ポルトガル語に於ける「遊ぶ」という動詞について考える
翻訳をしていると、時々、
中学生くらいの頃だったかな?
大好きだった国語の先生が
「他言語同士には完璧な同意語は存在し得ない」
と熱く語ってくれたときのことを思い出します。
要は、
言葉には文化が伴っていますから、
例えば「バナナ」と言っても、
誰もがこんなの ↓ を想像するとは限らず、
こんな ↓ イメージが浮かぶ人もいれば、
こんな ↓ イメージが浮かぶ人もいるのではないでしょうか?
等々、
その先生が、いろいろな例を挙げて、
「だから、必ずしも同じイメージを
相手に伝えられるとは限らないし、
それどころか、
どう工夫しても完全な翻訳なんて出来ない
なんてこともあるんだよ!」
といった話をしてくれたのが
未だに脳裏に焼き付いていて、
仕事のいろいろなシーンで役立っています。
🍌🍌🍌
と、
なんだか前置きが長くなってしまいましたが、
今日は「遊ぶ」について考えていきたいと思います。
❇❇❇
「ポルトガル語で『遊ぶ』ってなんていうの?」
と聞かれたら、
ポルトガル語が出来る人であれば
百発百中
「Brincar【ブリンカール】」
だと答えるでしょう。
この「Brincar【ブリンカール】」という動詞は
確かに手前のつぶやきで紹介した
こちらの漫画 ↓ でも
子供が「遊ぼう」という意味で
「Vamos brincar」
と言っていますし、
もう一つの漫画 ↓ でも
犬や猫に「遊びに行こう」という意味で、
「Vamos brincar」
とペットに声を掛けています。
ところが、こちら ↓ では
「遊びに」という意味では「divertir」という動詞が用いられており、
「brincar」動詞は出てきません。
いや、
実は語源を調べたところ、
こんな ↓ 記述を見つけたので、
ある意味「brincar」=「divertir(-se)」だと
言えないこともないのですが、
それでもいい年をしたおっちゃんとおばちゃんが
遊びに出掛けることを
「brincar」という動詞で表現したら、
ポルトガル語のネイティヴスピーカーは皆、
目が👀!になってしまいます。
そう。
「brincar」は「遊ぶ」ではないとはいいませんが、
御多分に漏れず、「完全な同意語」ではないのです。
🥎🚴🎮
そういえば、
小学校高学年以上の日本人であれば皆、
一度は
「英語で『遊ぶ 』って "play" だよね」
「でも、スポーツを『する』のも "play" だよね」
「選手って、プロ選手でも "player" なんだよね。
遊んでるわけでもないのにね…」
ってな会話をしたり、
"play" 動詞についての疑問を感じたりしたことが
あるのではないでしょうか。
つまり、
英語の "play" も日本語の「遊ぶ」とは
完全一致はしないということですよね…。
🤔🤔🤔
さて、そんなわけで、
ポルトガル語の「brincar」動詞に戻りましょう。
ポルトガル語の「brincar」動詞には、
・子供や動物が「遊ぶ」
・子供や動物と「遊ぶ」
・大人や子供や動物が「ふざける」
・大人や子供が「冗談を言う」
・大人や子供が他人を「からかう」
といった意味がありますが、
・大人でも子供でも「遊びに出掛ける」
・大人が(娯楽として)「遊ぶ」
といった意味はありません。
結果、
ポルトガル語の「brincar」動詞を用いた慣用句には、
こんなものがあったりもします。
伯葡語:「(Você) tá (= Está) brincando!」
【(ヴォセ)タッ(エスター)ブリンカンドゥ!】
欧州葡語:「Estás a brincar!」
【エシタィシャ・ブリンカィレ】
日本語:「冗談でしょ?」、「マジ?!」、「うっそ~!」
なので、
こんな漫画もあります...。
↓
これのミソは、
私が「マジかよ!」と訳した
「Você tá brincando」
という文が、
大人的には当然、上に示したような
「冗談でしょ?」、「マジ?!」、「うっそ~!」
という意味で言っているものの、
児童労働を強いられている少年には
「遊んでいるんだろう!」
と聞こえてしまったという点です…。
言葉のトリックが上手くて一瞬笑えてしまえますが、
とても笑える問題ではありませんね…。⤵
というわけで、
本日もお読み頂き、まことにありがとうございました!
※ 「3兄弟で遊びます ネコ」はこたつぶとんさんの作品です。
(この子達は子供なので、「遊ぶ」は「brincar」で OK です!w)