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サービス業の極意を学ぶ

最初に就職した会社で、上司に言われた言葉。その言葉はあれから20年がたった今でも時々思い出しては自分に言い聞かせている。
ちなみにこの言葉のおかげで私は仕事だけでなく、いろんなことを乗り越えて来れたと思っている。

私が最初の就職した会社とは、いわゆるブライダル相談カウンターといって結婚を決めた2人が、結納やら挙式やら、それに付随するさまざまなことを相談しにくる所。
そこでのブライダルカウンセラーという仕事にご縁があったのです。
簡単に言えば結婚式場のウェディングプランナーさんに出会うまでのお手伝いって言ったところがメイン業務でしょうか。
その他付随して出てくるようなことももちろん(両親に挨拶ってなんて言えばいい?結納って何よ!みたいなことにも)相談に乗ってました。

人と話すことは嫌いじゃないけど、積極的に人と交流したり、話題をふったりするなんてことが苦手。
対人恐怖みたいなものを抱えてた時期もあった私が、そんな仕事をなんで選んだのか。今となってはなにかの縁が導いたとしか思えません。就活もまともにせず、最初に応募したらそのまま決まってしまったから…(´∀`*)
ちゃんと人と話すの苦手です、って言ったのにね(えw)

ただここで、すでにピンチです。
いままで愛嬌だけで乗り越えてきた私がそうはいかなくなりました。トーク術が必要になるのです。
これはやばい。
いくらマニュアルがあるとはいえ、さらに無料相談だからとはいえ、
私なんかに務まるのだろうか…
ぶっちゃけ無料相談所とはいえ、会場を紹介したり、必要とされているものを紹介するという仕事は手元にない商品(しかも自社で提供できない商品)を売るという究極の営業職でした。
しかも、上司にはこんな風に言われていました。
「私たちは目の前にある1万円の商品を売るんじゃないんだよ。あなたが結婚式場を提案してお客様がそこを選ぶということは、そこに数百万のお金を払わせている。私たちに利益はないけれど、お金を払う決断をさせていることを忘れてはいけない」

新入社員の私にとってこれほど大きなプレッシャーはありませんでした。
実際、私がいた会社に関していうと紹介によるマージンは一切発生しないので、お客の立場でさまざまな交渉したり、フラットに比較することができていました。だからこそ式場に関して言えば神社や教会含め日本全国、海外に至るまで手配していましたし、関連のお店についてもどこでも希望に合うとこ探して紹介していました。
だからこそ、覚えることも日々の勉強も、プレッシャーもすごかったです。

でもね。
毎日すごく幸せそうなカップルを相手に仕事するのは楽しいんですよ。
でもね。
毎日ヘトヘトで、開店から閉店まで喋りっぱなしで、それはもう大変だった。

そんな私を育ててくれた当時の店長は、今でも私が尊敬する方。
働くことの精神論みたいなところも語ってくれる人でした。中途採用も多く入る会社だったし、新入社員向けのオリエンテーションとか研修なんてものもないところだったのですが、私が配属された店の店長である彼女は私が新卒だと知って、名刺の渡し方から社会人としての常識も叩き込んでくれたのです。まぁ実際の業務で必要な基礎だったので嫌でも覚えていたかもしれませんが。

話を戻しますが、そんな彼女から言われたのが

『ここは舞台、私は女優』

幸せな二人が来るところで夢を与えたり、喜びや嬉しさを膨らませてあげるのが私たちの仕事。
辛い、苦しい、悲しい感情なんて持ったままに接客をするなんて言語道断なわけです。

「たとえ今、親が死んでも笑って仕事をするんだ。
 私たちは幸せや夢を扱う仕事なのだから」

ブライダルの世界ではやはり悲しい顔をしてたり不機嫌な態度で接客されると嫌だよね。しかも女性にとっては一生に一度、自分が主役になれる時。
まぁ他の業界でも、気持ちを切り替えて仕事しないといけないことは多くあるのだけど。

今の時代にそんなこと言われたら、パワハラだ!って言われちゃうのかな…

いや実際に祖父が亡くなった時なんかはトイレでひとしきり泣く私に、
「すぐ帰っていいよ」
って言ってくれる職場だったのですよ?

つまりは精神論というか、私はそのくらいの覚悟で仕事しろよっていう叱咤激励の一つだと受け取っていました。

そこで出てくる『私は女優』論。
厳しい言葉なんだけど、これに救われたことが何度もあります。不思議と接客中に演じることで(決して騙そうとしているわけではないですよ、念の為)自己肯定感が上がるような気さえしていました。
気持ちテンションを上げて、あたかも自分が結婚するかのような、大好きな友人が結婚するかのような姿勢で相手に寄り添うと、自然といい結末に流れていくんです。
そしてそれが実績となり、自信になり…好循環のループに入っていくと、また仕事が楽しくなるのを感じていました。
さらにこれは、私の人付き合いの苦手さをもカバーしてくれることになったのです。

そして女優になるのは勤務時間のみ。

これは仕事とプライベートをきちんと切り分けろということでもありました。
終業後にいくら仕事のミスを悔やんでも、何もできないし状況を変えることもできないのだと。
「もう忘れて早く帰りなさい。そして明日お店のドアを開けてから悩みなさい」という彼女のおかげで、気持ちの切り替えは上手になった気がします。

その後配置換えやらなんやらで一緒に働く機会は無くなってしまいました。
更に結婚を機に県外に行くことになり退職。
それ以降全く関係のない業種に勤めることになるんですが、彼女の教えはいまだに、そして子育てにも活かせるところがありました。

結局のところ彼女が言いたかったのが、気持ちのコントロール術だったのかその本意はわかりません。しかし私にとってなぜか心にストンと落ちちゃった言葉でした。

私が最近その言葉をつぶやく瞬間は、子供達を理不尽に怒ってしまいそうなとき。
トイレで少し冷静になりながら「私は女優…私は女優…」とつぶやくのです。
そして、理想の母を演じる…

まさか私がこんな風に活用しているとは、あの頃の彼女も想像していなかったでしょう。


#心に残る上司の言葉 


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