一枚の添え書き。心したため、万年筆の粋
今週Amazonで
中古のジャズCDを買った。
正直、少しだけ躊躇いがあった。
行ったこともないお店の、
見ず知らずの出店者から買うのだから。
そんなこと言ったら
ネットオークションなど
利用できるわけがなく、
なんとも時代遅れな自分を
実感する次第で。
昨日、そのジャズアルバムが
中古販売店さんから届いた。
CDケースも損傷しないよう
手厚く分厚く厚紙が設えてある。
そして商品明細・納品書とは別に
直筆の手紙が添えてあった。
A4サイズの便箋、横書き。
「ごあいさつ
この度は、お買い上げいただきまして、
ありがとうございます。
今後も少しずつ商品を揃えて参ります。
お気に入りのものがありましたら、
又、宜しくお付き合いください。
紅葉の便りが聞かれる様になって
参りました。
コロナウイルス、一日も早く終息を
願うばかりです。
お身体に気をつけて、日々お元気に
お過ごし下さいませ。」
末尾には店主であろう御仁の
お名前があった。
初めてだ。通販で、
こんなにも丁寧に心添えした
お手紙を拝受したのは。
僅か2千円にも満たない音楽CD一枚。
遠く離れた地から、
したためられた文字。送られた想い。
両手で受け取り、慈しみたくなる手書き。
この一枚の便箋があるかないかで
受け手の幸福度は大きく変わる。
僕という見知らぬ客への気配り。
かつて高倉健さんは言った。
誰かへの想いの総量で
人生の豊かさは変わってくると。
僕は、かれこれ十数年前から
手書き文字をしっかりさせたいと、
万年筆を使うようになった。
ペン先が、あるいはインクの補充が、
ボールペンほど気安くはないので、
その分、神経をペン先に集中出来る。
そして背筋を伸ばし、深呼吸して
どこか生真面目に、純粋に真摯に
紙面に向かっている自分がいる。
手帳もメモも、極力万年筆で書く。
そりゃ未だに、ボールペンのほうが
ササッと書けるし、Stressレス。
だけど、僕の理想は、
良い万年筆を使ってるときが
一番Stressレスと言えるようになること。
静かに、心を整えたいのだ。
万年筆は本来、
ボールペンやシャープペンより
力まず、筆圧をかけずに書ける道具。
だから、もう少し気軽に用いてよいはず。
そして、システム手帳の如く、
長年付き合える尊い逸品。
ペン本体のフォルムも格好良く、
光沢の美も、所有欲をそそる。
深まる秋。少し心に余裕をもって
心を大切にしたためたい。
見知らぬ中古販売店さんからの
思いもよらぬ一枚の便箋から
それを学んだ。