【architecture】建築家とは…田根剛に学ぶ
異色の若手建築家である田根剛氏
高校生までJリーグの下部組織で本気でプロサッカー選手を目指すも怪我で断念
北海道の大学で建築を勉強してからは建築にどっぷりハマった
海外への留学がきっかけで今は日本ではなくパリで事務所を構えている
日本に事務所を構えてから海外にも事務所を持つ建築家は多いが、海外からキャリアをスタートし、そこを本拠地にしてしまう建築家は珍しいように思う
キャリアのスタートは、パリで知り合った建築仲間3人で応募した国際設計コンペである2006年の『エストニア国立博物館国際設計競技』で最優秀賞に選ばれたことによる
いきなり大きな建築の経験もないにもかかわらず国際コンペに選ばれ、しかも海外で建築をするというある意味無謀な体験が一気に世界中に知られる建築家にのしあげられてしまった
今では若手ながら将来を期待されて建築家の一人として注目されている
田根氏の設計手法は『記憶』がコンセプトにある
『記憶』は過去の出来事や歴史から未来へつながる破片を拾い上げて活かすことにある
エストニアのコンペでは、計画地に隣接した軍用滑走路を博物館として活かした計画を提案
本来戦争の負の遺産である滑走路を未来につながる記憶として受け継いでいく為にも必要なのではないかというメッセージが込められている
ザハハディド氏の設計案が選ばれたが白紙撤回になった新国立競技場のコンペには『古墳スタジアム』という案を提案している
古墳という記憶を未来に繋げていくシンボルとして掲げられていた
『記憶』というどこかコンセプチュアルではあるテーマではあるが、そこには徹底したリサーチがなされている
事細かで膨大な『リサーチ』を多角的に分析することで生まれるコンセプトには揺るぎないメッセージが込められているように思う
田根氏曰く
建築家の仕事は『考えること』と
設計はクリエイティブな仕事ではあるが、リサーチしたり考えたりするインプットの時間は勤務時間外にあるように思われがちだ
リサーチを普通のハウスメーカーや設計事務所が一件一件時間をかけてやるなんてことはほぼない
時間をかければ良いということではないが
リサーチから『記憶』をたどる建築手法は建築家のみがなせる仕事なのではないだろうか
田根氏は日本でもいくつかの計画が進んでいる
これからどんどん実作が増えてくる
身近で体験できる建築が増えてくるのが楽しみである