「Let It Be」が聴こえる〜手帳の佇まい(11)
過去の自分の自信を束ねた
一冊の手帳がある。
自信というものは、
なかなかバランスが難しい。
過剰では傲慢になり、
過小では不安が勝って
前向きになれず本来の力が出ない。
これまでの数々の失敗と挫折から、
僕は定義している。
「謙虚さ」>「自信」
人は今を生き、未来に向かう。
過去の好成績や栄光などかなぐり捨て、
ひたすら、ひたむきに、前へ。
「今が一番幸せ」という姿勢で
人生の時間を謙虚に刻んでいくべきだ。
それが不動の要諦。
一方で、未経験や未開の大事に挑むとき、
何か大きなチャレンジに臨む際には、
自分への「自信」が
心を大きく支えてくれるのも事実。
「自信」とは、過去の栄光などではなく
今積み上げている努力の深み。
そして過去に自分が
乗り越えてきた経験(記憶)の集積。
その中身は人それぞれ。
どんなことでもいい。
例えば、仕事での難局。
※新入社員の頃、先輩にしごかれたが
何とか切り抜けてここまで来た。
※仕事でトラブルを起し絶体絶命のとき、
仲間と協力して乗り越えることが出来た。
※一度怒らせてしまったお客さまに
その直後、立て続けて迷惑をおかけし、
修羅場に近い状態となったが
毎日何度もお客さまの所へ通いお詫びし、
半年後に許して貰えた、等々。
僕は、しんどかった経験、
成長のきっかけとなった失敗を
リフィル一枚ごとに丁寧に書き表し
それ専用のシステム手帳に綴じている。
あまり蔵出ししたくない苦い思い出。
でもそれがあって、今がある。
その出来事をどう解釈するかだ。
喜怒哀楽の総量が人生の意味。
全ての経験が財産。
確かに理屈ではそうだ。
でも、人は辛いことは忘れて
溌剌と前を向きたいもの。
だからこの手帳は
何か大事に挑むときだけ開く。
過去の修羅場(貴重な体験)の数だけ
自分は強くなっていると、突破出来た軌跡を
この手帳を眺めては勇み、
勇んでは抑える。
そして支度を整えていく。
その実、鼓舞されているものの、
その様相は見せず
どこか飄々と淡々と向っていく。
この手帳、fILOFAXのHOLBORN(25㍉径)
のカバーに掌で触れるとき、不思議と
ビートルズの「Let It Be」が
心に流れては広がり、沁み込み、
そして熱量が増す。
このサウンドが爽風となる。
「なるようにしかならない」
「なるようになる」
「なすがままに」と。
この手帳には大きな値打ちがある。
これはデジタルでなく、手触りがいい。
我が強さの証。自信のつまった一冊。
わが人生の足跡。