたのはこの曲でした。(セルフカバー2012






 歌手デビュー25周年に合わせて、2012年から、少しずつ歌手活動を再開した森高千里さんなのですが、2019年には久しぶりの全国ツアーを行うなど、アラフィフになっても元気な姿を見せてくれています。
 なんか昔より可愛さが増していて、全然 ”オバサン” になってないと話題にもなりましたが、ミニスカートをはいても ”痛く” ないなんて、もはや偉業と言わざるを得ない感じですよね。
 同世代としては尊敬しかないのですが、やはり森高千里さんは森高千里さんなのだと、あらためてそう思うんですよね😀

『この街』(Live at Konomachi Tour 2019)