こりすの瞳、その言葉〜手帳の佇まい(13)
惹かれる…。
理屈ではなく、
もうこれなしでは、
時を刻みたくないほどに。
美しいだけでなく、
傷を癒してくれる場所。
物欲…。
そんな言葉で片付けたくない。
概念を超えて、魅せられる。
佇まいと、放つ「気」に。
小さなりす、のようなまなざし…。
ASHFORDのこのシステム手帳、ジェム。
その出会いはもう何年も前、
横浜そごうのLoft。
文具売り場だけど
手帳コーナーではない。
そこから少し離れた、
エレベーター近くの、
ワゴンセールのカートの中で
ぽつねんと、佇んでいた。
かつて展示品だったのだろう。
まるで、くりっとした瞳のこりすが、
発見されたことに驚いているかのよう。
僕はすかさず、静かに手に取った。
革のその柔らかさ、
滑らかなボディフォルム
見開きの端正な構成、
その下地の濃いブルーに、
完全ににやられた。
こりすは、僕の掌で
僕をきょろりと見つめ返していた。
いつまでも見惚れたい、
そんな衝撃的な出会いだった。
手帳の造形美…。
このデザインは、
上品でいて親しみやすい、
洗練されている。
この手帳は、
こりすの様な優しい眼差しでささやく。
例えば、何かをやらかし、
あるいは物事がうまく進まないときの、
へこんだ気持ちを
「君のままでいいんだよ。君のままで」
「自分なりに、それなりに、いけば良いよ」
と、そっと包み、ほんわり癒やし、
気づけば背中を押している。
いい年して、こりす?
良いではないか。等身大の自分です。
この手帳、こころの拠り所ですよ。
「大丈夫。全て受け入れ、人に優しくね」
こりすは、ささやく。