心で奏でる郷愁のメロディ
誰にでもきっとある
自分なりの「郷愁のメロディ」。
幼い頃聴いていた歌、
テレビやラジオで、
あるいはウォークマンやiPodで
何度も聴いた曲、
あの日あのとき、
街で流れていたあの唄。
心の奥底、不動のポジションのメロディ。
その曲を胸の中で流せば
心の襞にそっと触れてくる。
自分だけの記憶と重なり、
自分だけのかおり、テイスト、手触りに、
再び会える。
僕のそのメロディは、
中学生の頃、休日に聴いていた
たった一枚のアルバムの曲たち。
当時はCDもインターネットもない時代、
自宅のオーディオ(レコードプレーヤー)で
夢中になって聴いていたのが
映画音楽家ヘンリー・マンシーニのLPレコード。
《収録曲》
「ムーン・リバー」「ピンクパンサー」「刑事コロンボ」「酒とバラの日々」
「いつも二人で」
「続夕陽のガンマン」(モリコーネ)等。
特に好きだった曲は、
「いつも二人で(Twe For The Road)」。
尤もこの映画、
オードリー・ヘップバーン主演作を
実際に観たのは、ずっとあと、
社会人になってから。
同アルバムな収録されている
「酒とバラの日々」も
大学生になってから観た。
中学生の頃、
土曜の朝、日曜の昼下がりに
西陽の射す狭い居間で、
このアルバムばかり聴いていた。
「Twe For The Road」は本当に優しい。
今も珈琲を飲みながら、休日にだけCDで聴く。
厳寒でも、雨の日でも、
感染拡大で心ざわつくときでも
この「郷愁のメロディ」を心で流せば
肩の力が程よく抜けて
あのかおりが彷彿してくる。
静かで穏やかな時を迎えられる。
優しさで満ち、勇気が湧いてくる。
自分だけの記憶、無形の寄る辺。
先行きが見えないからこそ
聴きたくなるメロディ。
あの頃を起点としても
僕はこうして何とか生きられている。
乗り越えてきたのだ。
誰にでもきっと
「郷愁のメロディ」がある。
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